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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
私、やっと分かったんだよ麗紗
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わたしがころした

「よっしゃあ! 分かったぜ……! あの力の出し方が……!」


 漢野は拳をグッと握り締め、ニヤリと笑って言った。


「本当ですか!? 良かった……!」

「やったなお前! これであいつもどうにか出来るかもな……!」


 二人も成果が出た事に思わず顔を綻ばせる。


「凍牙、師匠、ありがとよ……!」


「いえいえ……! 漢野さんの努力の成果ですよ!」


「どういたしまして。まあ、これで俺の仕事が減るから感謝したいのはこっちだぜ」


 感謝する漢野に、耕一郎は余計な一言を添える。


「……耕一郎さん、あなたという人は……」

「師匠、頼まれた仕事くらいはやってくれよ……?」


「さすがに給料分は働くさ。それ以上の事はしねえけど!」

「「……」」


 堂々と言い切る耕一郎に、二人は何も言えなくなってしまう。


 あながち間違った意見でも無いだけに清々しかった。


 働き過ぎても良くない。耕一郎の場合は極端だが。


「さて……この力をどっかで試したい所なんだがよ……誰か強ええ奴は……」


 漢野の言葉に、二人は困り顔で答える。


「お嬢様並に強い特色者はそうそう居ませんよ……それこそ未確認生命体くらい居ません」


「俺達に頼まれても困るぞ。誰もアイツに勝てやしねえ」


「まじかよ……!」


 漢野はがっくりとうなだれて地面に手を付いた。


「何てこった……! 強くなるってのはこういう事もあるんだな……!」


「困りましたね……」

「ぶっつけ本番でやるしかないかもな……」


「そうか……まあ、そう気軽に使っていい力じゃないかもしれねえな」


「……? どういう事ですか?」


 漢野の呟きに、凍牙が首を傾げる。


「いや、何でもねえ」

「そ、そうですか……」


 しかし漢野は、凍牙に何も言わなかった。


 凍牙は心の中に疑問が残ったがそれ以上聞きはしなかった。


 耕一郎はそんな二人を不思議に思いつつも欠伸をしながら言う。


「……? 何なんだお前ら……まあいいや、漢野、おめえは筋トレでもしてな。ふわ~あ。俺は眠いから寝てくるわ」


「おう行ってら」

「私は……修行を続けようと思います」


「おお! じゃあ一緒にやろうぜ!」


 そうして、耕一郎は温室に戻ろうと、二人は修行を続けようとしたその時だった。


 ボロボロの麗紗が、血塗れの千歳を背負って屋敷に戻って来たのは。


「あっ、あれは!?」

「おい嘘だろ……!?」


「……一体何があったんだ!?」


 三人は思いがけない状況に唖然とする。


「……とりあえず話を!」

「……警戒しろ凍牙。話が通じるとは限らねえ」


 麗紗と話し合いをしようとする凍牙に、漢野は構えを取って忠告する。


 凍牙は静かに頷き、麗紗の近くへと駆け寄り声を掛ける。


「お嬢様……! どうなさったのです……!? お二人に一体何が……!」

「――した」


「えっ……?」


 麗紗は、千歳の体をそっと地面に降ろしてから、蚊のような声で呟いた。


「わたしが、ころした」

「なっ……!?」


 凍牙はあまりに衝撃的なその一言に愕然とする。


「と、とりあえず何があったのか教えて下さい……私達が何かお力になれる事はあると思います」


 声の震えを抑えながら、凍牙はそっと麗紗に言う。


「無いわよ……あなた達に出来る事なんか!!!」


 しかし麗紗は凍牙の優しい言葉を跳ね除ける。


「私は……私は……! もう罪を重ね過ぎたの……! だから何も出来なかった……何もかもが手遅れなの……!」


「そ、そんな……」


「……まあいいわ。教えてあげる。知って絶望しなさい。あなた達が、とっても醜い人間に仕えていた事を」


 麗紗は、自嘲気味に笑いながら凍牙達に全てを話した。


 彼女が琥珀にした事、琥珀が壊れた事、千歳が死んだ事を。


 三人は、あまりに重い状況に口を噤んだ。


「……どう? これで分かったでしょう? 私がどこまで堕ちた人間か。いや、人間ですらないでしょうね」


「お嬢様……」


「もうやめて? 私にはもうあなたを雇う資格なんてない。二人は、どこか別の所に行きなさい。私はもう何もかもが終わったから」


「麗紗……お前……」


 二人は麗紗に掛ける言葉を見つける事が出来なかった。


 そんな中、漢野が瞳に闘志を宿しこう言った。


「お前らはここに居てくれ……俺がケリをつける」


「なっ……!?」

「漢野お前……!?」


「……あなた自分が何を言ってるか分かってるの? 今の琥珀先輩は――」


「んなこた分かってんだよ。そこは安心しな。多分俺の方が強いぜ」


 麗紗の言葉を遮り、漢野は自信満々にそう答える。


「今の琥珀先輩を見てないからそんな事が言えるのよ。もう別の化物と思った方がいいわ。あなた死ぬわよ」


「俺以外の奴ならそうかもしんねーな。でも俺は勝つ。今の俺は、めちゃくちゃ強ええからな」


 漢野は、三人に背を向け。


「俺はあいつを助けてやりてえんだ……あいつと、お前らのおかげで手に入れたこの力でな……! 行ってくる!」


 そう言い放って地面を蹴り、空高くへと跳び上がった。




今日4月5日は麗紗の誕生日です。

祝ってやって下さい。


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