ワレ壊滅セリ・・こちらキンメル
ワシはキンメル。
栄えある太平洋艦隊司令長官だ!
敵の根拠地トラックを奇襲し殲滅。
開戦前だったのだが、まあ構わぬ。
どうせイエローモンキーよ。
ワシは次は敵の総本山、ヨコスカを攻めるべくハワイを出撃。
すると・・眼前に敵の偵察機が見えて来た。
即座に空母から戦闘機を出撃させ追い払うが、中々アシの速い機らしく、
ハエの如く艦隊近くをブンブン飛び回り、やがて報告が終わったのか、西に消えて行く。
「こちらキンメル。全艦隊に告ぐ。敵攻撃の危険アリ。ただちに出撃準備セヨ。
艦隊は砲弾を実弾に装填せよ!!」
ワシの指令で艦隊は戦闘準備に大わらわだ。
側近はアリゾナ号のブリッジで双眼鏡を手に蒼空を見張る。
ワシも無電を聞きながら敵の情勢を探ると・・。
敵艦隊を発見との無電が入り、ただちに航空部隊が出撃。
ウム、見事なり!!
空母から飛び立つ我がヤングボーイズは次々に蒼空を目指し敵に向けて進撃。
きっと敵の銀蝿を叩き潰してくれる。
そう信じて彼等を見送ったのだが・・。
「助けてくれ~~!殺される!!ママァ~~!!」
「こちらサッチ、敵は強い。」
等々悲鳴が無電から轟くばかり・・。
10分程度すると無電は静かに・・。
「提督、どうやら・・。」
「ウム、敵は強かったみたいだな?我がボーイズは・・。」
「ハ!何度も通信を試みましたが返信ナシ。壊滅した模様です。」
「空母に残機は??」
「僅かに数機の戦闘機のみです。」
フム、不味いぞ。空母は撤退させるべき。
「敵は強い。空母は後退せよ!!」
空母艦隊の旗艦ハルゼーからも残機を艦隊上空護衛に上げると撤退開始。
残機はガスが尽きるまで護衛せよと非情の命令だ。
空母は速度を上げ我が艦隊より離れて行くが・・。
何と敵攻撃隊が我が戦艦を無視し空母艦隊へと襲撃を懸けていた。
「戦闘機部隊、我等には構わず敵攻撃隊を襲え!!」
彼等はラジャと告げ襲撃をかけたが、ジャップの戦闘機にモミクチャにされ壊滅。
強すぎだろ???
我がF4Fは数分で殲滅され一機も居なくなった。
そして攻撃隊は護衛のない空母へと襲撃をかけ・・。
全て壊滅。
ハルゼーも戦死した模様。
ワシ等も覚悟し敵艦隊と対峙しよう。
「艦隊全艦に告ぐ。敵は強い。空母艦隊は壊滅セリ。だが後退は許さぬ。
敵戦艦や空母を殲滅セヨ!!」
ワシの命令で艦隊は敵攻撃隊の去った方向へと進撃開始。
弾庫では砲撃準備に忙しいだろう。
やがて視認距離50000mに来た時、敵戦艦が出現!!
アレは??ナガト、ムツか??
いや、見た事の無い戦艦だ・・。噂の新鋭艦か??
すると・・見慣れた艦影が・・。識別表を見るとまさしくナガト型。
だがあの戦艦と比較すると・・ナガトが巡洋艦に見える。
「閣下、あの新鋭艦は??」
「ウム、ナガトを凌駕する巨艦と見た5~6万屯はあるかも??」
まだ砲戦距離には遠いので安心してたら、敵の新鋭艦は砲撃を開始したのだ。
バカな!!まだ40000mはあるぞ??
ワシの意識は次の瞬間、永劫に途絶えた。
何故ならば敵の巨弾に我が身を砕かれ、搭乗艦も轟沈したのだから・・。
それからは大混乱だったと思う。
ワシは最早黄泉に旅立ちどうする事も出来ず、蒼空から我が艦隊の壊滅を眺めるのみ。
ハズバンド・エドワード・キンメルは本海戦に於いて壮烈なる戦死!
58歳であった。
非業の長官、キンメル戦死です。
戦場に散るなら彼も満足でしょう。




