第80話 豊作でありますように
ヴィーヴルの『芽が出た』騒動の翌日、ヴィーヴルは今日も家へとやって来た。
「沢山、芽が出ていると良いのじゃ」
「あぁ、そうだな」
昨日、ヴィーヴルは、あれからずっと芽を眺めていた。
余程、嬉しかったのだろう。
ドラゴンが農作業をするという話は聞いたことが無いから、多分、初めての事だったのだろうか。
自分の手で育てることが、楽しくなっているのかもしれない。
(本人が、楽しめているのなら良いか)
畑へ来てみると、芽が至る所から出ていた。
雑草の芽もちらほらみられるが、作物の芽もきちんと出ていた。
「ノア、沢山芽が出ているのじゃ」
「あぁ、昨日と同じ畑とは思えないな」
『うわぁ、たくさんめがでてる~』
『あそこは、ぼくがまいたところだ~』
『ぼくは、あそこだったとおもう……』
『わたしはあそこだったかな? いちばんおおく、めがでてる~』
『いや、そこなぼくだよ』
『ちがうよ~、ぼくだよ~』
『本当に芽が出てきましたね』
『ノア様、良かったですね』
一緒に来たアン達も驚いていた。
「ここまできて、やっと第一段階クリアだよ。
まだまだ、収穫するまでにしなければいけないことは、沢山あるから頑張ろうな」
『はい』
『頑張りましょう』
「まずは、雑草を抜いてしまおうか。
このままだと、芽の成長に邪魔になるからな」
一直線に種を蒔いたので、雑草との区別が楽にできるところは、ヴィーヴルやアン達に任せた。
芽の近くに生えた雑草は、見間違うといけないので俺が抜いていった。
多分、今日一日作業をしていれば、見分けられるようになると思う。
雑草を抜いていくときに、土が乾いてきていたので、水撒きをしておこう。
そう言えば、ほとんど雨が降っていなかったからなぁ。
「ヴィーヴル、前の種蒔きの時に雨を降らせたよな? あれを教えて欲しいんだが、良いだろうか?」
「此処に水を撒くのか? 妾がやっても良いのじゃ」
「此処に撒くのはその通りだが、俺も習っておきたいんだ。
畑が増えたときに、ヴィーヴルに何時までも頼む訳にはいかないだろ?」
「それならば、教えるのじゃ」
やり方は、それほど難しくはなかった。
濃度を薄くした魔力を畑の上へと浮かばせて、水魔法を発動するだけだった。
以前の俺ならば、どうすれば良いかの見当もつかなかっただろう。
漏斗の入口と出口を逆に考えれば、魔力の濃度を薄くできるし、魔力の紐を練習していることで、魔力を目的の位置に置くこともできるようになった。
最初のうちは魔力が濃すぎて、大雨を降らしていたが、2~3回の練習で霧雨程度にまでできるようになった。
「もう、出来るようになったのじゃ」
「今、やっていることが、そのまま応用出来たからな」
「漏斗の考え方が良かったのじゃ」
「あぁ、あれで魔力の濃度をある程度は、自由に調整出来るようになったからな」
「では、妾が水を撒くのじゃ」
「良い、と言うまでお願いするよ」




