第20話 光の魔法とエルフの弓
その後のアニエスには朝食と昼食後に光の妖精との契約を試みるのが日課となった。
ノラ、エマ、ミヤ、大佐はルーカスの元で弓の訓練に励み、アニエスも空いた時間はノラ達と弓の訓練をした。
一方カズトは午前中はナターシアからワインの作り方を学び、午後からはみんなと一緒に弓の訓練をした。
そして、あっと言う間に1週間が過ぎ去った。
アニエスもなかなか光の精霊と契約ができず、少しいらいらしていたが、その日の朝は精霊を感じると言っていそしで泉の前にいくと契約の呪文を唱えた。
『この地に住まう精霊よ、我と契約しその力を我に与えんことを願う。』
すると、次の瞬間アニエスの身体が金色に光った。
そして、ついにアニエスは光の精霊と契約をすることができた。
アニエスは、直ぐにナターシアに報告に行った。
アニエスが着いたとき、ナターシアは丁度カズトにワイン作りの最後の行程をを教えているところだった。
「アニエス、契約できたのですね。」
ナターシアはアニエスを見ると優しく微笑みながらアニエスに言った。
「はい。今、光の精霊と契約できました。」
「おめでとうアニエス。では、あなたに渡すものがあるので、少し待っていて下さい。」
ナターシアはそう言うと、奥の部屋に行った。
「アニエスおめでとう。ついにやったね。」
「長かったわ。ほんとに契約できるのか毎日不安だったけど、ほんとにうれしい!」
アニエスは、満面の笑みでカズトに言った。
しばらく待っていると、ナターシアは小さな箱を持って戻ってきた。
「アニエス、あなたにはこれを差し上げます。」
そう言うとナターシアは箱を開けて、ネックレスをアニエスに手渡した。
「これは何ですか?」
「これは、エルフの光がついたネックレルです。これを着けてホーリーライトを使えば威力が増します。」
「おお、それは有り難うございます。」
「ところでアニエス、光の精霊と契約しただけではまだサキュバスとはまだ戦えません。これからは、私がホーリーライトを教えましょう。」
「はい。有り難うございます。」
「今は、カズトにワインの作り方を教えていますので、午後から訓練を始めましょう。あなたは、泉の前でホーリーライトの訓練をしておいて下さい。」
「はい。」
アニエスは返事をすると、泉の前に行き、ホーリーライトの訓練を始めた。
「カズトさん、それほど時間はかからないと思いますので、もうしばらくアニエスに時間を下さい。」
「はい、ナターシア様にお任せいたしますので、宜しくお願いいたします。」
こうしてアニエスの光魔法の訓練が始まったが、使い方自体はアニエスが普段使っている風魔法と基本的に同じなので、ホーリーショットやホーリースピアなどは直ぐにできるようになった。
そして、最初は上手くできなかったホーリーライトも、翌日の午後には使えるようになった。
「アニエス、よく頑張りましたね。これで訓練は終わりです。」
「有り難うございました。では、カズト達に報告して参ります。」
アニエスはそう言うと、カズト達の方へ走っていった。
「カズト!ホーリーライト使えるようになったわよ。」
アニエスはそう言うと、ミヤが良くやるように無邪気にカズトに抱きついた。
カズトは少し顔を赤らめたが、直ぐに「おめでとうアニエス。」と言った。
ノラ達もアニエスの所へやってくると、口々にお祝いの言葉を言った。
「アニエス。良くやったね。では、君たちともこれでお別れだね。」
弓を教えていたルーカスがみんなに言った。
「ルーカス様どうも有り難うございました。」
カズトはそう言うと深々と頭を下げた。
「では、旅立つ前に君たちにエルフの弓をプレゼントしよう。属性を付与できるから、それぞれの属性を付与して使うと良いだろ。」
そう言うとルーカスは皆を自分の家に連れて行き、それぞれに1本ずつの弓を渡した。
「そうだな、ミヤと大佐、弓に属性を付与してごらん。弓を握って魔力を送り込むだけだよ。」
弓は属性が付与される前は真っ白だったが、ミヤが水属性を付与すると弓は青色に染まり、大佐が風属性を付与すると、緑に色に染まった。
