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第1話 俺とペットが異世界に

「お目覚めですか。」


「ん?・・・・・おはようございます。」


カズトはその声に釣られて、思わず挨拶をした。


(あれ?声が聞こえるのに姿が見えなぞ。)


カズトは不審に思いながら周囲を見渡した。


そこが自分の部屋でないことはすぐに分かった。


カズトは起き上がって改めて周囲を見渡したが、人影はなかった。


その部屋は8畳ほどの広さで、部屋の隅に机と椅子が置かれていて、机の上には1冊の本が置いてあった。


部屋にはドアと窓が一つづつ有った。


カズトはとりあえず窓から外を見て思わず「え!」と言った。


窓の外に見えたのは森だった。


窓から見える景色から考えると、どうやらここは2階のようだが、それ以外はよく分からなかった。


(いったいここはどこなんだ?何で俺はこんなところにいるんだ?)


カズトがそう考えたとき、再び声が聞こえた。


「ここでございます。」


カズトが声の方に顔を向けると、机の上の本がムクッと起き上がった。


そして、本の表紙には顔がついていた。


「なんだお前は!」


カズトは思わず叫びベッドから飛び降りると、身構えた。


「この声をお忘れですか?カズトさん」


カズトは思わずハッとして、昨夜のことを思い出した。


確かに聞き覚えがあった。


「そうか、あのホームページで話していたやつだよな。そいつが何で本になっているんだ。そもそもここは何処なんだ?なんで俺はこんなところにいるんだ?」


「カズトさん落ち着いてください。カズトさんはご自身の意思でここへ来られました。昨日、私の話を聞いて異世界に行くとうアイコンをクリックなさったではないですか。お忘れですか?」


(確かにおかしなホームページを見つけて、その時にこの声が聞こえてはいたが・・・)


「いや、それは覚えているが・・・・」


昨夜確かにカズトは異世界に行きませんかというホームページを見て、異世界に行くことに同意をしたが、単なる悪戯だと思っていた。


(まいったな・・・まさかどっきりじゃないよな。でも一応確認するか。)


「もしかすると、これってテレビのドッキリか何か?」


「いいえ、違います。」


本はにやにやしながら答えた。


(とりあえず拘束もされていないし、俺を害するつもりは無さそうだが、まいったなぁ。)


本は、カズトが混乱しながら考え込んでいるのを見ると、カズトに言った。


「ようこそ!ジョードへ。私は案内役のボックです。ブックではありませんのでお間違いなく。カズトさんには、これからこの世界で最強を目指していただきます。私はそのお手伝いを致します。」


(何かおかしな話になってきたなぁ。ん~)


「困ったようなお顔をしておいでですが、もう後戻りは出来ませんので覚悟を決めてください。」


「キャンセルは出来ないのか?」


「出来ません。」


(まぁ、いいか。どうせ俺は天涯孤独の引きこもりだしな。名前が一人と書いてカズトだから、こうなったのも必然かも知れない。)


「分かったよ。どうせあっちで引きこもっていただけだしな。」


「では説明を続けさせていただきます。」


「この世界は、日本のアニメに良くある異世界とよく似ております。魔法もございますし、エルフやドワーフや獣人の他、魔物などもおります。カズトさんには、しばらくここで訓練をしていただいて、一定の強さになったら、街へと行っていただきます。」


「おいおい、訓練しないと弱いってことか?」


カズトはいかにもめんどくさそうな顔をしてボックに言った。


「弱くはございません。現状でもこの世界では、かなり強い部類に入ります。ところで、カズトさん。今のご自分がどんな状態か気がついておられますか?」


ボックはそう言うと自分の顔を鏡に変えた。


カズトは鏡をのぞき込んで、「あっ」と声を出した。


カズトがこちらに来る前は、22歳だったが、明らかに中学生くらいの顔になっていた。


「なんか若返ってるぞ。どういうことだ?」


「はい、こちらの世界へ移動するときに、15歳まで若返っていただきました。あちらの世界からこちらの世界に来ると、超能力を得ることが出来ますが、それが発揮する年齢が15歳となります。それ以上の年齢だと能力の一部が発揮できなくなることがあるので、万全を期すために15歳に戻っていただいた次第です。この世界に魔法使いは多々存在しますが、超能力者は日本から転移したほんの数人だけです。カズトさんには、これから3年ほどかけて、魔法やこの世界について学んでいただきます。」


