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異世界に行きませんか?と言う言葉に釣られた俺は異世界で最強になった!  作者: 宜候(ヨロシクソウロウ)
第2章 グリング王国
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第18話 ナターシア

カズト達がベスツビの街を出てから既に一週間が過ぎていた。


エルフの光は徐々に輝きを増してきていたが、未だにエルフの里には着いていなかった。


そして、ベルゲンと言う街に着くと、そこから先は西へ続く道が途絶えていた。


カズト達はギルドに泊まることにして、部屋を借りると打ち合わせのために食堂に集まった。


「この先は西に続く道がないけどどうするかな。」


カズトはそう言うと、目を閉じて考え始めた。


「馬車を預けてこの先は徒歩で行くしかないわね。」


アニエスが誰に言うわけでもなくぼそぼそと言った。


「ん~ん。せめて、エルフの森が何処にあるか分かればなぁ・・・」


カズトはそう言うと考えがまとめようと、再び思案を始めた。


その時、一人の男がカズト達の方へ歩いてきた。


「アニエス。アニエスだろ?」


その声を聞いて、カズト達は一斉に声が聞こえた方を見た。


「あー、ヴィルヘルムさん。」


「やぁ、アニエス久しぶりだね。こんなところで会うなんて奇遇だね。」


「ええ、私もやっと念願の旅に出たのよ。」


「と言うことは、この人が?」


「そうよ。爺様の弟子のカズトさん。それから、同じく弟子のミヤと大佐。こちらの二人は旅の途中で仲間になったノラとエマよ。」


「そうか。念願が叶って良かったね。」


「おい、アニエス。この人は誰なの?」


カズトが尋ねるとアニエスは慌てて紹介した。


「この人な、ヴィルヘルムさん。お父様のお弟子さんよ。去年までグレンサにいたのよ。」


カズト達は、アニエスに紹介されると、それぞれヴィルヘルムに挨拶をした。


「ところでアニエス、何か深刻そうな顔をしていたけれど、何かあったのかい?」


「ええ、エルフの里を探して、ずっと西へ向かっていたのだけれど、この先は道もないしどうしようかと悩んでいるところなの。それにエルフの里が何処にあるのかも分かっていないし。」


「エルフの里か、昔ソフィー様に聞いたら、このベルゲンの街の西の方にあると聞いたけど、特殊な結界か何かで守られていて、誰でも入れわけじゃないみたいだよ。」


「え、婆様がそんな話しを・・・それは良いことを聞いたわ。ヴィルヘルムさんナイスよ!」


(と言うことは、あの森の中のどこかにエルフの里がある可能性が高そうだな。)


「役に立てたなら良かったよ。ところで、夕食はここで食べるのか?」


「ええ、そのつもりだけど。」


「川魚の旨い店があるから、一緒に食べないか?」


アニエスがカズトの方を見たので、カズトは他のみんなをみわたして頷いた。


それからはギルドで、ヴィルヘルムの旅の話を聞いて過ごし、日が暮れると、ヴィルヘルムに連れられて、夕食に向かった。


料理の注文をヴィルヘルムに任せると、カズト達は席に着いた。


最初に、ヤマメの刺身、天ぷら、塩焼きが出てきて、それを食べ終わる頃に、鴨鍋、そして最後は鰻丼が出た。


どれもとても美味しく、みんな喜んで食べていた。


カズトにとってはとても懐かしい料理だったが、他の街ではほとんど見かけない料理ばかりでだった。


(もしかして、転移者の子孫がやっているのかな?今度俺も作ってみるかな。)


カズトは忠国からこれらの料理の作り方を教わっていたので、今度みんなに作ってあげようと思った。


食事を終えると、ヴィルヘルムはギルドの近くの宿屋に泊まっていると言うことで、そちらに帰って行った。


カズト達はギルドに戻り、明日の予定を決めるためにシャワーを浴びてから、カズトの部屋に集まった。


「さっきのヴィルヘルムさんの話では、この街の西の森にエルフの里がありそうなので、森の中を探そうと思うんだけど、闇雲に森の中を歩いても駄目だろうから、トルネードで上空から探そうと思うけどどうだろう。」


「ブーンと上がって、ギュッてするの?」


「あはは、エマ、ギュッとはしないよ。」


続いてノラが「地の果てまでもついていきます。」と言った。


「ノラも大げさだな。」


こうして、空からエルフの里を探すことにして、この日は解散した。


そして、カズトが眠りについたときだった。


夢の中にエルフの女性が現れてカズトに言った。


「私はエルフの里の女王ナターシアです。カズトさん。アニエスを連れてきてくれて有り難う。森の泉でお待ちしております。」


カズトは思わず目を覚ました。


(何だ今のは。夢か?森の泉・・・)


