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異世界に行きませんか?と言う言葉に釣られた俺は異世界で最強になった!  作者: 宜候(ヨロシクソウロウ)
第1章 能力向上
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第12話 忠国の孫

「爺様、あのことはもうお話ししたのですか?」


「ん、いや、まだだ。」


「カズト殿、しばし失礼いたします。」


そう言うとアニエスは忠国の腕を引っ張って厩舎の外へ連れて行ってしまった。


(あのお話って何だろう?)


カズトが驚いて立ちすくんでいる頃、厩舎の外ではアニエスが忠国を問い詰めていた。


「爺様、お約束して頂きましたよね?」


「ん、そうだな。」


「何故お話ししてないのですか!」


「昨日の夜、カズト君に話そうとしたんだが、ボックに話しを遮られてしまって・・・」


「分かりました。ボックに聞いて参ります。しかし、約束は守って頂きます。お爺さま。」


「もちろんだ。約束は守られなければならない。」


「ところでボックは何処にいるのですか?」


「メイドの部屋に居ると思う。」


アニエスはそれを聞くと、一目散に屋敷に戻ってボックの所へ行った。


「ボック!あなたなんて事を・・・・」


「これはアニエスさん、お久しぶりでございます。こちらは、カズトさんのお仲間のミヤと大佐でございます。」


「あ、これは失礼しました。私は忠国お爺さまの孫でアニエスと申します。」


「ミヤですにゃ。」


「大佐ですワン。」


「ボック、少しお話がありますので、一緒に来て下さい。ミヤさん、大佐さん、後ほどゆっくりお話ししましょう。」


そう言うとアニエスはボックを抱えて自分の部屋へ行った。


「ボック、昨日爺様がカズト様に私のお願いをお話するとき、何故止めたのですか?」


「そのことでございますか。あの時カズトさんは忠国殿の孫を男だと思っておられたようでございましたので、お会いになるまで女性だと知らない方が面白いと思いまして・・・」


「そ、そんな理由で・・・」


「それに、ご自身でカズトさんにお願いした方が宜しいとも思いましたので、忠国様がお話になろうとしたときに、話しを中断いたしましてございます。」


「まぁ、自分でお願いするのが筋だとは思いますが・・・分かりました。このことは自分でお話しするわ。」


「それが宜しゅうございます。」


一方忠国は、アニエスが行ってしまうと、どうしたものかとしばらく思案していたが、約束なのでカズトにアニエスの願いを話すために厩舎へ戻っていった。


そして、カズトに話そうとしたとき、アニエスが息を切らして厩舎に飛び込んできた。


「爺様、待って下さい。」


「お、アニエスどうした。今からカズト君に話そうとしていたのだが。」


「爺様、カズト様には私からお話しします。」


「そうか。そうだな、それが良い。」


「では、カズト殿、後ほどお時間を下さい。」


「はい、俺で良かったら。それから、カズトで良いよ。」


「はい、カズト、ではまた後で。」


そう言うとアニエスは屋敷へと戻っていった。


「騒がしい孫で失礼したな。カズト君。あんなやつだが、仲良くしてやってくれ。」


「はい、先生。」


(それにしても、話しって何だろう?)


その後カズトは忠国と共に応接室へ行き、忠国の息子の忠行とその妻ノーラを紹介された。


そして、二人を紹介すると、忠国とソフィーは食事の用意をすると行って厨房へ行った。


「カズト君、父の訓練はどうだったかね?」


「はい、とても為になる訓練をして頂きました。おかげさまで、それなりに強くなれたのではないかと思っています。」


「私も父と一緒に旅をしたから、父の強さは良く理解しているが、カズト君も父のように強くなったんだね。」


「いえいえ、まだまだ先生ほどではありません。」


「ははは、謙遜しなくても良いよ。で、これからの予定は決まっているのかい?」


「はい、当面は冒険者をしながら各地をまわって、土と火の属性の妖精を探すつもりです。」


「良い旅になると良いね。ところで、ギルドには登録しないのかい?」


「明日にでも、この街のギルドに冒険者登録をしてくるつもりです。」


「そうか、ではアニエスを連れて行くと良いよ。ギルドのマスターもよく知っているから。」


「はい。後でお願いしてみます。」


「ノーラ、アニエスは何をやってるんだい?とても会いたがっていたカズト君が来てくれたのに。」


「なにかお部屋でぶつぶつ言っていましたが・・・ちょっと見て来ますわ。」


ノーラがアニエスの部屋に向かうと、忠行が小声でカズトに言った。


「カズト君、君に一つお願いがあるんだが。」


「何でしょうか?」


「多分後で、アニエスが君に一緒に連れていて欲しいと言うと思うんだ。そこで、一度は断って欲しいんだ。一度断られたくらいであきらめる程度の気持ちなら、連れて行ってもらっても君に迷惑をかけるだけだと思う。しかし、断られても食い下がってくるようなら、君と一緒に連れて行ってもらいたい。」


