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大空の出戻り  作者: 自宅防衛隊
零戦(れいせん)開発試作時代
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映えある横須賀航空隊

懐かしい!!

ワシは60年ぶりに横須賀航空隊に着任した。

戦後、この航空隊は解体され某自動車工場へと変貌。

二度と見る事も無いと思ってた滑走路に立てるとは・・。


「金ちゃん、横空だね!!」


「二郎ちゃん、初めてでしょ?」


まあ今生では初めてだが、待機所で武藤とザル囲碁を朝から夜まで対戦した基地だ。

ワシが目を負傷しなければ武藤をあの元田航空隊に渡さずに済んだだろうに。

如何に有能なパイロットでも足かせを懸けられたら食われるのも道理よ。


本田やYも初めての横空にキョロキョロしてる。

空を見ると黄色い新鋭機。

恐らく12試艦戦だろう。


門兵にワシは申告。


「S井中尉、以下3名。横須賀航空隊戦闘機部隊勤務を命じられ只今着任しました!」


ワシの申告と同時に武藤等3名は敬礼。

慌てて衛兵伍長が飛び出して来て答礼。


部隊から自動車の迎えが来て隊に案内される。


我々は試作機のテストパイロットとして着任。

特にワシは具申書の多さから期待されてるみたいである。


先任士官である下川千兵大尉に着任の申告をし、我等は横空のテスパイとなった。

早速小隊での宿舎を申告し認められる。

我が小隊は寝泊まりも同じなのだ!!


「S井大尉、(着任時に昇任した。)昇任おめでとうございます。」


「金ちゃん、宿舎では友人として接してくれよ。でもありがとうな。」


彼もワシの昇任を我が事の様に喜んでくれる。

下士官兵の昇任は遅い。

逆に士官の昇任は鬼みたいに早い。

何とかしてあげたいが、大尉クラスでは下士官の待遇改善が限界だ。


翌日より早速滑走路に出て試作機の新鋭機の説明を受ける。


まだ二枚ペラのスピンナーも無い12試艦戦。


懐かしい!!


丁度、三菱の堀越三郎技師が来てて詳しい説明を受ける。


「皆さま、三菱の堀越三郎と申します。この新鋭機はまず航続性能と速度、

そして運動性を上げるのを前提で制作しました。

図体が大きく感じるでしょうが、性能を上げるには機体の巨体化は避けられません。

軍部とも折衝しましたが、速度も航続性もと言われれば巨体化は避ける事が出来ませんでした。」


「堀越技師、前線から帰国したS井大尉です。この新鋭機はどの程度の速度を見込んでおりますか?」


「およそ270ノット(約500km)を見込んでおります。」


「大陸で対戦したイ16でも同じ程度は出てますが、それで間に合いますか?」


「・・搭載出来る発動機が限られております。あまりにも巨体になり過ぎると採用不可と言われ、

瑞星エンジンにした程です。」


海軍上層部のバカたれめが!!

前線で闘う兵の苦労を考えずに無理強いしやがって。


「堀越技師、私は前線で敵と対峙して来ました。

敵はますます高速化するでしょう。欧米では既に時速600kmをオーバーする新鋭機も出ると聞きます。

我が新鋭機が過酷な性能を求められるのは当然ですが、今から270ノット程度では・・。」


「S井大尉、貴重なご意見感謝します。国内の発動機では1000馬力辺りが上限なのです。」


彼を責めても仕方ないと思い、ワシは12試に試乗。

記憶通りのコックピットだ。

背後の機内フレームを見ると穴だらけ・・。

重量を削るためだろう。

艤装を見るとほぼ記憶通りに出来てる。

スロットルレバーに装備された発射レバー。

機銃切り替え装置。


ウム、艤装は問題無いな。

だがフレームの穴だらけは将来のパワーアップに支障でそうだ。

下士官時代ならともかく、今は士官。

彼に教えよう。


「技師、良い出来ですが、フレームの穴は何でしょう?」


「・・アレは重量軽減の苦肉の策です。」


まあそうだろうね。


「技師、将来この機がパワーアップや搭載量を求められた時にアレは不味いのでは?

1gでも軽くしたいのは分かりますが、対峙する我々は敵の新鋭機と戦わねばならないのです。

第一に速度と強度ですよ。そして多量の銃弾。

今、この機に搭載されてるのは7,7粍と20粍ですね?

出来れば13粍で統一して欲しいです。

前線では弾幕で敵を射止めてましたが、20粍では僅か60発程度では?」


「S井大尉、一目で見抜かれるとは・・。さすが前線帰りですね。

仰る通り、全てを叶えるために重量を削りました。ですが、海軍も求める性能を出すには・・。」


「技師、自分は96で敵と対峙しました。充分な強度があれば敵にギリギリまで接近して射撃出来ます。

ですがヤワな機では無理な機動が出来ません。

完璧な強度で無くても構わないですが、無理な機動で分解する機では困るのです。

我等も命を懸けて闘いますので、何とか充分な強度を持つ機にして貰えませんか?」


「・・分かりました。今日のテストを見て強度計算を考えて見ます。」


ワシは早速12試に試乗。

高度5000mまで駆け上がり急降下。


下川大尉が殉職した事件は記憶してるので時速270ノットで突っ込む。

予想通り翼に皺が依ってる。

危険と判断し無電で着陸を申告。

すぐに了解を得て着陸・・したが、引き込み脚の左側が完全にロックされておらず、

指示灯も黄色のまま。

どうやら皺で主翼が捩れたみたいだ。


負傷後、大村で教員してた時を思い出す。

なぁに、燃料はまだまだある。

慌てずに基地に連絡し故障を通報。


無理な機動はかけられないので、滑走路を舐める様に飛行し、左脚を接地させ少し滑らせる。


ウム、一発でロック完了!!


上昇し両脚のロックを確認し地上に故障完治、着陸ス!と通信。


地上部隊も大喜びだ。


無事着地し技師に翼の皺を説明。

彼も早速試作機を持ち帰り強度アップして来ますと約束。

ワシも上層部に進言するので持てる限りのパワーのあるエンジンを搭載して欲しいと頼む。

機銃は20粍の代わりに13粍を!とね。


技師は必ず!!と確約し名古屋に帰って行った。


コレでワシの望む零戦は作られるだろう。



坂井氏の体験を参考に書いております。

彼も銃弾搭載量が少ない20粍は酷評でした。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] その13mmがこの頃海軍にあったっけ?九三式そのまま積むわけにもいかんし
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