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異世界に行きませんか?と言う言葉に釣られた俺は異世界で最強になった!  作者: 宜候(ヨロシクソウロウ)
第2章 グリング王国
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第17話 エルスター卿とサキュバス

翌朝はカズト達は軽い朝食を済ませて、次の街に向けて出発した。


今日はアニエスに御者を任せて、ミヤにも教えてもらうことにした。


カズトはのんびり景色を楽しもうと、荷台の幌を外して、一番後ろに座った。


ノラ、エマ、大佐は、馬車に乗り込むと直ぐに魔力強化の練習を始めたので、「うーん、うーん」と相変わらずうめくような声が聞こえていたが、カズトは気にせずに遠くを眺めて過ごした。


しかし、しばらくすると、練習に飽きたのか、エマがカズトの横に来て腰を下ろした。


「ねぇ、カズト、昨日はなんかゴブリンが浮かび上がってきて、襲われそうな気がしてビビっちゃったけど、最後の『ギュッ』ってやつ。あの『ギューッ』ってやつはなんなの?」


「あれは俺のユニークスキルみたいなもので、サイコキネシスだよ。」


「へぇ~。すごいなぁ。あれだったら、近くに行かなくても良いから返り血で服も汚れないし。エマ達が危ないときはあの『ギュッ』てやつで助けてくれるんだよね。」


「そうだな。エマが襲われていたら、『ギュッ』ってやって助けてあげるよ。」


「それを聞いて安心したぁ。もう何にも怖くないや。えへへ。」


「じゃ、魔物が出たら、ガンガン倒してね。」


「はい!」


エマは元気よく返事をすると、元の場所に戻って再び練習を始めた。


その後は、途中で昼食を食べ、日暮れ近くになってセルヨールという小さな街に到着した。


アニエスによれば、ここはベスツビの領主が治める街と言うことだった。


カズト達が街に入ると、まだ日暮れ前だというのに、大通りには人がまばらで、ドアを閉め切って営業していない店も多かった。


「なんか活気のない街だな。」


「そうね。どうしたのかしら。以前来たときはもっと賑わっていたのに。」


アニエスも不思議がった。


しばらく進むと、宿屋があったので、そこに泊まることにした。


「親父さん、どこか食事の美味しい店はないか?」


カズトは部屋を借りると、旅館の店主に聞いてみた。


「昔は美味しい料理を出す店がいくつもあったんだが、今はどこも閉店してしまってねぇ。ギルドの食堂ぐらいしかないよ。」


「そうなんだ。」


カズトはギルドの場所を聞くと、馬車を旅館に預け、みんなで徒歩で向かった。


ギルドの中は、グレンザと同じ配置になっていたがかなり小さく、中に入ると、冒険者が5人ほど食事をしていた。


カズト達も、食事を頼み、テーブルに座って料理を待っていたが、エマがスゥーと立ち上がると、食事をしている冒険者の所へ行った。


そしてしばらく何か話していたが、料理が出来上がる頃に戻ってきて、冒険者に聞いたことを話してくれた。


「さっき、カズトが活気がないって言ってたから、何でなのか聞いてきたよ。」


「エマ、気が利くね。」


さすが物怖じしない性格のエマらしいとカズトは感心した。


「なんでも、1年くらい前に、ご領主さまが病気で亡くなったんだって。次のご領主様が息子さんに変わったんだけど、まだ子供だったんで、新しいご領主様のお母さんのお兄さん、簡単に言えば伯父さんだね。その人がご領主様の後見人になって統治のことを代理ですることになったんだって。それでね、半年くらいは何にも無かったんだけど、その伯父さんがどっかに視察に行って帰ってきたら、急に税金を2倍にするって言い出したらしいの。周りの人は止めようとしたらしいけど、結局押し切られて税金が2倍になっちゃったらしいのよ。それで、商人達がこの街を出てよその街に行ってしまって、この有様になったってことみたい。」


「そうか、エマ有り難う。しかし、視察に行って税金が2倍か・・・」


「ねぇ、カズト、その視察で何か起こったのかも知れないわね。」


アニエスがそう言うと、カズトは考え込んだ


(もしかしたらサキュバスか・・・若くて美しい女性の姿で男を魅了するって先生が言ってたよなぁ。戦闘力が高いわけでは無いけど、男にとってはかなりやっかいな悪魔の一種だって言ってたな。どうやって倒したって言ってったかなぁ・・・・)


