表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第一章 ここから私達の全てが始まったんですよね先輩!
15/213

私と先輩の愛の巣その5

 扉の中央に、1~10までの数字が表記されたボタンが並んでいた。


 そのボタンの上に細長く長方形の液晶があり、更にその上に「桜月麗紗の誕生日は? 数字が一桁の場合『01』というように入力する事」と書かれていた。


 なるほど。そりゃ秘密の通路だしパスワードもあるに決まっている。


 誕生日か……日記に書かれてないかな。

 そう思って麗紗ちゃんの日記を開くと、年間スケジュールというものを発見。


 ここだ!

 年間スケジュールを見ていくと、4月5日に何か文字の消し跡がある。その消し跡をよく見てみると、誕生日と記されていた。


 よし、これでこの中に入れるぞ……。

 何で消したのかは分からないけどね。


 私はこの指示通り『0405』と入力した。

 ……何も起こらない。


 あ、いや確定ボタンがあった。これを押さないと。私は確定ボタンを押した。


 すると不正解のブザー音が鳴り、『パスワードが違います』と出た。


 え? 今私ちゃんと誕生日入れたよね? それか消されてたからやっぱり違うのかな……。


 私は日記の年間スケジュールをもう一度見た。

 5月、6月、7月と見ていると、7月9日……私の誕生日に。


「先輩の誕生日&私の誕生日」

 と書かれていた。


 その周囲には大量の赤いハートマークがびっしりと描かれている。

 ………………。


 あの子がどういう考えでこれを書いたのかは置いといて、私は扉に『0709』と入力した。


 するとピンポーンと正解音が小さく鳴り響き、歓迎するように扉が自動で開いた。暗く、人が辛うじて通れる程度の細い通路が私を待ち受ける。


 アレで扉が開いたのは複雑だけど、あの子から少しでも逃げられる可能性が上がったのは嬉しい。


 私は勉強机で扉の前を塞いでから暗闇の中へ足を踏み出した。足元が見えないな……まあ隠し通路だから仕方ない。


「えいっ」

 私は八重染琥珀を通路の壁に付けた。

 八重染琥珀が優しい光を放ち、明かりの役割を果たす。


 これで少しは視界が良くなった。あんまり出し過ぎるとすぐに爆発してしまうので普通の蛍光灯レベルの明るさは出せないけど焚火くらいの明るさならなんとか3分くらい出せ……。


 ボンッ! 

 私の八重染琥珀はあっという間に爆ぜた。


 こういう所が不便なんだよ八重染琥珀は……。漢野と戦った時は凄く調子良かったのに……。


 あの時は不思議と全部の攻撃が当たってた。何なんだろう。

 やっぱり能力って謎が多いな。


 まあ今はそんな事より早く脱出しないと。

 私はめげずに八重染琥珀を照明替わりに通路を歩いた。たまに加減を間違えて爆発させながら。


 そうしてしばらく歩いていると……。

 フワッ。

 身体が急に浮遊感に包まれた。


「わああああああああああ!」

「うわっ!」


 落とし穴!? 

 もうちょっと足元を見ておけば良かった!

 八重染琥珀をアテにしすぎた……。


 落ちたそこは何と厨房だった。あのコックが驚いた顔で私を見ている。


 まずい……バレた! 

  コックはわなわなと口を震わせながら私にこう言った。


「何で……何であなたが秘密の通路の場所を知っているんですか!? あなたは何処でそれを知ったんですか!?」

「あ……いや……麗紗ちゃんの部屋の勉強机の裏に物を落としちゃってその……」


「……まあ、外に漏れる事は無いか……あなた、人の部屋に勝手に入るとは趣味が悪いですよ」

「す、すみません……では……」


 咄嗟に考えた言い訳で一応納得してくれたらしくコックは私から視線を外し皿洗いを始めた。


 そこを立ち去ろうとしてふとコックの足元を見ると、透き通った氷が床に根のように張っていた。


 氷を操る特色者? 

 だとしたら、玄関の扉は氷で封鎖されていたのか。


 私がそう考えながら厨房を出ようとすると、コックが私に一言ぽつりと呟いた。


「……あと、逃げようだなんて思わないで下さいよ。そうしたら私はあなたを今以上に拘束する必要があります」

「……っ!?」


 こいつ知っていたのか……。ここから逃げようとした事を。

 私は驚きながらも返事はせずに一旦厨房を離れた。


 とりあえずどうしよう……。

 隠し通路は多分もうコックの氷で塞がれただろう。


 八重染琥珀でもしかしたら扉ごと氷を破壊できるかもしれないけど、氷がどれくらいの強度を持ってるか分からないしそもそも投げられる物が無い。


 自分の拳でやるのも手だけど失敗して手を骨折でもしたらシャレにならない。コックを倒せば氷が解けるかもしれない。でもあいつは私より強そうだ。


 つまり詰んでる。


 ……んな事あって堪るか!

 あいつを何とかして絶対にここから出てやる! 

 必ず方法はあるはずだ。


 そうしてしばらく考えていると、いくつか方法を思い付いた。


 別にあいつを無理に倒さなくても氷さえ解ければいい訳だ。それならいくらでもやりようはある。


 私はそう考え、再びコックの居る厨房へと向かった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