12空
12空の朝は早い。
総員起こし前には整備兵は野戦飛行場で整備や試運転。
黎明の戦地は遠方で轟音が轟く。
食堂の兵も搭乗員の食事を準備。
飛行場は前線でも一大集落なのだ!!
その代表が飛行兵。
我等の活躍を支えるのが飛行場勤務の兵士全員だ。
蕪湖前進基地の朝日が昇り、我等も起床し食堂で食事。
司令に進言し、パイロットだけでも兵や下士官と一緒に食事をするべきと進言したのだ。
おかげで可愛い部下と一緒に食事。
彼等も最初は士官や隊長と一緒に食事なんて・・と遠慮してたが、慣れれば彼等も普通に喋る。
部下を殴る士官は降格させよ!と進言したので馴れ馴れしいと怒る士官も皆無。
ただし戦闘では非情・・。
戦死した場合は見捨てよ!と厳命。
撃墜された場合は墜落を確認したら見捨てよ!と厳命。
空に生きる我等は滞空時間の制限があり、留まる事は自分の命を捨てるに等しいのだ。
隊長クラスでも!
前世での経験、そして敵国アメリカとの交流で戦闘の厳しさは良く分かってる。
部下の安否を心配して戦場に留まり襲撃を受け消えた隊長の話も多く聞く。
自分の初陣を前に司令に従来の3機編隊でなく、4機編隊。
一番機と三番、二番と四番のペアは戦闘時でも絶対に離れない様にすれば、
戦闘時に単機になる心配は消える。
戦闘機はチームワークが大切だ。
戦果より、まずは生き残る事。
0対0の引き分けこそが最良の戦闘だ!
100対0は理想だが、無理して被害が増えたら部隊の壊滅に繋がる。
ケンカは一瞬の判断で勝敗を決するのだ。
下士官兵だと進言も中々聞き入れて貰えないが、中尉クラスからなら司令も聞いてくれる。
部下のためにも思い出した事や戦闘で気づく点をガンガン進言しよう。
部下にも気づいたらワシに進言しろ!必ず上聞してやる!と言い、彼等もうなずいてくれた。
今日の目標は南昌方面。
敵はイ15か16だろう。
アブみたいな戦闘機だったのを思い出す。
出撃前にペアを呼び、戦闘時でもペアは絶対に離れてはならぬ。
ペアを崩すヤツは戦闘から外すと厳命。
厳しいだろうが、まずは生き残る術を仕込むべき。
武藤もペアのY兵に厳命してる。
4機編隊を地上で組み、編隊で離陸。
高度3000mで基地上空で大編隊を編成し進撃開始。
ウム、戦場の空は心地よい。
ワシは離陸した瞬間から戦闘諸元を整え、機銃を装填。
見張りを開始してた。
武藤も同じく。。
ペアの連中も武藤やワシに怒られ見張りを始めてた。
余談だが、出撃前に操縦席の掃除や風防ガラスの磨きを自分で必ず行え!と厳命しておいた。
敵は何処から降るのか分からぬ。
風防の汚れの陰に潜む可能性も必ずあるのだ。
整備兵任せにせず、自分でも必ず確認せよ!と煩く厳命。
煩い士官だと思うだろうが、生きて帰れればこの煩さも有り難く思うハズだ。
南昌に進撃する我等96式艦戦の大編隊は見張りをしながら前進。
やがて戦場に達すると大型陸攻から放たれる爆弾が飛行場を包む。
見事なり!!全弾飛行場に直撃!!
・・・・そろそろだな?
武藤も気づいたらしく、太陽の方向を見るとアブみたいな敵戦闘機が舞い降りて来た。
まずは爆撃機を守らぬと!!
「こちらS井、攻撃隊を援護せよ!!」
無電で全機に命令を下し(隊長が言う前だったが、独断専行だと褒められた。)、
編隊を爆撃機上空に遷移。
そして遊撃部隊が敵に反撃。
当てが外れた敵はそのまま遊撃部隊と戦闘を開始。
曳光弾が飛び、煙を吹く敵。
ギリギリの旋回で翼端から引く飛行機雲。
ウム、これぞ戦闘だ!!
ワシは陸攻を護衛しつつ一瞬も油断せぬ様に戦場を離脱させた。
遊撃部隊と護衛部隊に分けてたので我等は本日は護衛に徹し、帰還。
初陣は残念だが戦果0!!
だがこれぞ戦場慣れの第一歩なのだ。
武藤も褒めてくれた。
明日は遊撃部隊。
かならず仕留めるぞ!!
戦闘では生き残るのが大切です。
戦果を求め過ぎて戦死する例も多かったのです。