第73話 瞬間移動を学ぼう(8)
「ようやく、本題に入れそうなのじゃ。
まぁ、この短時間でここまで来られるとは、思っておらんかったのじゃ」
「きっと、先生が良いからだよ。
この前の魔法を教わった時も、分かりやすかったしな」
「そういう事にしておくのじゃ。
さて、話が逸れてしまったのじゃ。
ノアよ、魔力の紐を目印に繋げてみるのじゃ」
「分かった。
サーチ……はしなくても、さっき、何処にあるか見つけたから、魔力の紐」
魔力の紐が伸びていく。
のだが、途中で魔力が霧散してしまい、消えてしまった。
「え? どうなったんだ?」
「紐が繋がる前に、魔力が霧散して消えてしまったんじゃ。
魔力の紐は、時間が経つと自然と消えてしまうんじゃ。
紐が消えてしまう前に目印へと繋いで、その場所を自分の元へと持ってこないといけないのじゃ」
「もっと早く魔力の紐を伸ばすって言ったって、今の俺には無理だよ……って、これも練習すれば良いってことか」
「そういう事じゃ」
「もっと、のんびりと暮らせると思っていたんだけどな」
「今は、その為に頑張っていると思う事じゃ」
そう言って、ヴィーヴルは微笑んでいた。
「何時かは楽になると信じて、頑張るとするか」
「ノアが魔力の紐を作る時は、さっきも言った通り、魔力切れには注意するのじゃ。
魔力が無くなってきたなと思ったら、すぐに休むことじゃ。
ノアは……そうじゃな、10分も休めば魔力は満たされると思うのじゃ」
「農作業とかをやりながらでも良いか?」
「精神への負担があまりないようなら、問題ないのじゃ」
「それなら、農作業の合間に魔力の紐を伸ばす練習をするよ。
その方が、効率が良さそうだ」
「程々にするのじゃ」
「分かったよ。
心配してくれて、ありがとうな。
じゃあ、俺は農作業をやりに行くよ。
アンやドゥ達だけに、作業をさせておく訳にはいかないからな」
「では、妾は狩りにでも行ってくるのじゃ。
それで……今日も、肉と野菜のスープがあると嬉しいのじゃ」
「アンとドゥも、もう一度作り方を見たいって言っていたから、今日も作るよ」
「それは楽しみなのじゃ。
では、行ってくるのじゃ」
「あぁ、よろしく頼むな」
ある程度は魔法を自由に使えるようになったと思っていたのだけど、まだまだ甘かったようだ。
瞬間移動を教えて貰って、ヴィーヴルの魔力操作がとんでもなく高度なんだと気が付かされた。
種族による魔法への適性の差があるかも知れないが、ならば俺は、その差をも埋める位に練習していかなければならないのだろう。
救いなのは、魔法の練習がそれ程、苦とは感じていないことだろうか。