「え、3年もやらないとだめなの?」


「すべての超能力が使えるようになるのが18歳くらいでございますので、それまでに、魔法や剣術なども覚えていただきます。まじめにやっていただければ、その頃にはこの世界で3指に入るくらいの実力になることができます。」


(せっかく異世界に来て俺より強いやつがたくさんいるのも嫌だしな。)


「わかった。で、俺はもう超能力を何か使えるのか?」


「そうですねぇ、それついては後で確認してみましょう。しかし、その前にお仲間を紹介したいと思います。二人ともこちらに来てください。」


ボックがそう言うとドアが開き、少女がいきなりカズトに飛びついてきた。


「カズト様!カズト様!ニャ」


(ニャ?聞き間違いか?)


「おいおい、お前は誰だ?俺を知っているのか?」


「カズト様、私だニャ。ミヤだニャ。全然起きないから心配してたんだニャ。」


猫人の少女はカズトにしがみつきながらポロポロと涙を流した。


「まてまて、ミヤは猫だぞ。」


カズトが不審がっているともう一人少年が、「カズト様、大佐だワン。」と言いながらカズトに近づいてきた。


「おい、ボック!どういうことだ。ミヤは猫だし、大佐は犬だぞ。」


カズトはイラついて、少し怒ったようにボックに言った。


カズトの声を聞くと、二人は驚いて、うつむいてしまった。


「この二人は、カズトさんのペットのミヤと大佐に間違いございません。この世界には猫人と犬人がおりますので、2匹とも変身してもらいました。2匹ともカズトさんをお慕いしているようだったので、おいていくのも不憫だと思い、こちらに連れてきました。」


「そういうことか、まぁ、あちらに置いておいたら、買い主もいなくなってかわいそうだからな。ボック、連れてきてくれてありがとう。しかし、それにしても驚かされたよ。」


話を聞いたカズトはほっとしたのか、ふーっとため息をついた。


「はい、と言うことで、今後はこの3人で訓練に励んでいただきます。」


「カズト様と一緒だにゃ。うれしいニャ。」


「カズト様の訓練の緒じゃなにならないよう一生懸命頑張りますワン。」


ミヤと大佐はうれしそうな顔でカズトのそばにすり寄ってきた。


「よしよし、また3人で生きていこうな。」


カズトが二人の頭を優しくなでてやると、二人ともしっぽを振って喜んだ。


(二人の仕草を見ていると、確かにミヤと大佐だな。まさか、こうして話ができるようになるとは。とりあえず、これに限っては、異世界に来て良かった。)


ミヤも大佐も顔は人間と同じだけれど、耳は当然のように猫と犬の耳で、お約束のようにしっぽが生えている。


カズトは異世界に来たのだと言うこを実感しつつ、先ほどのミヤの言葉から、一体何日寝ていたのか気になってボックに尋ねた。


「ところで、俺はどれくらい眠っていたのか?」


「1週間でございます。ミヤと大佐は3日ほどで目が覚めたのですが、若返ったことと、超能力や魔力を得たことで、身体が順応するのに少し時間がかかりました。」


「そういうものなのか。まぁ、無事順応が終わったのなら問題ないな。」


カズトはここで少し頭の中を整理しようと思った。


(ここは異世界のジョードと言うところらしい。亜人や魔物がいて。そして、私は超能力者でかなり強くなれるようだ。そして、ペットのミヤと大佐が猫人と犬人になって一緒にいる。ボックというこの本は案内人で、多分この世界の事を色々教えてくれるのだろう。今分かっていることはこれくらいか。ん?)


「おい、ボック!さっき魔物がいると言ったよな。と言うことは魔物のと戦ったりするのか?」


「そうでございますね。まぁ、襲ってこられたら最低限反撃はすることになるとは存じます。魔王などは少しやっかいですが、それでもしっかり訓練すれば対処はできるようになると存じます。」


「魔王がいるのか。もしかして俺はこの世界の勇者として召喚されたのか?」


「いえ、そういうわけではございません。訓練が終わった後は好きに生きていただいて構いません。たとえば魔王を倒してその後釜になっても宜しいですし、どこかの国を攻め滅ぼしてその国の王になっても宜しゅうございます。または、陰ながら人々を助ける正義の味方になるのも宜しゅうございますね。」