「みんな、、とりあえずベスツビへ行って確かめようと思うんだけど。」


「そうね、それが良いと思うわ。」


「ノラとエマもいいかな?」


「私もエマもカズトに何処までもついて行きます!」


「アニエス、ベスツビまでどれくらいかかる?」


「そうね、朝一番で出れば日暮れ前には着けると思うわ。」


「じゃ、明日は朝一番で出発しよう。」


カズト達は食事を済ませると、宿屋に戻った。


カズトは、シャワーを浴びると部屋へ行き、ボックに尋ねた。


「なぁ、ボック。サキュバスのことを以前先生に聞いたんだけど、ボックは知ってる?」


「はい、存じております。」


「男にとってはかなりやっかいって言っていたと思うんだけど、何がそんなにやっかいなんだ?」


「サキュバスは魅了という魔法を使うのですが、男は目を見られるだけど、魅了されてしまい、サキュバスの言うことを何でも聞くようになってしまうのでございます。」


「領主の伯父がサキュバスに魅了されている可能性はあると思うか?」


「かなり可能性は高いかと存じます。」


「そうかぁ。で、サキュバスの弱点は何だっけ。先生に聞いたと思うけど忘れちゃったよ。」


「光属性魔法の、ホーリーライトでございます。」


「光属性?」


「はい。」


「でも、属性魔法は地水火風の4つじゃないのか?」


「はい、人間が使えるのはその4つでございますが、エルフはこの光属性の魔法を使うことが出来ます。」


「あー思い出した。確か、ホーリーライトで追っ払ったって言ってったな。」


「はい、あの時は忠国殿がサキュバスに魅了されかけたのですが、一緒に旅をなされていたソフィー様がホーリーライトで追い払いました。」


「ハーフエルフのソフィー様が使えると言うことは、エルフの血を引くアニエスでも光の妖精と契約して使うことが出来るかもしれないのか。」


「はい。」


「光の妖精はどこにいるのか知っているか?」


「エルフの里でございます。」


「と言うことは、もし領主の伯父をサキュバスが操っているなら、先にエルフの里に行かないといけないと言うことだな。」


「おっしゃる通りかと存じます。」


「そうかぁ・・・」


カズトはエルフの光を取り出すと、光が指し示す方をじっと見つめた。


翌朝カズト達は、まだ暗いうちからベスツビへ向かって出発した。


そして、まだ明るいうちにベスツビに到着した。


ベスツビの街に入ると、カズト達はまず領主の伯父の屋敷を探した。


彼はエルスター卿と呼ばれていて、屋敷は領主の城の直ぐ近くにあり、直ぐに見つけることができた。


カズトはエルスター卿の屋敷から一番近い宿屋に4人部屋を二つ借りると、アニエス達には食糧の補給や、今日の夕食を買ってくるように頼み、カズトは大佐と一緒に部屋へ入った。


カズトは部屋に入ると直ぐにエルスター卿の屋敷の方を向いて、屋敷の中の様子をクレヤボヤンスで確認した。


(部屋の大きさといいベッドの豪華さといい、この部屋がエルスター卿の部屋に間違いないだろうな。)


「大佐、エルスター卿の屋敷の周辺で、おかしな気配を感じたら教えてくれ。


二人はしばらくエルスター卿の屋敷を観察していたが、やがて日が落ちた。


そして、しばらくすると、玄関がで人が慌ただしく動き始めた。


「大佐、エルスター卿が帰ってきたみたいだ。」


カズトはエルスター卿の顔を確認すると、テレパシーでエルスター卿の顔をイメージして大佐に教えた。


この頃、アニエス達も買い物を終えて、カズト達の部屋に夕食を持ってやってきた。


「カズト、エルスター卿は帰ってきてるの?」


「ああ、アニエス。さっき戻ってきたよ。」


カズトはアニエス達にもエルスター卿の顔をテレパシーで教えると、夕食を食べながら監視を続けた。


「テレパシーって便利だなぁ。エマも使えるようになりたいなぁ。」


「大丈夫でございますよ。ノラさんもエマさんもカズトさんのテレパシーを受け取っているうちに使えるようになります。」


「ほんと?ボック。」


「はい、ミヤも大佐もそうやってテレパシーが使えるようになりましたから。」


この頃エルスター卿は、簡単に夕食を済ませると、お風呂に入り、直ぐに部屋へと向かった。


(えらくあっさりした食事だったな・・・)


