第8話 家の掃除をしよう(1)
家の中は結構埃っぽい。
箒で掃くだけでは、まだ埃っぽさが残るかもしれない。
かと言って、拭き掃除までするのは面倒だし時間が掛かる。
(何かいい手はないか?)
ふと、横をみると井戸がある。
(あぁ、井戸の確認もしておかないとな)
井戸へと近づいて、覆っている蓋を横へとずらした。
暗くて水面は見えないが、湿っぽい感じがしたので水は枯れていないようだ。
近くにあった石を拾って、井戸の中へと落としてみる。
2秒くらいして、水音がした。
(うん、水はあるな。
しばらく使っていないから、そのまま飲めるかどうか……)
逆さに置いてあった桶を落として水を汲み上げた。
少しだけ茶色くなった水だった。
使っていなかったので、苔とかが生えてしまったのだろう。
(飲めるようにするためには、一度、掃除をしないと駄目だろうな)
井戸の掃除を1人ですると、何かの拍子で登れなくなった時に閉じ込められてしまう可能性がある。
諦めておいた方が良さそうだ。
(う~ん、井戸があるから気にしていなかったけど、飲み水を確保しないといけないな)
辺りを見回しても、水場は井戸以外には見当たらない。
来る途中にも川はなかったし、前に家に来るときにも見当たらなかったから、川があるとすれば、家の裏手方向か前に来た時と反対方向かだ。
道の裏手側にけもの道があるから、何かあるかもしれない。
何も無かったとしても、一度は見ておいた方が良いだろう。
結果から言うと、川が流れていた。
丸太を渡しただけではあるが、橋らしきものもあった。
橋を渡ったその先は広場のようになっていたのだが、薬草が群生していた。
薬草の根を植え替えて、薬草畑を作ればギルドへの納品で安定収入になる。
そう考えて、薬草の根を持ってきた奴もいたらしいが、今は誰もそんなことをしない。
薬草の根を植え替えると、そのまま枯れてしまうらしいのだ。
土が合わないのか、栄養が足りないのか、色々調べてみたのだがどうも分からないらしい。
ただ、間違いなく薬草はその場でしか成長しないとのことだった。
群生地があるってことは、多少ながらも安定収入があるってことになった。
また一歩、のんびり生活に近づいたような気がした。
薬草は葉を摘んでも、ひと月もすればまた新しい葉が生えてくる。
水を探しに来たつもりが、思わぬ収入源を発見してしまった。
けもの道があったってことは、前の住人も利用していたんだろう。
(これで金貨27枚は儲けものだったな)
とりあえず、一旦、家へと帰り桶を持ってきて水を汲んで帰った。