第79話 芽が出てきた
昨日、畑に種を蒔いた。
今日も朝から、ヴィーヴルは家にやって来た。
「ノアよ、まだ芽は出ていなかったのじゃ」
「昨日撒いたばかりだから、まだ出ないよ。
そうだな……3日後辺りに出るかも知れないぞ」
「そうなのか? では、今日は狩りに行ってくるのじゃ」
「あぁ、気をつけてな」
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次の日も、やって来た。
「ノアよ、まだ芽は出ていなかったのじゃ」
「昨日言ったろ、2日後辺りには出るかも知れないって」
「気の早いのが出ていても、可笑しくは無いのじゃ」
ヴィーヴルが、芽が出るのを一番楽しみにしているのかも知れないな。
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「ノア、ノア、芽が出ていたのじゃ」
「本当か?」
「早く来るのじゃ」
「分かったから、手を引っ張るなって。
手が抜けるかと思ったぞ」
「良いから、早く来るのじゃ」
俺は、ヴィーヴルに思いっきり手を引っ張られて、畑へとやって来た。
手を引っ張るにしても、もう少し加減して欲しい。
アン達も、後から遅れて畑へとやって来た。
「ほら、ここじゃ。
此処に芽が出ているのじゃ」
ヴィーヴルは嬉しそうに、新芽を指さしていた。
此処まで喜んでいる所に水を差すようで言いにくくなったが、言わない方がもっと悪い気がした。
「ヴィーヴル、残念だけどこれは雑草だよ。
此処にはキャベツの種を蒔いたから、畝の真ん中に種を蒔いたよな? これは真ん中には出ていないだろ?」
そう言いながら、雑草を引き抜いた。
「そうか……、残念なのじゃ……」
ヴィーヴルは酷く落ち込んでいる。
あれだけ喜んでいてからの雑草判定だから、無理もない。
「焦る必要はないさ。
その内、きっと芽を出すから」
ヴィーヴルは落ち込んだまま、彷徨うように歩きながら他の畝を見ていた。
「ノア、これも違うかの?」
力なくしゃがみこんでいる、ヴィーヴルの隣へ行き、しゃがんで指さしている物を見た。
「ヴィーヴル、これは多分、ラディッシュの芽だよ。
1つしか出ていないってことは、気の早いやつがいたようだな」
「本当じゃな? 本当に芽なのじゃな? 良かったのじゃ」
ヴィーヴルが喜んでいる。
普通、ある程度纏まって芽を出すはずなのだが、何故かぽつんと1つだけ芽を出していた。
ヴィーヴルの祈りでも通じたのだろうか?
「明日になれば、もっと沢山、芽が出ていると思うぞ。
本来なら、もっと纏まって出るはずだからな」
「そうなのか? 明日が楽しみなのじゃ」
やったことの成果が、実際に目に見えているのだから、浮かれていても無理もない事だろう。
今日のところは、ヴィーヴルの気の済むようにさせておこう。