「綺麗ニャ。」ミヤはそう言うと、早速外に出て矢を1本的に向かって放ってみた。
すると、矢は水色に輝きながら飛んでいった。
それを見ていたノラとエマも、弓に魔力を付与してみた。
すると、ノラの弓は赤く、エマの弓は黄色に染まった。
4人がうれしそうに矢を放ち始めたので、カズトはルーカスにお礼を言うと、アニエスと共にナターシアの元へ向かった。
「ナターシア様、どうも有り難うございました。これでサキュバスとも戦うことができます。」
「では、カズト殿、アニエス。サキュバスへの対処を宜しくお願いいたします。」
「はい。」
「ところで、あちらへはいつ戻る予定ですか?」
「直ぐに戻っても良かったのですが、ノラ達がルーカス様頂いた弓で訓練を始めてしまいましたので、明日戻ろうと思っています。」
「そうですか、では、滝行は如何ですか?この泉の源流に小さな滝があります。そこで滝行をすると魔力量が5割ほど増えますよ。」
「そんなところがあるのですか。アニエス、やってみる?」
「やってみたいわ。」
「じゃ、ノラ達も誘ってやってみようか。」
「朝なら1時間も滝の水にあたれば、そこそこ魔力が増えます。あまり長時間やっても5割以上は増えませんので、やり過ぎないように注意して下さい。場所は小川に沿って行けば直ぐですよ。」
「分かりました。では私たちも今日は弓の訓練をして、明日の朝滝へ行くことにいたします。」
その後カズトとアニエスは弓の訓練をしているノラ達の所へ行って一緒に訓練をすることにした。
「カズトはどの属性を付与するの?」
ノラが興味深そうに尋ねた。
「そうだなぁ・・・」
カズトがそう言って弓を握ったときだった。
弓が急に光を帯びると、虹色に光り輝き始めた。
「カズト君は4属性もちだったな。これは忠国殿と同じ弓になったな。」
「先生も同じ弓を持っているのですか?」
「忠国殿がソフィーと共にここにやってきたときにエルフの弓を渡したら、同じように虹色に輝く弓になったよ。」
「うわぁ、カズト様の弓とっても綺麗ニャ。」
ミヤがカズトのそばではしゃいだ。
「アニエスはどうするの?」
エマがアニエスに聞くと、アニエスは弓を握りしめた。
弓は金色に輝くと、金色に染まっていった。
「アニエスは光属性を付与したのね、とっても綺麗だわ。」
ノラがうらやましそうに言った。
こうして全員の弓に属性が付与されると、その日は弓の訓練をして過ごした。
翌日は早朝から起きて、6人で滝を目指した。
小川に沿って30分も歩くと、やがて小さな滝に着いた。
「ここがナターシア様の行っておられた滝だな。でも、この大きさだと、一度にできるのは2人かな。」
「じゃ、最初は私とミヤね。」
そう言うと、エマはミヤの手を引っ張って滝の下へ入った。
滝の水はかなり冷たいようだったので、エマとミヤは震えながら滝行をやっていたが、なんとか1時間冷たい水に耐えた。
「エマ、ミヤ、どうだい?」
「なんか直すごく増えた気がする。」
「ミヤも増えた気がするニャ。」
「それは良かった。じゃ、次はアニエスとノラ。どうぞ。」
カズトに言われて、アニエスとノラが滝行を始めた。
そして、二人が無事に滝行を終えると、最後にカズトと大佐が滝の下へと入って滝行を始めた。
こうして無事に全員滝行を終えた。
「みんなどうだい?」
「うん、かなり増えている感じがするわ。」
アニエスが言った。
ノラと大佐も魔力量が増えたようで、カズトも魔力が増えたことが実感できた。
「じゃ、里に戻ろう。」
そう言うとカズトは全員に掴まるように言って、テレポーテーションで里に戻った。
カズト達は里に戻ると昼食を食べて、出発の挨拶のためにナターシアの元へ行った。
「ナターシア様、それではベスツビへ戻ります。お世話になりました。」
「カズト、アニエス、ノラ、エマ、ミヤ、大佐、宜しく頼みましたよ。」
「はい。」
みんなはそろって返事をすると、ルーカスの元へ行ってお別れの挨拶をして、テレポーテーションで森の外に出るとベスツビの宿屋へ戻った。