第71話 瞬間移動を学ぼう(6)
俺はまた、地面に四角形を描き始める。
(縦横同じ大きさにしないといけないから、2倍にすると4倍の大きさになる。
さらに2倍にすると、四角形はいくつになるんだ?)
四角形を縦横2つに分割して、更に半分の位置に線を描いていった。
(1、2、3、4、……15、16。
16倍か……これは多すぎるだろう)
「ヴィーヴル、16倍だと多すぎるよな?」
「魔力濃度が多い分には、どれだけ多くても構わないのじゃ。
しかし、その分、魔力が必要となるから、距離も短くなるし、魔力切れになるかもしれないから、注意が必要なのじゃ」
「魔力切れになるとどうなるんだ?」
「精神への負担となってしまい、身体への影響がでるのじゃ。
最も軽い症状だと、暫くの間、眠ってしまうだけじゃ」
「重い症状だとどうなるんだ?」
「人間じゃと、精神崩壊を起こして、普通の生活を送れなくなるのじゃ」
「うわ、そういう事は先に教えておいてくれよ。
魔法が使えるようになって、調子に乗って、ずっと練習していたじゃないか」
「今までノアが作っている程度の魔法だと、魔力切れは起こさんのじゃ。
一度の魔法で使用する魔力の量が、多すぎる場合に起きるとと考えると良いのじゃ。
今まで、ノアが作っておった土のブロック程度では、ほんの一部しか使っておらんのじゃ。
しかし、転送魔法の場合にはどこまで魔力を使うか分からんのじゃ。
故に、瞬間移動をするときには、自分の残りの魔力量に注意しながら行う必要があるのじゃ」
「一度に使う量が大したことなければ、魔力切れは気にする必要が無いってことか?」
「大抵は、次に魔法を発動するまでには回復するのじゃ」
「使いながら回復はしないのか?」
「せんのじゃ」
気を取り直して、俺は再び計算をし直すことにした。
縦横4倍だと大きすぎるから、3倍だとどうなるのか……
縦横から1列ずつ四角形を消してみる。
(1、2、3、4、……7、8、9っと。
9倍か……これなら良いんじゃないか?)
「うん、よし、できそうだ。
ヴィーヴル、見ていてくれ」
「あぁ、分かったのじゃ」
入口は3cm、出口は5mmの漏斗をイメージして、魔力を通していく。
「魔力の紐」
「うむ、これなら瞬間移動に耐えられる濃度なのじゃ。
あとは、もっと素早く魔力を放出できるようにするのじゃ」
「あぁ、目処が見えたな」
「と、その前に、目印の作り方を覚えねばならんのじゃ」
「あ、そうだったな。
どうすれば良いんだ?」
「目印とする魔力の欠片は、ノアの魔力の紐の大きさならば、あれを途中で切って置いておけば良いのじゃ」
「そんな簡単なことなのか?」
「魔力の紐を作ることに比べたら、簡単なのじゃ。
瞬間移動を行う際には、魔力の紐を作ることが一番難しいのじゃ」