そして再び眠りに落ちていった。


翌朝、カズトは夜も明けきらぬうちに目覚めると、直ぐにアニエス達が寝ている部屋に行った。


「アニエス!アニエス!起きているか?」


カズトがドアをノックすると、しばらくして眠そうな目をこすりながらアニエスがドアを開けた。


「なぁに、カズト。こんな朝早くから。」


「昨日夢を見たんだ。」


「そうなの。じゃ、お休みなさい。」


「おい、待って。」


「ナターシアって知ってるか?」


「え、ナターシア?婆様のお母様のお名前よ。」


「昨日、夢の中にそのナターシアって人が出てきたんだよ。」


「ん、どういうことなの・・・」


「森の泉で待っているって言われたんだ。」


「そう、わかったわ。じゃお休みなさい・・・」


(ふぅ~、寝ぼけてるしアニエス・・・。まぁ、目が覚めてからでも良いか。)


1時間ほどすると。ばたばたと走る音が聞こえてきて、アニエスがカズトの部屋に飛び込んできた。


「カズト、大変よ。私の夢の中にカズトが出てきてね、なんか言ってたのよ。」


(夢じゃないし・・・)


「なんかって何だよ。」


「それがね、良く覚えてないのよ。カズト覚えてないの?」


「アニエスの夢だろ。知るわけないだろう。」


「それもそうねぇ・・・」


「アニエス。準備ができたら1階の食堂に集合な。ノラ達にも言っておいて。」


「わかったわ。じゃ、また後でね。」


アニエスは首をひねりながら自分の部屋に戻っていった。


アニエスが部屋に戻ると、大佐も起きたので、準備をしてカズトと大佐は食堂へ向かった。


しばらく待っているとアニエス達の食堂に来たので、朝食を食べると、西の森へ向かって歩いて行った。


森の前に着くと、カズトは「みんなここで待ってて。」と言ってトルネードで上空に上がり、クレヤボヤンスで西の方を見ながら飛んでいった。


(よし、見つけた。あれだな。)


カズトは泉を見つけると、みんなの所に戻った。


「どうだった?」


エマが少し心配そうにカズトに聞いた。


「霧に隠れていたけど、森の中に大きな泉があった。テレポーテーションで飛ぶから、みんな俺に掴まって。」


「もう見つけちゃったの?」


アニエスが驚いたようにカズトに聞いた。


「多分あそこだと思う。さぁ、みんな掴まって。」


カズトがそう言うとみんなはカズトに掴まり、テレポーテーションで森の泉へ行った。


泉の周りは深い霧に覆われ、1メートル先がやっと見える程度だった。


「あ、このことじゃないかしら。私の夢でカズトが言っていたこと。」


「あはは・・・アニエス。夢じゃないよ。」


カズトはそう言うと、クレヤボヤンスで周囲を見渡した。


(特に何も無さそうだな・・・一応声をかけてみるか。)


カズトがそう思ったとき、霧が渦を巻いて上空へと舞い上がり、泉の周りの霧が全て消え去った。


【カズトさん、そしてお仲間の皆さん。良くおいで下さいました。私はこの里の女王ナターシアです。】


強いテレパシーが頭に響いた。


そして、気がつくと目の前に一人の綺麗なエルフの女性が立っていた。


「あ・・・」


アニエスは思わず声を出した。


そこにいたのは祖母のソフィーとよく似たエルフの女性だった。


「アニエス。良く来ましたね。私はこの森のエルフの女王、そしてあなたの祖母ソフィーの母です。やっと会えましたね。」


「ひいお婆さま?」


アニエスはそう口に出したが、お婆さまと言うには見た目はとても若く、20代にしか見えなかった。


エメラルドグリーンの髪と瞳、そして透き通るような白い肌は、とてもこの世のものとは思えないほどだった。


(それにしても綺麗な人だな。あ、挨拶しないといけないな。エルフの光を使ってここまで導いてくれたんだから、一応招かれたって事で良いよな。)


「ナターシア様。本日はお招き頂き有り難うございます。」


「こちらこそ遠路はるばるおいで頂き有り難うございます。さ、我が家へどうぞ。」


カズトはそう言われてあたりを見ると、泉の周りにいつの間にか沢山の家があった。


(俺のクレヤボヤンスでも見えないようになっていたのか。エルフの魔法はすごいな。)


