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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
最終章 最狂の愛
202/213

 榎葉の髪の毛が逆立ち、赤い光を纏い始める。


「うるせえんだよクソが……! こちとら眠いんだよ……! 騒いでんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 榎葉は今、怒りが頂点に達していた。

 ガルバとマイヤーは榎葉とあまりにも相性が悪すぎたのだ。


 敵として以前に、性格が。


「吉良さん……!?」

『おい凍牙……こいつこんなに強かったか……!? すげえオーラだ……!』


 二人は思わず榎葉の纏う雰囲気に気圧される。

 普段の気怠げな様子からは全く想像できないほどの変化だった。


 榎葉は額に青筋を立てながら手をガルバとマイヤーに向け、叫んだ。


「ああああああああああああああああああ!!! “魚雷”!!!」


 榎葉の能力、“魚雷”

 手から赤い魚雷を出し操る能力。放出型で能力レベルは9。


 役所には彼女の能力はそう記載されている。

 しかし、“魚雷”には彼女自身も知らない特性があった。


 それは――怒りに応じて魚雷の威力が上昇するというもの。


 彼女は今まで性格上あまり怒ることは無かったため、その特性が現れることも少なかったのだ。


 だが、一度現れてしまえば――。


「ああああああああああああああああああああああああ!!!」


 そこにあるのはただ、破壊のみ。

 紅き魚雷が標的に向けてスコールのように乱射される。


「が、“ガルバニー……どわああああああああああああああああ!!!」

「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」


 極彩色の空間が爆炎に包まれる。


「くっ……!」

『やべーぞこりゃ……っ!』


 二人は氷の壁を作り爆発の余波に耐えた。

 衝撃が壁越しにもビリビリと伝わり、魚雷の威力を物語る。


「ぜえっ……ぜえっ……ああ……めんどくせえ……」


 榎葉は反動で息を切らしながら倒れた。


「……なんという威力……吉良さん、あなたは一体……!」

『やばすぎだろ……どうなってんだ……』


 氷の壁から出てきた凍牙が目にしたのは、隕石が墜落したかの如き破壊の跡だった。


 極彩色の空間が跡形もなくなっていた。

 床に横たわる二人以外。


「……とりあえず、脱出するしかないな」

『お、おう……』

「うおおおおおおおお!!!」


 漢野は拳をしっかりと握り締めてナルミーユに繰り出す。


 ナルミーユは体を流れるように傾けて躱し、カウンターに下突きを放つ。


「甘いですぞ! 止まって見えますな!」

「どわっ!?」


 下突きが腹に入り、漢野に大きな隙を作る。

 その隙にナルミーユが突きを連続で放つ。


「ふっ! はっ! とおっ!」

「だあああああああああ!!!」


 漢野は一方的に攻撃を受け続ける。

 無理もない。なぜなら彼はまだ、能力を発動していないのだから。


 準備が整った漢野は、その名を叫ぶ。


「へへっ……温まってきたぜぇ……! “ド根性馬鹿力”!!!」


 漢野の身体に力が漲り、迸る。


「今度はこっちの番だ! 行くぜぇ!」


 床を蹴り、ナルミーユに殴り掛かる漢野。


「ぐっ……! 不覚……!」


 ナルミーユの顔に漢野の拳がクリーンヒットした。


「ですがそれがしはただでは転びませんぞ! はあっ!」

「うおっ!」


 ナルミーユは殴られながらも漢野の顔面に蹴りを返す。漢野はとっさにもう片方の手で蹴りを受け止めた。


「やるじゃねえか……! お前いいなぁ!」


「それがしの“見切り”をも突破するとは……やはり強者! 出し惜しみはしていられませんな!」


 二人は跳んで間合いを取り、お互いの強さに感心する。ナルミーユは強者と戦えることへの喜びを滾らせながら。


「“(サイ)”――! “獣耳”! “格闘家”! “竜”!」


 能力を発動させる。


「あの子、あれでまだ能力を使っていなかったの……!?」


 千歳はナルミーユが素の状態で漢野と渡り合っていたことに驚く。


 いくら漢野の能力がスロースターターとはいえ、今の漢野は能力を発動していない状態でもレベル10相当の力を持っている。


 そんな漢野と渡り合うことが何を意味するのか……。

 それは――。


「なっ、何だぁこりゃ!? 面白そうだな!」

「ここからは、本気を出していきますぞ!」


 ナルミーユが、レベル10を軽く超える能力を持つ事を意味していた。


 彼女の体に、イヌのような獣の耳と大きな竜の翼、そして太い竜の尻尾が生える。


「とおっ!!!」


 ナルミーユは高く跳び上がり、翼を広げて空を舞う。翼を得た彼女はその勢いを尻尾に乗せ、漢野に叩きつけた。


「ごあっ!」


 漢野は両腕で防御するが防ぎきれずに弾き飛ばされてしまう。


「まだまだっ!」


 ナルミーユは漢野の近くに降り立ち、構えを取る。

 長年の鍛錬と戦闘を積み上げて洗練された、隙が全く無い構えを。


「――(シン)ッ!」


 そこから繰り出される、無数の突き。

 それは一つ一つに心があり、一つ一つが必殺となる。


 ナルミーユの能力、“才”。

 様々な人や動物、物の性質を自身に能力として付与する力。


 武士の性質を付与すればあらゆる攻撃を見切ることが出来るようになり、竜の性質を付与すれば竜の強靭な力を得ることが出来る。


 もちろん、熟練の格闘家の性質を自身に付与すれば、その奥義を放つ事も。


「――ごふっ……!」


 漢野の体が的確に、完膚なきまでに破壊される。


「そんな……! 漢野ちゃんが……!」


 千歳は目の前の光景がにわかに信じられなかった。

 あれほどの強さを誇っていた漢野が今、一方的に圧倒されている。


「これは我が一族最強と謳われた古の格闘家の奧義……。ですがこれで倒れるそなたではありますまい?」


「ぐっ……」


 ナルミーユは、毅然とした態度で再び構えを取る。


「体が……言うことを聞かねえ……!」


 漢野の体は、壊れきっていた――。





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