第23話 ピュトン
しばらく進んでいくと、大きな洞窟の入り口が見えた。
入り口の前の木々は切り倒されて、小さな広場になっていたが、そこには数組の冒険者がたむろしていた。。
(ここがダンジョンの入り口らしいな。こいつらなんで入らないのかな?)
冒険者達のプレートを見ると、ほとんどアイロンかブロンドで、3~4人でパーティーを組んでいるようだった。
「あそこがダンジョンの入り口のようね。」
アニエスがそう言うと、「わーいダンジョンダンジョン!」「ダンジョンニャ!」とエマとミヤが騒ぎ出した。
すると、今まで中に入る気配の無さそうだった冒険者達が、ごそごそと準備を始めたようだった。
(なんだこいつら、俺たちについてくるつもりなのかな?)
アニエスはそんな冒険者達を気にもしないで、洞窟の前に立つと中をのぞき込んだ。
「大佐、洞窟の中の気配はどう?」
アニエスが大佐に言った。
「200メートルくらい先で、カタカタ音がしています。」
「そう、多分スケルトンね。じゃ、中に入るから、みんな松明に火をつけて。」
カズトがパイロキネシスでみんなの松明に火をつけると、アニエスを先頭に、洞窟の中へ入っていった。
すると案の定、広場にいた冒険者達が我先にとカズト達の後に続いて洞窟へ入ってきた。
(そういうことか。こいつらランクの高い冒険者が来るのを待っていたんだな。ついてくるのは良いけど、実力もないのに洞窟の奥へ行くのは危ないよなぁ。どうしようか。)
カズトは冒険者達に聞こえないようにテレパシーでアニエスに話しかけた。
【アニエス、待ってくれ。】
【なあに?】
【入り口にいた冒険者達がぞろぞろついてきてる。】
【別に良いんじゃないの?】
【でも、帰りはテレポーテーションで帰るんだろ?こいつら奥で置き去りにすることになるぞ。】
【それもそうね。どうしようかな・・・】
【ちょっと奥までテレポーテーション行かないか?実力ない奴らはそれで引き返すだろう。】
【分かったわ。そうしましょう。みんな今の聞いていたわよね。テレポーテーションで先に進むわよ。】
カズトはクレヤボヤンスで洞窟の先を見ると、テレポーテーションで2~300メート先へ移動し、後ろを振り向いてクレヤボヤンスで冒険者達の方を見てみた。
(驚いているな。まぁ、目の前にいた連中が突然消えてしまったんだから当然だけど。)
「カズト見ているんでしょ。どんな様子?」
「直ぐ後ろの連中は驚いてぽかんとしてるよ。その後ろの連中は俺たちが消えたのを知らずに奥へ進んでいるけど、そのうち気がつくんじゃないかな。」
「じゃ、先に進むわね。」
アニエスを先頭にどんどん奥に進んでいくと、前方にスケルトンが見えた。
スケルトンはカズト達に気がつくと、一直線に向かってきた。
更に、先ほどテレポーテーションで飛び越えたスケルトン達も後から迫ってきた。
「アニエス。俺は戦闘に加わらない方が良いんだよね?」
「そうね。バリアでもかけてその辺で見ていて。」
「了解!」
カズトは、自分にバリアをかけて、見ていることにした。
「前から来ているスケルトンは私と大佐でかたづけるから、後はノラとエマとミヤでお願い。」
アニエスはそう指示をすると、戦闘に入った。
アニエス達はそれぞれ自分の武器を使って、スケルトンを次々に倒していった。
(これくらいの敵なら、余裕だな。)
そしてあっさりとスケルトンを片付けると、再び奥へ進んでいった。
時々スケルトンが襲ってきたが、難なく片付けて奥へ進み、洞窟の一番奥らしき所へついた。
そこは、大きな広場のようになっていて、真ん中にはとぐろを巻いた大蛇が鎌首を持ち上げていた。
(この階層のボスかな?それにしてもでかいな。)
大蛇は2~30メートルはありそうで、人間など一口で飲み込めそうな大きな口をしていた。
「ピュトンかしら。みんな、念のためにバリアを張っておいてね。ノラとエマのバリアはカズトにお願いするわ。」
「分かった。」
カズトは返事をすると、二人にバリアを張ってあげた。