「アニエスを一緒に連れて行って欲しいと言うことですか?」


「そうだ。私が連れて行くと言ったんだが、子供の頃から転移者の話しを聞いていたので、転移者と旅をするのが夢になってしまったんだ。」


「そうですか。しかし、俺なんかで良いのですか?」


「カズト君以上に安心してアニエスを預けられるのは父くらいしかいないさ。」


(まぁ、確かにもっともなことだけど、かわいい娘を何処の馬の骨とも分からない俺なんかに預けて不安じゃないのかな。お世話になった先生の孫だし、むげに断るのも何だな。まぁ、家族が反対ではないのならいいか。)


「分かりました。」


「すまんがお願いする。」


その後もカズトは、忠行とこの国のことなどを話して過ごしたが、結局アニエスは応接室には現れなかった。


「カズト様、ご飯の準備ができたニャ。ダイニングへ来てくれって先生が言ってるニャ。」


「分かったよ。」


「あ、ミヤと大佐はメイドさん達と食べるニャ。」


「はいはい。そっちで楽しんでおいで。」


カズトと忠行がダイニングに行くと、アニエスが先に来ていた。


「アニエス。カズト君に挨拶はしたのかい?」


「先ほど厩舎でご挨拶いたしました。」


「アニエス。お願いがあるんだが。」


「何ですか?」


「明日ギルドに登録に行こうと思っているんだけど、付き合ってくれないか。」


「そんなことならお安いご用よ。」


「有り難う。」


「さぁ、今日はカズト君の歓迎会だ。カズト君、料理はソフィーとわしが用意した。沢山食べてくれ。」


「はい。有り難うございます。」


ソフィーの料理は、見た目の彩りも素晴らしく、味は昼食の時と変わらず、カズトを幸せな気持ちにさせた。


食事をしながら忠国の家族と談笑し、食事を楽しんだが、アニエスだけは食事に手をつけずにずっとうつむいていた。


(どうやら家族はみんな、アニエスが何を考えているのか知っているようだな。)


カズトがそう思ったときだった


「カズト君。旅にはいつ出発するんだい。」


忠国が突然カズトの出発の話しをした。


(アニエスにきっかけを与えようとしているんだな。)


「はい、明日はギルドに登録に行って、明後日に出発しようと思っています。」


カズトがそう答えると、アニエスが急に立ち上がった。


「カ、カズト。私を一緒に旅に連れて行って下さい。転移者と旅に出るのが私の夢でした。お願いします。」


そう言うとアニエスは忠国に向かって頭を下げた。


いきなり聞かされたら、とても驚いたであろうその言葉だったが、忠行から話を聞いていたので、カズトは冷静だった。


「アニエス。俺は初めての旅で、どんな危険な目に遭うかも知れない。もしもの事があっては先生に申し訳もないので、残念だけれども連れてはいけない。ごめんね。」


アニエスは、目にいっぱい涙をためて黙ってしまった。


そして、しばらく沈黙が続いたがああ、ノーラが諭すように「アニエス、無理を言ってはいけないわ。」と言った。


するとアニエスは顔を上げカズトをじっと見た。


「カズト、あなたは爺様の次に強いんでしょ。もしものことなんかあるわけないじゃないの!カズトが駄目って言っても絶対についていきます!」


アニエスの言葉を聞くと、カズトはちらっと忠行の方を見た。


すると、忠行はにこっと笑って、カズトに向かって頷いた。


「分かったよアニエス。じゃ、一緒に行こう。」


アニエスはカズトの言葉を聞くと、「わぁーん。」と大声で泣き出してしまった。


そして、しばらく泣くと、むさぼるように料理を食べ始めた。


(お腹すいていたんだな。)


「カズト君、こんなやつだが旅先では役に立つこともあると思う。孫を宜しく頼む。」


忠国はほっとしたようにカズトに言った。


「はい。」


(仲間も増えたし、異世界の冒険らしくなってきたのかな?女の子と話したことはあまりないけど、妹みたいに思えば良いのかな。まぁ、妹も居ないんだけど・・・)


その後も、カズトは忠国の家族と楽しい時を過ごし、夜は更けていった。


そして食事を終えると、カズトは数年ぶりの家族団らんに、幸せな気持ちを感じながら眠りについた。



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