第54話 ドワーフとの話し合い(4)
「それはそれとして、腕は良いようだな。
ドノバン、改めてお願いする。
これで打ってくれ」
「任せてくれ、決して悪いようにはせんからの」
「それと、イルデ。
明日、街に行くんだよな?」
「えぇ、そのつもりよ」
「それならば、お願いがあるのだけど、良いだろうか?」
「俺も連れて行って貰えないだろうか?」
「ノアさんを街へ? 良いけど、何かあるの?」
「食物や種、農機具を買いたいんだよ」
「そうなのね。
でも、お金はあるの?」
袋から全財産である金貨1枚、銀貨5枚を取り出す。
「これが、今の全財産だ。
街があったら、何か買って帰ろうと思っていたんだ」
「それじゃあ、明日はノアさんを街で案内するわ。
領主様にもお引き合わせした方が良いかしら?」
「ミスリル、オリハルコンの話をするのだろ?
そうなったら、俺が出所を問い詰められて不味いことになるかもしれないから、会わない方が良いと思う。
突然、持ち込まれて、出所は分からないとしてくれ」
「そうなると、私がノアさんを案内するのは不味いかもしれないわね」
「どういう事だ?」
「ミスリルやオリハルコンの話をした日に、見たこともない人間を私が案内していたら、どう見ても怪しいじゃない?」
確かにその通りだ。
何があったのかと勘繰られても仕方がない。
領主の手の者に、尾行されているかもしれないしな。
「それなら、俺は街に行かない方が無難かも知れないな。
そうなると、イルデに全てのことを頼むことになるのだが……良いだろうか?」
「良いわよ。
だけど、持って帰ってこられるかしら?」
「それなら……ちょっとこれと同じくらいの袋か何か無いかな?」
「これで良いかしら?」
「あぁ、大丈夫だ。
これを……こうすれば、良いだろう」
イルデから手渡された袋を、魔法でストレージ化した。
「7日ぐらいは、この袋の中に沢山入れられるようになったはずだ。
取り出したいときは、その物を思えば良い。
そこにあるミスリルとオリハルコンで、ちょっとやってみてくれ」
イルデに袋を手渡すと、イルデは袋の中にミスリルとオリハルコンを入れた。
そして、袋の中に手を入れて、ミスリルとオリハルコンを取り出していた。
それを何回か繰り返して、使い慣らす様にしていた。
「袋の中は、この家と同じくらい大きくなっているはずだから、買ったものを入れてこられるだろう」
「あら、便利ね」
「一度に大量の物を出し入れしていると、怪しまれるかも知れないから気を付けてくれ。
袋より大きいものを出し入れする時も、出来れば隠れてやって欲しい。
面倒かも知れないが、見つかると面倒なことになるかも知れないからな」
「分かったわ」
「それと、袋の中では息ができなくなるから、生きている物は入れられないと思ってくれ」
「あら? その言い方だと、試したのかしら」
「あぁ、死ぬかと思った……」
前に俺自身が入れるかどうか試したことがあるのだが、顔を袋の中に入れた途端に息ができなくなってしまい、死んでしまうところだった。
本当に苦しくて、死ぬんじゃないかと思った。
「ふむ、そうなると、ちょっと考えねばならんのう……」
「袋のことか? それならば、生き物を入れなければ良いだけだと思うが?」
「そのことではない。
オリハルコンを、いつまでも出所不明で隠し通せんという事じゃ」