「私と大佐はトルネードで上から攻撃するわ。ミヤはフリーズを使って。ノラとエマは、左右に分かれて矢で攻撃して。」
アニエスは指示を出すと、大佐と共にトルネードでピュトンの上に浮きかがった。
ミヤはフリーズの魔法を使ったが、相手が大きすぎて、動きを止めるまではできなかった。
しかし、全く効果がなかったわけではなく、ピュトンの動きが少し遅くなっているようだった。
その後は5人でピュトンに矢を射かけたが、鱗がかなり堅いようで、なかなか致命傷を与えられなかった。
(これは苦戦しそうだな。)
「うーん、このままでは駄目ね。私と大佐で目を狙うから、目がつぶれたらあごの下から攻撃して。ミヤはフリーズをかけ続けて。」
それからは、アニエスと大佐が、ピュトンの攻撃をよけながら、エアショットで目を狙って攻撃を始めた。
ピュトンは大きな口を開けて、アニエスと大佐に襲いかかったが、二人はトルネードを巧みに操りながら、ピュトンの攻撃を避けてピュトンの目に攻撃を続けた。
そしてフリーズの効果でピュトンの動きが徐々に鈍くなると、ピュトンの目をつぶすことに成功した。
「ミヤ、頭の下からアイススピアを打ち込んで。」
ミヤは素早くピュトンの首の下に潜り込むと、上に向かってアイススピアを放った。
すると、ピュトン鎌首がドーンと音を立てて地面に落ちた。
その瞬間、エマが大剣でピュトンの首元に切りつけ、頭を切り落とした。
「ふぅ~。思ったより手こずったわね。」
アニエスはそう言いながらも満足そうな顔をしていた。
「みんな頑張ったね。連携が取れていてとても良かったと思うよ。」
カズトはそう言うと、ミヤとエマの頭をなでた。
「じゃ、少し休んだら次の階層へ行きましょう。どこから行けば良いのかしら。」
アニエスがそういったときだった。
今倒したピュトンの死体がスーッと消えていき、その後に1本の剣が現れ、更に洞窟の一番奥に大きな扉が現れた。
(階層のボスを倒すと、次の階層への扉が出て、何かドロップするんだな。)
「剣が出てきたぞ。」
そう言うとカズトはその剣をアポートで取り寄せると、みんなに見せた。。
「何だろうこの剣。結構長いよね。」
そう言うと、カズトはアニエスに剣を渡した。
アニエスは剣をじっくりと見ると、「剣にはあまり詳しくないけれど、もしかしたら聖剣グラムかも知れないわね。ほら、ここにGramって書いている。石や鉄も切り裂くって言われているわ。」と言った。
アニエスがそう言うと、みんなはアニエスが指さしたところをのぞき込んだ。
「ほんとだ。確かにGramって書いてあるね。じゃ、このサイズだし、これはエマに使ってもらおうか。」
「それが良さそうね。」
アニエスは、そう言うと剣をエマに渡した。
「いいの?わぁ、うれしいなぁ。」
「試してごらんよ。」
カズトに言われると、エマはグラムを装備し近くの岩に切りつけた。
すると、岩は音もなく真っ二つに切り裂かれた。
(すごい切れ味だな。最初からこれがあれば、ピュトンは一撃だったかも知れないな。)
「すごーい!」
エマは大喜びで次々に岩を切り裂いた。
「それじゃ、この大剣は使わないから、テレポーテーションで馬車に置いてこようか。」
「カズト、その必要はないわ。この袋に入れておきましょ。」
「そんな小さな袋じゃ入らないよ。」
「大丈夫よ」
アニエスはそう言うと、エマの大剣を袋に突っ込んだ。
すると、大剣はスーッと袋の中に入ってしまった。
「何それ、すごいじゃないか。」
「旅に出る前に婆様から、二つあるから一つ持って行きなさいって渡されたのよ。どっかのダンジョンのドロップ品らしいわ。」
「へぇ。」
「今度探しに行きましょ。」
「そうだね。」
「じゃ、カズト、扉の向こうを確認してもらえる?。」
「分かったよ。」
カズトはそう答えると、クレヤボヤンスで扉の先を透視すた。
すると、予想どおりに下に向かう階段があった。
「扉の向こうに階段があるから、あそこから2階層へいけそうだ。」
「じゃ、2階層へ行きましょ!」
こうしてピュトンを倒しカズト達は、扉を開けて2階層へと向かって行った。