エルダー卿は部屋に入ると誰にも入ってこないように言って、部屋にある大きなソファーに座った。


その時だった。


「カズト様、何かおきな鳥のようなものがエルスター挙の屋敷に向かって飛んでいるようです。」


「来たか。」


カズトは屋敷の上空を見た。


(何だあれは、人の形をしているけど、背中から大きな黒い羽が生えている。)


カズトはボックにテレパシーで今見ものを見せてみた。


「サキュバスでございます。」


「サキュバス?」


みんなが声をそろえていった。


「カズト、サキュバスって何?」


「ボック、説明してあげて。」


「はい。サキュバスは淫魔や夢魔と呼ばれる悪魔の一種です。」


「えええ悪魔?」


エマが驚いて思わず叫んだ。


「はい、悪魔の一種でございます。サキュバスは、美しく若い女性の姿で人前に現れ、魅了という魔法を使い、男を虜にしてしまいます。この魔法にかかるとサキュバスの言いなりになってしまいます。」


「女はどうなの?」


「はい、アニエスさんのように女性の方は、魅了されることはありません。男性だけです。」


「じゃ、エルスター卿はこのサキュバスに操られているの?」


「その可能性が高うございます。」


「じゃ、サキュバスをやっつけてしまえばエルスター卿が元に戻るの?」


「エマ、そんな簡単じゃないんだ。サキュバスは特に強い悪魔ではないんだけど、物理攻撃が効かないんだよ。更に悪いことに、男はサキュバスと目を合わすと魅了されてしまう。」


「じゃ、どうやれば良いの?エマ達女だけで倒すの?」


「いや、方法が一つだけある。それは光魔法のホーリーライト。この光を魅了された人に当てると、魅了が解けるんだ。そして一度ホーリーライトを浴びると、サキュバスの魅了は効かなくなる。更に、サキュバスはこの光が嫌いらしくて、逃げていくらしいんだ。」


「でも、あれは光の妖精と契約したエルフしか使えないって婆様が言ってたわよ。」


「あ、ちょっと待って、サキュバスがエルスター卿の部屋に入ったよ。エルスター卿は・・・・サキュバスの足下にすがりついて何か・・・・あ、足をなめてる。」


その時、何かを感じたのか、サキュバスがカズトの方を見た。


「やばい。」


カズトは直ぐに目を閉じて魅了はされなかったが、なんとも言えない淫靡な思いがカズトの心に流れ込んでした。


「ふぅー、やばかった。」


「カズトどうしたの?」


「うん、サキュバスと目が合いそうになった。じゃ、話を戻すけど、アニエス、ソフィー様はハーフエルフだよね。そして、ホーリーライトが使える。つまり、純粋なエルフではなくても、ホーリーライトは使えるんじゃないか?」


「あ、そうね、でもそのためには光の妖精との契約が必要だわ。だけど光の妖精は簡単には見つからないわ。」


「アニエス、これを見て。」


カズトはソフィーから預かったエルフの光を見せた。


「わぁー綺麗。」


みんな綺麗に輝く宝石に見入った。


「これはエルフの光と言って、。旅に出る前に、ソフィー様が私に預けたんだ。この石から光が出ているのが分かるだろう?今、西に向かっているのは、このエルフの光から出ている光が西を指しているからなんだ。そして、この光が差す方向にはエルフの里があるとソフィー様は言ってた。」


「じゃ、私たちは最初からエルフの里を目指していたと言うことなので。ふーん。なんとなく話しが見えてきたわ。つまりこの宝石を使ってエルフの里へ入り、光の妖精を見つけて、私が妖精と契約してホーリーライトを覚える。そして、サキュバスを追っ払い、エルスター卿の魅了を解けばいいと言う事ね。」


「そのとおりだ、アニエス。でもサキュバスは予定外だけどね。まぁ、ソフィー様に来て頂くという手もあるんだけど。」


「カズト、それは駄目だわ。旅を初めたばかりなのに、もう頼るなんて絶対嫌よ。」


「だね。そう言うと思ったよ。じゃ、明日も早起きして西へ向かおう。」


「本物のエルフに会えるのですね。夢が一つ叶います。」


今まで黙って聞いていたノラ言った。


「なかなか会えないからね。じゃ、みんな、光の指し示す方へ行こうか!」

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