「俺は勇者としてこの世界を救う救世主とかではないんだな。ちょっと気が楽になった。しかし、なんで俺が選ばれたんだ?何か理由はあるのか?」


「そうですねぇ、敢えて理由を申し上げるとしたら、カズトさんがボッチで引きこもりで世間との付き合いがほとんど無く、あちらの世界から消えても影響が少なかった事でございましょうか。」


「そんな理由か・・・じゃ、俺でなくても良かったと言うことか。」


「いえいえ、そう言うことではございません。カズトさんの性格や、身体的な事など、色んな要素も考えた上でお呼び致しましたので、カズトさんが選ばれた事はある意味必然と申し上げることができます。」


(何かよく分からないな。まぁ、結果としてここにいるのだし、自由に生きて良いのならここの呼ばれた理由はどうでも良いか。)


「それではカズトさん、現在の超能力を確認致しましょうと言いたいところですが、その前に超能力についてご説明いたします。」


「そうだな、俺超能力はさっぱり分からないわ。ボック頼む。」


「はい、カズトさんが理解しやすいように超能力と申しましたが、超能力はこの世界では、ユニークスキルの一種になります。ただ、このスキルも持つことができるのは、異世界からこちらの来た人だけです。このことについては、何故そうなっているのかはよく分かって降りません。それでは、超能力にはいくつかの種類がございますので、代表的なものを紹介します。」


「一つ目は『テレパシー。』この能力で相手の心に話しかけたり、心を読んだり出来ます。」


「ミヤや大佐も使えると3人でこそこそ話が出来るな。」


「さようですね、この能力は相手の心をのぞき込んで嘘を見抜くことにも使えます。」


「二つ目は『プレコグニション』。予知能力のことです。これは、使おうと思って使えるわけではないようで、不意にやってくるようです。」


「三つ目は『クレヤボヤンス。』透視や千里眼のことを言います。壁などの向こうが見えたり、望遠鏡のように遠くが見える能力です。」


「透視かぁ。子供の頃あこがれたよなぁ。はははは。」


「はい、分かるような気がいたします。四つ目は『サイコメトリー』です。残留思念を読み取る能力です。追跡時に使える能力です。」


「残留思念ねぇ。なんか、使いどころがわかりにくそうだな。」


「五つ目は『テレポーテーション。』です。」


「それは分かるぞ!瞬間移動だろう。」


「その通りでございます。移動できる距離は訓練次第で伸びていきますのでしっかり訓練してください。」


「六つ目は『パイロキネシス」です。これは発火能力ですが、訓練次第で、火矢を造ったり火炎放射のように使うことが出来ます。」


「おお、火矢か。何か格好いいな。」


「七つ目は『アポート』。物体取り寄せです。取り寄せできる物の大きさや距離は、訓練次第で伸びます。」


「次で最後です。八つ目は何か分かりますか?」


「そうだな。有名な超能力がまだだな。『サイコキネス』だな。これは俺でも知ってる。」


「おしい、『サイコキネシス』です。『テレキネシス』も同じような能力です。念動力と言われる能力で、手を触れずに物を動かす能力です。この能力は最も訓練の効果が高い能力です。戦闘では最も役に立ちます。」


「結局訓練しないといけない物ばかりと言うことか。ところで、ミヤや大佐も超能力を覚えることは出来るのか?」


「テレパシーは、カズトさんからテレパシーを受け取っていると、脳が刺激を受けて使えるようになる可能性はあります。しかし、他の能力は運次第となります。その代わりと言っては何ですが、二人にもユニークスキルがあります。それとカズトさんと一緒に剣術と魔法を学んでもらいます。」


「二人のユニークスキルは何なんだ?」


「では、本人から説明してもらいましょう。」


ボックに促されて、ミヤが自分のユニークスキルを説明した。


「私のユニークスキルは、穏形と高速移動だにゃ。ボックには諜報役に向いていると言われたけどよく分からないニャ!」


(元が猫だけに、無難なスキルだな。)


「私のユニークスキルは、地獄耳と超嗅覚だワン。」


(うん、うん。犬だしな。)


(事前の偵察にはミヤ、周辺の警戒には大佐が役に立ちそうだな。)


「ところでボック。魔法や剣術を教えてくれる人はいるのか?まさか、お前が指南役か?」


「私ではございません。指南役は、この家の主様です。今、狩りに出かけておりますのが、まもなく帰ってこられる思います。」


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