第74話 畑を整備しよう
畑の方へ来た。
アンとドゥは鍬を使って、土をひっくり返している。
昨日、ちょっとやり方を教えただけなのに、もう使いこなしているなんて凄いな。
トロワ、キャトル、サンクは交代しながら、鎌を使って畑の外の草を刈っていた。
あれは、草を刈る作業をしているというよりは、鎌を使って遊んでいるのだろうな。
怪我をしていないようなので、良しとする。
ムッティが、トロワ、キャトル、サンクのそばで座っていた。
動物や魔物の警戒をしているのだろう。
ファーティと子犬2頭が居ないようだけど、どうしたのだろうか?
「ムッティ、ファーティと子供達はどうした?」
『狩りの仕方を教えに、森へと入りました』
「そうか、子供達にも狩りの仕方を教えないと、独り立ち出来ないしな」
『左様でございます』
「狩りの仕方を教えるのもいいけど、あんまり狩りすぎないように伝えておいてくれ。
ファーティが本気を出したら、狩り尽くさないとも限らないからな」
『承知いたしました』
「トロワ、キャトル、サンク。
鎌で怪我をしないように、気を付けるんだぞ」
『『『は~い』』』
俺は、畑で作業しているアンとドゥの方へ近づいて行った。
「アン、ドゥ、ご苦労様。
鍬はもう使い慣れたか?」
『そうですね、大丈夫だと思います』
『手でやるより早くて楽になりました』
「それは良かった。
……畑もこんな感じだと、もう、種を蒔けるかも知れないな」
『種を蒔くのですか?』
『種は捨てるものではないのですか?』
「種をきちんと植えたほうが、管理がしやすいんだよ。
種蒔きは誰でもできるから、皆でやろうか」
トロワ達でもできるし、鎌で遊んでいると怪我をするかも知れないから、種蒔きをやらせた方が良いだろう。
「畑に通路を作っておいた方が作業しやすくなるから、|畝≪うね≫を作ろうか。
今から作ってみるから、見ていてくれ。
アン、鍬を貸してくれないか?」
アンから鍬を受け取る。
畝の幅をどれくらいにしようか? と思ったが、鍬の幅にしておけばアンやドゥも作業しやすいだろうと思い、鍬の長さにする。
畑の端から、鍬の長さ分、中へ入ったところへ鍬を入れて、土を横に盛り上げる。
そして、後ろへと後退しながら、また鍬を入れて土を盛り上げる。
これを6回ほど繰り返して、土を盛って行った。
その後、鍬の先の部分で、畝の横の部分を押して固めた。
「こうして、畑に高い所と低い所を作って、高い所を畝って言うんだ。
畝の横の部分は、こうやって、鍬の先の部分で押し固めるんだ」
反対側を押し固めながら言った。
「そして、土を盛ったところを平らに均すと、畝の完成だ」
うん、きれいな畝の完成だ。
「畝の幅は、この鍬の長さで良いから、時々、こうやって大丈夫か確認しながらやってくれ。
種はこの畝の上に蒔いて、低い所は俺達が歩くところだ。
こうすると、植物を踏んでしまう心配がなくなるから良いだろ? この畝を作らなくても植物は育つのだけど、俺の育った村ではこうして畝を作っていたから、俺もこうしていこうと思うんだ」
アンに鍬を返した。
「やってみて、分からない所があったら聞いてくれ」
『『分かりました』』
アンとドゥは、早速作業を開始した。
アンは俺の続きを、ドゥは横に新しい畝を作って行くようだ。
やはり、物覚えは良いようで、何の問題もなく作業を続けている。
『こんな感じでしょうか?』
『これでよろしいでしょうか?』
質問があってもこんな感じで、作業の内容ではなく出来栄えに対するものだった。
「大丈夫だ……というより、すごく上手に出来ているよ」
ここはもう、任せても大丈夫だろう。
俺も作業を始めようと思い、袋からスコップを取り出した。
「俺は、あっちの端から畝を作っていくから、アンとドゥはこのまま畝を作ってくれ」
『『分かりました』』
ゴブリン達を労働力として利用できれば、ゴブリン達の生活も安定するから、人間を襲ったり、畑を荒らしたりしなくなるのかも知れない。
体格、体力差があるから力仕事は難しいかもしれないが、そこは、出来ることをやって貰えば良いだろう。
コミュニケーションが取れると言う事は、本当に大切なことなんだと、改めて思う。
 




