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麗紗ちゃんは最狂メンヘラ  作者: 吉野かぼす
第四章 プレゼントですよ先輩!
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下剤

「ほ、本当ですか!?」

「ええ! 私……感動しすぎて涙が止まらなくなっちゃったんですよ……あっ……思い出したらまた涙がぁ……!」


 感激がフラッシュバックし泣き崩れる真乃。

 麗紗はそんな真乃を見て嬉しさに満たされる。


「……そんなに感動しただなんて……矢面に立って演説した甲斐があります……!」

(ほんと噓泣きうめーなコイツ……)


 そんな真乃を榎葉は何とも言えない心境で見つめる。


 真乃の特技である嘘泣きは、財閥でもかなり多用されていた。


 童顔ではあるが一応は美人な真乃の泣き落としはそれなりに男に対して破壊力があったのだ。


 彼女は嘘泣きを使った後必ず榎葉を飲みに誘い、泣き落としに負けた男を酔っぱらいながら貶すのがルーティンである。


「いいでしょう! その情熱に感動しました! あなたを雇います!」


「やったーっ! ありがとうございます!」

(成功した……!? 媚売りもバカにならねえな……)


 麗紗は何のためらいもなく真乃を雇った。

 経済力と警戒心のなさが成せる業である。


「ところで……あなたの後ろに居る人達は……」


「あっ紹介しますね! 私と同じくあなたの演説に感動してあなたの元で働く事を切望している人達です!」


「そうでしたか! ではあなた達も雇いましょう!」

「「「ありがとうございます!」」」


「恩に着る……!」

(いやいくら何でもちょろすぎるだろ!? 罠か!?)


 榎葉は麗紗に頭を下げつつも必死に頭を回転させる。


 真乃が媚を売り捌いたとはいえ、流石に事が上手く運びすぎていた。


 警戒をして当然である。

 榎葉はいつでも能力を発動出来るように身構えた。


 しかしその警戒は無駄に終わった。


「この人達まで雇って下さるなんて……本当にありがとうございます麗紗さん……!」


「いえいえ……日本支配には優秀な人材も必要ですから! それよりも敬語はやめてくださいよ真乃さん! 私の方が年下ですし……!」


「いいの……? じゃあ麗紗って呼ぶわね! あ、麗紗も、年上だからって私に敬語使わなくていいから!」


「ほ、本当……!? じゃあ真乃って呼ぶ! RAIN交換しようよ!」

「いいわよ! はい!」


(なんか仲良くなってるし……どういう事だよ!)


 とんとん拍子に友情を築いていく二人に困惑する榎葉。

 相手はあの惨たらしい演説をした麗紗である。


 しかし、榎葉は麗紗の本質を見違えていた。

 麗紗は化物ではなくメンヘラなのだ。


 友好的で自分を肯定してくる人間であれば誰にでも心を開く。

 流石に狂愛を注ぐ対象は琥珀一人だが。


 つまりやろうと思えば誰でも麗紗と友達になる事ができるのだ。


 みんなもやってみよう! 


「私達、仲良くなれそうね、麗紗!」

「ええ!」


 真乃と麗紗は手を取り合って子供のようにぐるぐると回った。

 見事なまでの交渉成立である。


「脳が追い付かねえ……」


「まあ……良かったんじゃないっすかね……」

「ふふっ、微笑ましいわね!」


「フッ……子供だな……!」


 榎葉達はあまりの円滑さに半ば呆れつつも

楽し気な二人の様子を見守った。


 こうして真乃達は麗紗の傘下に入った。

 それが後に人類史上最大の悪夢を生み出す事になるとも知らずに……。

 麗紗の演説から、三日が経った。

 日本は今、カオスの極みとなっていた。


 まず命知らずの馬鹿が集まってデモを起こしたり窃盗などの犯罪が横行したりして無法地帯になった。


 全部麗紗が片付けたから次の日から静かになったけど。

 どう片付けたかは……あまり思い出したくはない。


 次に、政府に藁にも縋るような民衆の期待が圧し掛かった。

 どうにかして対策は取れないのかと。


 全国の特色機動隊を出動させるなどの対応はしたけどやっぱり麗紗には通用しなかった。


 特色機動隊には結構な数のレベル10の特色者が居るはずなのに何でここまで通用しないんだろう……。


 能力が反則的だから? 

 まあどっちにしろ政府は麗紗に勝てなかったのだ。


 道を歩いていると、人が減ったなあと思う。

 天気は晴れていてもどことなくどんよりとした重い空気を感じる。


 国民のほぼ全員が、退屈でもまともな国家が戻ってくる事を諦めていた。


 そして、麗紗は今日NNNから7月9日に正式に日本を統治すると発表した。


 7月9日、私の誕生日だ。

 今はその日が来るのがひどく億劫だった。


 そんな状況での希望は、千歳と……私の、推し事の盾。


 あの盾なら、もしかしたら麗紗に対抗できるかもしれない。


 化物に勝った、あの盾なら。

 ただの希望的観測だけどね! 


 それにしても千歳は一体こんな時に何をやっているんだろう。


 漢野が麗紗を止めてくれるとか言ってたけど……。


 私達の中で唯一のブレーンが働いてくれない。

 ずっと実験室に籠ったまんまだし……。


 ちなみに漢野だけじゃなく耕一郎も借り出されているらしい。


 まああの人はあんまり役に立たなさそうだし置いておこう。


 で、私は今、どうすればいいのか屋敷の私の部屋が完全に再現された部屋のベッドの上でずっと考えている。


 麗紗に呼ばれなくても何だかんだ言ってここに来てしまうあたり意外と私はここを気に入ってるみたいだ。


 この部屋が作られた意図は未だに分からないけど……。


 そんな風にぼーっと世界と戦っていると、ドアがコンコンとノックされる。


 このやたら丁寧なノックは……。


「入っていいよ~」

「失礼します琥珀さん。少し用がありましてね……」


 やっぱり凍牙だった。

 私がドア越しにそう返事をすると、真面目そうな顔で部屋に入ってきて言う。


「私と一緒に、能力を鍛えませんか?」





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