第72話 瞬間移動を学ぼう(7)
「そうなのか……じゃあ、『魔力の欠片』って長すぎるから、『セット』にでもするか」
繋げる先となる魔力の欠片を作ってみる。
「セット」
「ふむ、きちんと置かれたようじゃな。
ノアも、何処に置かれているかきちんと分かっておるか?」
「ぼんやりとだけど、その辺にあるって分かるかな」
「ふむ、ぼんやりとか……ノアよ、今ここから正確にドワーフ達の家の方向が分かるかの?」
「大体の方向なら分かるけど、正確な方向までは無理だな」
「では、ノアには魔力の紐を伸ばす前に、もう一つ覚えねばならない魔法があるのじゃ」
「それは何だ?」
「サーチの魔法じゃ」
「サーチって、あの魔物や人間などが居ないか探すやつだろ?」
「それは、サーチの魔法における使い方の一つなのじゃ」
「その言い方だと、他にも使い方があるのか?」
「魔力の存在を探すためにも使えるのじゃ。
今回は、自分の魔力を探すことで、目印を探すために使う事となるのじゃ」
「サーチで目印を探して、そちらに向けて魔力の紐を伸ばしていくってことか?」
「その通りなのじゃ。
サーチは、目的のものを魔力が当たることにより反応するのを利用して、目的のものを探し出す魔法なのじゃ。
なので、魔法を使う時には、反応するものをあらかじめ決めておく必要があるのじゃ。
反応するものを決めずに使うと、ありとあらゆる物体に対して反応してしまうので、気を付ける必要があるのじゃ」
「自分の魔力に反応するようにサーチの魔法を使えば、目印を探し出すってことか」
「手を横に動かすようにしながら魔法を使えば、範囲でサーチできるようになるのじゃ。
遠くのものを探したい場合には、より魔力を濃くする必要があるのじゃ」
「サーチの魔法って、ダンジョンとかで魔物がいないか探す時にも使うよな。
あれも、同じようにやっているのか?」
「その時は、魔物に魔法を使ったことが分からないようにするために、魔力濃度をかなり薄くして行うのじゃ。
そうしないと、魔力を検知できない魔物でも、何かしらの違和感として感じるようなのじゃ」
ヴィーヴルからの殺気が、プレッシャーとして感じられた。
「今、ヴィーヴルから殺気を感じたのだが、これの事か?」
「では、これならばどうじゃ?」
ノアから放たれる殺気が消えた。
いや、正確にはほんの僅かだが殺気を感じるものの、注意をしていないと分からない程度だ。
「ほんの僅かだが、殺気を感じるかな? でも、ヴィーヴルに注目していてやっと感じるくらいだけどな」
「そういう事なのじゃ。
ノアはサーチの魔法の魔力を、殺気として感じるようじゃ。
それはそれとして、話を戻すのじゃ。
とりあえず、先ほどノアが作った魔力の欠片を探してみるのじゃ」
「じゃあ……サーチ」
目印を置いた辺りで反応があった。
「そこで反応があったな」
「うむ、出来たようなのじゃ。
しかし、目印の置いた場所を探るだけならば、今の魔力濃度でも問題は無いのじゃ。
しかし、敵を探る場合には魔力濃度が濃すぎて簡単に分かってしまうのじゃ。
狩りをする時に獲物を探す為に今の感じで行うと、動物たちは皆、逃げてしまうと思うのじゃ」
「そっちは、今後の課題ってことだな」
「うむ、まぁ、動物除けには良いかもしれないのじゃ」
「動物除けか……畑で使えないかな?」
「イノシシとか鹿は、畑を荒らすと聞いたことがあるのじゃ。
ノアが朝も夜も畑の前に立ち、サーチの魔法を使っていれば荒らされずに済むかも知れないのじゃ」
「勘弁してくれよ」
俺は苦笑いをするしかなかった。




