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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第四章 プレゼントですよ先輩!
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decide up

『和解して一緒に強くなる、か……アイツの言う通りかもな。やっぱりオレ達ケンカしてる場合じゃねえ……そうじゃねえと麗紗に勝てないぜ、凍牙』


「うるさい黙れ信用出来る訳ないだろ! それにお前の力はお嬢様を倒す事は出来るかもしれないが止める事は出来ない! お前が暴走するからだ!」


 峠の提案に両耳を塞ぎ頭を掻き毟る凍牙。

 凍牙の峠に対する溝は深かった。


『確かに庭氷漬けにしたりビル壊したりは悪かったよ……もうやらねえから! 頼む!』


「だから信用出来ないって言ってるだろ! 黙れ!」

『お前なあ……』


 切り捨てるような凍牙の態度に峠は痺れを切らした。

 口に出さずに隠していた、積み重なった本心を開錠する。


『俺もお前の一面なんだよ! 何度も言ってるだろ! 確かに俺は能力が強すぎて使いこなせてねえ……でもお前の能力は制御は完璧でも威力はねえ! どっちもどっちなんだよ! そこを二人合わせりゃ完璧になるんだ! 俺はお前にとっての自分なんだ! あいつらは信用出来るのになんでお前は俺を、自分を信用出来ねえんだよ! 俺だって、反省ぐらいするわ! 俺だって俺達とダチでいてくれた麗紗を止めてえんだよ!』


「………」


 堰を切ったように溢れ出した峠の言葉に、凍牙の心は揺らいだ。

 峠の言葉は、嘘偽りがなく素直なものなのではないかと。


 琥珀の言う通り、ただ暴れるだけの人格ではないのではないかと。

 凍牙は、そんな峠にゆっくりと口を開いた。


「……分かった。なら試させて貰おう。本当に、お前がお嬢様を止められるのかどうか」

「……へへ、そんなの決まってるじゃねえか」


 峠はニヤリと笑って凍牙に言う。


「止められるかどうかじゃない。止めるんだよ!」

「どうにかしてお父さんを助けないと……! 特色機動隊は当てにならないし……! でも今どこの部屋に居るのか全然分かんないんだよな……」


 NNNの本社を建物の隙間から窺う優紀。

 そんな彼女の手には、一丁の対特色者用レーザーガンが握られていた。


 対特色者用レーザーガンは白を基調としたマシュマロを細長くしたような銃身を持ち、拳銃程度の大きさをしている。


 レベル5特色者程度の威力があるので危険物ではあるのだがいつどこで特色者が暴走するか分からないので一般人の携帯は一応認められていた。


 しかし危険物なので堂々と持ち歩ける代物ではない。


「誰も居ないな……まあそれもそっか……」


 もっとも、優紀の周囲には人が居ないので何ら問題は無いが。

 周囲の人間は皆とっくに避難していた。


「どこかに入れそうな場所は無いかな……入口には人が立って――」


「かわいい女の子みっ――ぐへっ!」

「……右近あなたいい加減にしなさいよ」


「わっ! びっくりした!」


 探る優紀の背後から、右近とつみれが現れる。

 二人は優紀が本社の様子を見ている事に気付き、見張りとしての役目を果たす事にしたのだ。


 主につみれが。

 右近は単に優紀の顔に惹かれただけである。


 つみれは右近を沈めつつも優紀に詰め寄った。


「こんな所で何をしているの? 危ないわよ」

「あっ……すみません……失礼しました」


 優紀はこれ以上はまずいとそそくさと退散する事にした。

 父親を連れ戻せずに引き返すのは悔しかったが。


(ごめんお父さん……今は無理でも明日絶対助けるから……!)


 歯を食いしばりつつも来た道を戻る優紀。


「……ん? あなたちょっと待ちなさい!」

「えっ?」


 そんな優紀の腕を、つみれが強く掴んで引き留める。

 その腕には対特色者用レーザーガンが握られていた。


「……それで何をする気だったの? 答えなさい!」

「うわっ! た、ただの護身用です! 放してください!」


「信じられると思ってる? 『安定解除』」

「おいつみれ! さすがにそこまでは……」


「あなたは黙ってなさい!」

「えっ……!?」


「な、何それ……」


 つみれは優紀の腕をがっしりと掴んだまま、銃の引き金を引く。

 右近は少しつみれの様子が変である事に気付く。


 普段は多少暴力的とはいえ、それは右近が他の女子に目が行った時のみであり他人を殴るような事は無かった。


 それが今は――。

 特色者になる前の段階にも関わらず、性格が変化していた。


「変身!」

「おいちょっと待て! どうしたんだよつみれ! 変だぞ!」


「黙れって言ったのが分からないの? 馬鹿」

「がっ!」


「ええ……どういう事……!?」


 つみれはそう言い放って右近を殴り飛ばす。

 優紀はあまりの展開に困惑した。


「おいつみれ……銃は本当に追い詰められた時しか使わないって決めてただろ! なんでこんな時に使うんだよ!」


「充分追い詰められてるわよ……この女が私の右近に色目使ったじゃない!殺してやる殺してやる殺してやる!」


「嘘だろ……」


 唖然とする二人をよそに、つみれは殺意をたっぷり込めてハリセンを具現化させた。








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