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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
最終章 最狂の愛
201/213

モケモケリサイタル

「ぎゃあああああああああああ!!! うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「凄い超音波だ……! これはレベル10以上の威力がありそうですよ……!」


「何言ってっか全然聞こえねーよボケ!」


 マイヤーの演奏に、二人は必死に両耳を押さえる。

 ハリケーンのような超音波が、すべてを吹き飛ばそうと襲い掛かる。


「いやほおおおおおおおおおおおおおお!!! やっぱこれよこれぇ! いつ聞いてもテンションぶち上げり……ぶち上りだぜェ!」


「掻き鳴らすぜェ! 掻き毟り鳴らすぜェ! ひゃあああああほおおおおおおおおおおおおお!!!」


「耳が千切れそうだ……ぁ! 今すぐ止めやがれぇぇぇぇ! “魚雷”!」

「集中力が……! でもここは撃つしかない……! “フリーズバレット”!」


 榎葉が赤い魚雷を、凍牙が氷の槍をマイヤーに放つ。


「おおおおおおおおおおおッ!!! お前らもテンション上がつ……上がってきたのかァ! いいねいいねいいねいいねェ! そのペースでどんどん上げてこうぜェ! “ガルバニ―キャッスル”ゥ!!!」 


 するとガルバが温まりきったエンジンの如き勢いで能力を発動した。

 ガルバとマイヤーを囲んだ電磁波のバリアが形成される。


 魚雷と氷の槍はバリアに当たると盛大に爆散した。


「なっ……!」

「おいどうなってんだよ!?」


「いいいいいいえええええええええええええァ! いィ爆発だァ!」

「中々いい音出してんじゃねえかァ地球人ッ! もっと出してぶち上げろォ!」


 攻撃をしているのにも関わらずひたすらテンションを上げ続けるガルバとマイヤーに二人は底知れぬものを感じる。


「こいつら……! クソめんどくせえな……!」

「ここはもう出すしかないようですね……! 峠! 行くぞ!」


『おう! 待ちくたびれたぜぇ! ってこりゃあうるせえな!』


 凍牙は眼帯を外し峠を呼び覚ます。

 周囲の空気が冷気に傅き凍り付いた。


「この状況を何とかするぞ峠!」

『おう! こんなの聞いてらんねーよ!』


「『“フリーズバレット”!!!』」


 二人はガルバとマイヤーに向けて巨大な氷塊を撃った。

 圧倒的な質量のそれはいとも容易く二人を絶対零度の世界にいざなう。


 爆音が止み、部屋に静寂が浸透する。


「おおっ! 静かになった! やるじゃねーかコック! すげえ寒いけど……」


「いや……これくらいで倒せる相手では無さそうでしたよ……もちろん倒せていればいいんですけど……」


 凍牙がそう言った瞬間、氷塊が砕け元の爆音が帰ってきた。


「すげェ! すげェェェェェェェェェェェよお前らはァ! さに……最高に盛り上げてくれるじゃねーかァ!」


「氷をぶち込むとはなァ! 斬新でロックなパフォーマンスだァ! お前らとは過去イチ盛り上がれそうだぜェ!」


「だあああああああああああ!!! 耳がぁ!」


「ぐっ……! やっぱり……!」

『あいつらしぶといなぁ……耳がキンキンするぜ……!』


 ガルバとマイヤーは氷で冷えるどころかさらに盛り上がっている。

 熱狂は止まらない。


「多分あの電気のバリアで氷を防いだんだ……! バリアを突破できる威力じゃないと通用しない……!」


『じゃあもっと思いっきりやってやろうぜ!』

「ああ! 本気で行くぞ!」


 凍牙と峠は圧倒的な存在感と冷気を纏った巨大な氷の竜を降臨させた。

 透き通った透明な体がライトによって虹のように輝いている。


「おおッ……すげーじ……すげーぞありゃァ!」

「こんなアトラクションも出せんのかよ! 地球人はすげェなァ!」


「『はあああああああああああ!!!』」


 氷の竜が顎を開き、すべてを氷結せんと二人に襲い掛かる。


「『今だ! “フリーズバレット”!』」


 凍牙と峠は自分たちの周囲を分厚い氷で覆った。

 爆音が遮られ、耳が破壊から解放される。


「た、助かったぜコック……」


「これで倒せていればいいんですけどね……もし倒せていなかった時の為です」


『倒せてなかったらこれが壊れるはずだからな。その時はオマエと一緒にぶっ放せばいい話だぜ』


「うわっ……めんどくせえな……頼むから死んでてくれよ……」


 二人は度重なる強敵との戦いで経験が積まれており、先手を打つスピードが大幅に上がっていた。


 彼らは能力レベル的にもかなり強いのだが、今まで戦ってきた相手はあまりにも相手が悪すぎた。


 それこそが彼らを強くした理由でもある。

 しかし、今回もまた彼らの相手は――。


「……ハッハー! ぜえっ……ぜえっ……盛り上がりすぎだろォ! 最高かよォ! 俺らももっともっと盛り上げねえとなァ!」


「いいパフォーマンスじゃねーか……地球人よォ! こっからはフルスロットルで飛ばしてくぜェ!」


 強敵だった。

 氷の防御壁が音波でガラス細工のように砕け散る。


 二人は息を切らしながらも熱気を絶やさなった。


「くそがああああああああああああ! まだ生きてんのかよ!」

「でも消耗はしてるみたいです……畳み掛けますよ!」


『行くぜ……! あのクソライブ中止にしてやる!』


「『“フリーズバレット”!!!』」

「今度こそ死ね……! “魚雷”!」


 二人は氷の竜を、榎葉はありったけの魚雷をガルバとマイヤーに放つ。

 凄まじい大爆発が騒音を掻き消した。


「くっ……やっぱり全力を出すと負担が大きい……!」

『でもまだまだ行けるぜ……へへ……』


「やっと寝れる……」


 二回連続で大技を放ったことで身体が悲鳴を上げている二人。

 榎葉は余程騒音が気に障ったのか不貞腐れて横になった。


 その時だった。


「へへ……ボロボロだぜ……! でもよ……これは楽しんだ証拠だぜ! オレ達のクラブは終わらねェ! ここからがぶち上がり時だァ……!」


「アタシのゴーダは、糸が一本になっても盛り上げるぜェ……!」


 二人が、噴煙の中ボロボロになりながらも立ち上がったのは。

 その根性は、伝説と謳われたロックバンドよりも輝いていた。


「……これでも耐えるとは……!」

『敵ながらすげえ奴らだ……! でもそろそろぶっ倒れてほしいぜ……!』


「………………………………………………」


 凍牙と峠は、息を切らしながらガルバとマイヤーの強さに驚く。

 しかし榎葉は――。


「いい加減にしろよ」











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