第60話 ドワーフの街へ行こう
「あぁ、構わないが、此処で良いのか?」
「おう、話というか、お主への願い事じゃな。
お主には儂の願いを聞き入れるか考えて欲しいのじゃ」
「あぁ、俺にできることなら構わないぞ」
「うむ、では言おう。
儂らをお主の所で住まわせて貰えんかの?」
「え? 俺の所に来たいってことか?」
「そうじゃ、これは、昨晩、イルデとも話して了承済みじゃ。
あとはお主が首を縦に振れば決定じゃ」
「何でまた……俺の所に来たって、人里離れていて何も無いぞ」
「でも、オリハルコンはあるじゃろ。
儂はどうしてもオリハルコンを打ちたいんじゃ」
「俺がここに持ってきても打てるだろ? 無理にこっちに来る必要はないと思うぞ」
「それも考えたのじゃが、お主がいつ来るのか分からんのは困るのじゃ。
オリハルコンを持ってきたからと言って、すぐに打てるわけではない、準備が必要じゃ。
それに、此処にいると監視の目が届きやすいじゃろう。
お主の所は人里離れているというし、監視がされにくいと思うのじゃが」
「分かったよ。
でも、これは俺の一存では決められないんだ。
一旦、持ち帰らせてくれないか?」
「分かっておるのじゃ。
さぁ、この話は終わりじゃ。
中に入って朝食を食べよう」
中に入ると、机の上にはイルデが用意してくれた朝食が並んでいた。
やさしい味付けで、朝食らしい朝食だった。
「きょう、かえっちゃうの?」
アイリスが泣きそうになりながら、言っていた。
「ファーティだけを置いていく訳にはいかないからな。
ファーティの子供達も、ファーティの帰りを待っているだろうしな」
「こいぬさんがいるの? みた~い」
「その内、会えるかも知れないぞ」
「ほんと!?」
「あぁ、アイリスが良い子にしていたら会えるんじゃないか?」
そんなこんなで朝食を食べ終えて、ドワーフの街へと向かう時間になった。
アイリスも街に連れていくそうだ。
ドノバンはミスリルを打つ準備があるから、アイリスの面倒を見ていられないらしい。
「ドノバン、世話になったな。
今度は10日後くらいに来るよ」
「あぁ、待っとるよ。
その時には、朝の件について良い返事がもらえると嬉しいのじゃがな」
「あぁ、前向きに検討させてもらうよ」
「おとうさん、いってきま~す」
「あなた、留守の間、よろしくお願いしますね」
「気を付けて行ってくるんじゃぞ。
ノア、また会おうぞ」




