第61話 また会おう
先頭から、ファーティとアイリス、イルデ、俺の順で歩いていく。
自然とアイリスに合わせての移動となるので、それほど早くは歩けない。
ファーティと俺は周りを警戒しながら歩いているが、警戒する必要が無いくらい平和な森だった。
帰りはドワーフの親子だけで森を抜けることになるのだが、それが許されるほどなのだろう。
昨日、ドノバンの家の周りで狩りをしようと思ったけど、動物らしきものは見当たらなかったしな。
30分ほど歩いただろうか。
遠くに街が見えてきた。
アイリスの歩調で30分ほどだから、俺なら15~20分くらいで来られるだろう。
「真正面に門が見えるでしょ? あの門は裏門なの。
私たちはいつも通り、裏門から入ります。
壁伝いに反対側へ回り込むと正門があるから、あなたたちはそちらから入って頂戴。
ノアさんは、この辺で見かけない顔だから、門番に問われるかも知れないわね」
「装備でも買いに来たことにすれば良いだろ?」
「えぇ、それなら大丈夫だと思うわ。
ドワーフの街だから、当然のように受け入れられると思うわ」
「実際に、物を買うには、何処へ行けば良いかな?」
「門を入って、まっすぐ行くと広場があるから、それを左側……いえ、反対側から入るから右側ね。
右の道を行くと商店街があるから、そこで物を買うと良いわ。
商店街には、農機具も売っていたはずだから、そこで欲しいものは全部揃うと思うわ」
「農機具は工房で作るんじゃないのか?」
「ドワーフの街では、武器、防具専門の工房を集めて『工房街』って呼んでいるわ。
その他の生活用品なんかを作る工房は商店街の方にあるの」
「そうなのか」
「それと、帰る時も正門を通って頂戴ね。
裏門は殆ど使う人が居ないから、怪しまれるかも知れないわ」
「分かった。
色々と世話になったな」
「こちらこそ、久しぶりにあの人の生き生きとした顔を見られて良かったわ」
「ファーティ、ノアさん、ばいばい……」
『ワン』(さらば)
「あぁ、またな」
「じゃあ、アイリス、行くわよ」
イルデがアイリスを連れて、街の方へと向かっていった。
「それじゃ、俺達も移動するか」
森の中を壁伝いに移動して行った。
暫くすると、壁とは違う門らしきものが見えてきた。
(あれが正門かな? 此処から出て行くと怪しまれるかもしれないから、道があるだろうし、そこから正門へと向かうか)
更に森の中を移動すると、結構大き目の道が見えた。
(あれが正門に向かう道だろう。
もう少し、道の先の方から合流した方が良さそうだな)
今度は道伝いに、森の中を街の方向と反対へ進んでいく。
暫くすると、森がなくなり草原が見えた。
(ここから道へ合流すれば良いだろう)
森を出て道へ向かい、街へと歩いて行った。




