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第79話 芽が出てきた

 昨日、畑に種を蒔いた。

 今日も朝から、ヴィーヴルは家にやって来た。


「ノアよ、まだ芽は出ていなかったのじゃ」


「昨日撒いたばかりだから、まだ出ないよ。

 そうだな……3日後辺りに出るかも知れないぞ」


「そうなのか? では、今日は狩りに行ってくるのじゃ」


「あぁ、気をつけてな」


**********


 次の日も、やって来た。


「ノアよ、まだ芽は出ていなかったのじゃ」


「昨日言ったろ、2日後辺りには出るかも知れないって」


「気の早いのが出ていても、可笑しくは無いのじゃ」


 ヴィーヴルが、芽が出るのを一番楽しみにしているのかも知れないな。


**********


「ノア、ノア、芽が出ていたのじゃ」


「本当か?」


「早く来るのじゃ」


「分かったから、手を引っ張るなって。

 手が抜けるかと思ったぞ」


「良いから、早く来るのじゃ」


 俺は、ヴィーヴルに思いっきり手を引っ張られて、畑へとやって来た。

 手を引っ張るにしても、もう少し加減して欲しい。

 アン達も、後から遅れて畑へとやって来た。


「ほら、ここじゃ。

 此処に芽が出ているのじゃ」


 ヴィーヴルは嬉しそうに、新芽を指さしていた。

 此処まで喜んでいる所に水を差すようで言いにくくなったが、言わない方がもっと悪い気がした。


「ヴィーヴル、残念だけどこれは雑草だよ。

 此処にはキャベツの種を蒔いたから、畝の真ん中に種を蒔いたよな? これは真ん中には出ていないだろ?」


 そう言いながら、雑草を引き抜いた。


「そうか……、残念なのじゃ……」


 ヴィーヴルは酷く落ち込んでいる。

 あれだけ喜んでいてからの雑草判定だから、無理もない。


「焦る必要はないさ。

 その内、きっと芽を出すから」


 ヴィーヴルは落ち込んだまま、彷徨うように歩きながら他の畝を見ていた。


「ノア、これも違うかの?」


 力なくしゃがみこんでいる、ヴィーヴルの隣へ行き、しゃがんで指さしている物を見た。


「ヴィーヴル、これは多分、ラディッシュの芽だよ。

 1つしか出ていないってことは、気の早いやつがいたようだな」


「本当じゃな? 本当に芽なのじゃな? 良かったのじゃ」


 ヴィーヴルが喜んでいる。

 普通、ある程度纏まって芽を出すはずなのだが、何故かぽつんと1つだけ芽を出していた。

 ヴィーヴルの祈りでも通じたのだろうか?


「明日になれば、もっと沢山、芽が出ていると思うぞ。

 本来なら、もっと纏まって出るはずだからな」


「そうなのか? 明日が楽しみなのじゃ」


 やったことの成果が、実際に目に見えているのだから、浮かれていても無理もない事だろう。

 今日のところは、ヴィーヴルの気の済むようにさせておこう。


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