高野五十六と歓談ス!
時代は変わらず、アメリカとの情勢はやはり悪化。
ハルノートを叩きつけられた我が大日本帝國は欧米相手に開戦を決意。
開戦前に我々も海軍省に呼ばれ作戦の意見を聞かれた。
「戦闘機部隊隊長、S井大尉です。」
「連合艦隊司令の高野五十六だ、キミを呼んだのは他でも無い。
欧米を相手に開戦をするかどうか?の意見を聞きたい。」
「長官・・言っても良いのでしょうか?」
「ウム、構わぬ。」
「欧米、特にアメリカを相手に開戦は絶対に反対です。
まずアメリカは国内で膨大な資源を持つ国です。短期で勝負を決すると言われても、
相手は負けても降伏はしないでしょう。」
「・・・。」
「敵を怒らせる奇襲だけは悪手です。
長官、真珠湾を奇襲したら勝てるとか思ってませんか?
本官は反対です。
敵の怒りを買う行為はアメリカの敵愾心を燃やすだけです。」
「ほほぅ・・。何故そう思う?」
「長官はアメリカ駐在の経験がおありですよね?視察されてどう思いました?」
「広大な・・それこそ日本全土がいくつも入る巨大な国だった。。」
「でしょう?敵は強大です。ハンパな覚悟で相手を怒らせたら負けるのは日本です。
聞く所に寄ると巨大なB17と言う爆撃機も就役してるそうです。
我が新鋭機でも苦戦するでしょう。」
「ほほう。確か新鋭機零戦ではキミの意見でかなり変わったと聞くが、それでも難しいか?」
「零戦は進撃戦闘機です。迎撃戦闘機を陸軍と共同で開発し共同で配備すべきです。」
「陸軍と??」
「ハイ、国内の飛行学校や予科練を出たばかりのヒヨコを鍛える名目でも使えます。
とにかく戦時でも国内に戦闘機を常時待機させるべきです。敵は大陸や空母で攻める可能性もあるのです。」
「キミの考えでは敵と堂々と渡り合え。奇襲は危険と言うのだな?」
「ハイ。奇襲しなくても我が戦闘隊で敵を制圧し艦隊で敵を殲滅すれば深海に沈める事が出来ます。
我が攻撃機は今なら世界一です。
真珠湾で沈めても引き上げるのに苦労はありません!!」
「まるで見て来たみたいに言うね?」
「長官、オフレコにして頂けるなら・・。」
「何か秘密が?まあ良いだろう、ココだけで聞いて他には話さぬ。」
「ありがとうございます。実は私は・・・。」
ワシは長官に前世の出来事を全て話した。
真珠湾の結末。
ミッドウエーの無様な敗北。
そして原爆投下やB29の国土蹂躙。
さすがの長官も絶句してた。
「するとキミは前世では?」
「下士官、並びに特務士官まで進級し終戦でした。」
「・・なるほど。つまりキミは前世での記憶があるから?」
「ハイ。下士官では上層部に意見も言えません。ですので必死で勉強し、
海軍に入りました。」
「フム・・。で、ワシは昭和18年に視察中に暗号を解読され襲撃を受け戦死か・・」
「長官、指揮官先頭は時代遅れです。我々現場にお任せし、海軍省などで指揮を取って下さい。
前線は何が起きても不思議ではありません。長官が前線に出て士気旺盛にはなっても、
戦闘の結果は変わらないのです。」
かなり厳しい事を言うがワシは既に実年齢90を超す爺だ!
50そこそこの小僧に胆力負けする訳もなかろう。
彼もワシの気迫に負けたのか、前線には出ないと約束してくれた。
そしてハルノートに対しては・・。
「フム・・。ではハルノートには?」
「バカ正直に回答せず、のらりくらりと交すべきです。
ヤツラが怒って開戦を口に出すまでは。」
「面白い!!さすが零戦の開発をひっくり返した士官よ。
良かろう。
外務省には飲めぬ話ばかりだからと条件を変えろと言い続けさせよう!!」
ヨッシャ~!
コレで無謀な開戦は避けられた。
S井は真珠湾を避ける事で、リメンバーパールハーバーを消したかったのである。
あの言い訳が原爆投下にも繋がるのだから。
開戦を遅らせる間に戦闘機開発や艦隊整備に充て、輸入をガンガン進めるべき!
陸軍の好戦派も海軍が同調せぬ事には南方に進撃も叶わぬと見て、満州で大人しくしてた。
ワシ等航空隊は電波探知機の開発を促進し、まずは基地や国内に設置。
歴史より三年は早く半径500kmの電波探知が可能となる。
小型化したら艦や爆撃機にも搭載可能となるだろう。
開戦が伸びたのは日本に取っては幸いとなるのだ!!
歴史より開戦が遅れます。
山本五十六は養子に行かず高野姓のままです。




