第59話 ドノバンの頼み事
翌朝、朝日が出る前に目が覚めた。
外へ出て身体を伸ばしていると、イルデが2階から窓を開けて声を掛けてきた。
「おはようございます。
昨日はよく眠れましたか?」
「おはよう。
お陰でよく眠れたよ、ありがとう」
「どういたしまして」
「ドノバンは?」
「まだ寝ているわ。
昨日、余程嬉しかったようで、遅くまで興奮しながら話していたわ」
「それは良かった」
「その事について、ちょっと話が……うぅん、何でもないわ。
ドノバンから話すと思うから、聞いてあげて欲しいの」
「良く分からないが、話を聞くのはいつでも良いぞ」
「ありがとう。
じゃあ、私は朝の支度をするわね」
イルデが窓を閉めた。
(昨日は魔法を殆ど使わなかったからな)
魔法の練習の為、土のブロックを作ってはキャンセルで消してを繰り返していた。
作る時にも魔力の濃度を変えて作ることで、魔力放出の練習もする。
以前より魔法(魔力)の扱いに慣れてきたのか、断然、早く正確に土のブロックを作れるようになっていた。
それでも、ヴィーヴルに比べるとまだまだだと思えるが……
(ヴィーヴルと比較するのは、最初から間違いだとは思うけど、それでも、少しでも近づけるように頑張るか。
今の生活に役立つことは分かっているんだからな)
土魔法をもう少し練習すれば、無詠唱で発動させられるような感じがするので、土のブロックを作ってはキャンセルするを繰り返す。
(お、今、出来掛かっていたな。
もうちょっと……)
「おはよう」
(あ、失敗した。
まぁ、いいか。
今後のお楽しみに取っておこう)
「あぁ、おはよう、ドノバン。
昨日はすっかりご機嫌だったようじゃないか」
「暫く振りにミスリルを打てるのじゃからな。
自然と良くなるってものじゃろうて。
それでだな、ノアに折り入って話があるのだが良いじゃろうか?」
こんな朝早くから話がある? おかしな話でなければ良いのだが……