カズト達はナターシアに導かれて、森の家の中でものかなり大きな家へ案内された。


アニエスは、いきなり曾祖母と会ったためか、少しボーッとしていたが、ノラやエマは興味津々であたりを見渡していた。


家の中に入ると、椅子が置いてあり、カズト達はそこに座るように言われた。


「皆さん、あらためまして私はこのエルフの里の女王ナターシアです。」


「カズトです。お招きに感謝したします。」


「アニエスです。」


「ノラです。お会いできて光栄でございます。」


「エルフの女王様、私はエマです。」


「ミヤだにゃ。」


「大佐だわん!」


皆が挨拶を終えると、ナターシアは今回カズト達を招いた理由を話し始めた。


「今回皆様をお招きした一番の理由はサキュバスです。」


(やっぱりそれか。)


「サキュバスは殺すことはできないのですが、ホーリーライトで魔力を打ち消して魅了ができないようにすることはできます。ソフィーが旅をしていた頃は、ソフィーがサキュバスの魔力を打ち消してくれていたのですが、最近またサキュバスの魔力が戻ってきたようで、ベスツビのエルスター卿が魅了され、領民を苦しめています。ソフィーと忠国殿にお願いしようかとも思いましたが、今後の事を考えると、アニエスに早く光の魔法を使えるようになってもらうことが一番だと思い、お招きいたしました。」


「ソフィー様がエルフの光を俺に預けたのはそう言う理由があったからなのですね。」


「はい。カズトさんとアニエスが旅に出ることは予見しておりましたので、旅立つときにエルフの光をカズトさんに渡すよう事前にソフィーに伝えておきました。光の魔法を使うためには、光の精霊と契約しなくてはなりませんが、光の精霊はこのエルフの里以外にはほとんどいないので、いつかアニエスをここに招いて光の精霊と契約させるつもりでしたが、サキュバスが動き出したので、最初にこちらへ来てもらえるように致しました。」


「そう言うことでしたか、分かりました。」


「ナターシア様、光の精霊はどこにいるのですか。」


今まで黙って話を聞いていたアニエスが尋ねた。


「光の精霊は泉の近くの明るい場所にいます。」


「では、早速光の精霊と契約をして参ります。」


そう言ってアニエスが立ち上がろうとすると、ナターシアが制止した。


「お待ちなさい、アニエス。今のままでは人間の匂いが強いので、光の精霊はあなたと契約しないでしょう。しばらくここに滞在して、エルフの食べ物を食べて人間の匂い薄めなくてはなりません。」


アニエスは少しがっかりしたが、「分かりました。」と言って座り直した。


その時、何か聞きたそうにうずうずしていたノラがナターシアに尋ねた。


「エルフの食べ物を食べれば人間でも光の妖精と契約できるのでしょうか?」


「そうね。光の属性を持っていれば可能ですが、光の属性を持った人間は本当に希ですので難しいかと思います。」


「そうですか・・・」


ノラはがっかりしてうなだれた。


「その代わりと言っては何ですが、皆さんの属性を見てあげましょう。」


こうして、カズト達はナターシアにどの属性を持っているか見てもらうことになった。


「では、最初にノラさんから。」


そう言うと、ナターシアはノラの手を握った。


「あなたは、黄色い光が見えましたので、土の属性があります。」


「エマは?エマは?」


エマが立ち上がってナターシアの前に行ってひざまずいた。


「エマさんね。あなたは赤い光が見えるので、火の属性がありますね。」


その後、ナターシアが順番に確認していき、ミヤは水属性、大佐は風属性、アニエスは風属性と光属性があることが分かった。


そして、最後にカズトの順番になった。


「カズトさんは・・・・地水火風全ての属性がありますね。忠国殿と同じですね。もう一つあるようですが、光属性ではないようで。これは私には見えない属性のようです。これも忠国殿と同じです。」


「カズト様すごいニャ。」


ミヤは、水属性しかないので、少しがっかりしていたが、カズトの属性を聞くと自分のことのように大喜びした。


(もう一つって何だろう。以前ボックが真生になっても良いと行っていたけど、まさか魔王属性とかあるのかな?)


「有り難うございました。」


カズトがお礼を言うと、その後はエルフの里について、ナターシアが色々教えてくれた。


「では、皆様。アニエスが光の精霊と契約できるまで、この里でゆっくりなさって下さい。この里には忠国殿に弓を教えた弓の名手もおりますので、良かったら教わってみるのも良いかも知れません。」


「そんな方がお見えになるのですか、是非ご教授頂きたいと思います。」


「では後ほど紹介いたしましょう。」


「有り難うございます。」


その後カズト達は昼食を食べ、滞在用の家に案内された。


こうしてカズト達はエルフの里に滞在することになった。




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