第41話 料理を教えよう
家に帰ってきて、晩ご飯を作ることになった。
「そうだ、ヴィーヴルも食べて行かないか? 皆で食べた方が美味しく食べられるだろ。
食べなくても大丈夫だと前に言っていたけど、食べても問題ないのなら、一緒に食べようぜ」
「じゃが、妾は畑の作業を手伝っておらぬぞ」
「今日みたいに、偶に狩りを手伝ってくれればいいさ」
「分かったのじゃ、お呼ばれするのじゃ」
「よし、じゃあ、アン、ドゥ、作りに行こうか。
ヴィーヴル、出来たら呼ぶから、自由にしていてくれ」
「では、妾も料理するところを見ているのじゃ」
「あぁ、構わないよ」
肉の塊をストレージから取り出して皿の上に乗せる。
「これを、こうやって、これくらいの大きさに切り分けるんだ」
肉を小刀で切り分ける。
「さぁ、やってみろ」
アンに小刀を渡す。
「ゆっくり、小刀を前後に動かしていくと切れるから……そう、力を入れ過ぎると自分を切っちゃうから気を付けろ。
よし、もう一回やってみろ……、よし、上手く出来るようになったかな? 次はドゥの番だ」
アンが最初に2切れの肉を切り分け、ドゥも同じように2切れを切り分けた。
「その調子で、それを全部切り分けるんだ」
やっぱり、物覚えは良いようだな。
暫くして、全てを切り分けたようだ。
「次に、枝に肉を刺して行こうか」
「妾もやってみたいのじゃ」
「あぁ、いいぞ、ほら、枝だ」
皆で枝に肉を刺していく。
これは、教えるまでもなく出来ていた。
全部で、7つ出来上がった。
「そして、こんな感じで塩をつまんで上から振りかけるんだ。
この時に、下の肉を回しながら、全体に万遍なくかけていくんだ。
胡椒も一緒に振りかけるともっと美味しいのだけど、今は無いから塩だけの味付けだな」
アン、ドゥ、ヴィーヴルが肉に塩を振りかけていく。
「後は肉を焼くだけなのだけど、火を点けるのは難しいから、しばらくは俺が点ける」
そう言って、松ぼっくりを中心にして、その上に薪を組む。
そして、魔力を薄くして手のひら位の大きさでイメージする。
「ファイヤ」
火の玉が出てきて、暖炉に向かって発射する。
松ぼっくりに火が移って、松ぼっくりから薪へと火が移った。
「ここに肉を翳して焼いていくんだ」
肉が焼けて、良い匂いが漂い始める。
「ほぉ、香ばしくて美味しそうな匂いなのじゃ」
「焼き過ぎると美味しくないから、気を付ける必要があるんだ。
鹿の肉の場合は、表面の色が変わったら大丈夫だから、大体、これくらいで良いだろう」
「ふむ、料理と言うのは、そんなに難しくない様なのじゃ」
「俺が、あんまり難しい料理を知らないって言うのもあるからな。
もっと手の込んだ、作るのも難しい料理だってたくさんあるんだ。
それこそ、料理人っていう料理を作る専門の人だっているくらいだしな」
「そうなのか? そういうものも食べてみたいものなのじゃ」
「まぁ、此処の生活が安定したら、料理人に来てもらうって言うのも良いかも知れないな」
そして、全部の肉を焼いて、皿の上へと置いた。
今日は丁度人数と同じだけ枝に刺して焼いたので、刺したままにしてある。
1人1本でちょうど良いと思ったからだ。
「ご飯ができたぞ、さぁ、皆で一緒に食べよう」
真ん中に皿を置いた。
「今日は1本ずつ取ってくれ、じゃあ、食べよう」
1本ずつ取って、食べ始めた。
「ほう、焼いただけでも、これほど美味くなるのか! 肉は生で食べるのが殆どじゃったけど、焼いた方が美味いのじゃ!」
『ですよね。私達も驚いたんですよ』
『やいたおにく、おいしいよね~』
『ね~』
「それは何よりだ。
アン達も肉の焼き方は覚えただろうしな」
前より騒がしい食卓ができた。
冒険者をやっていた時も、騒がしい所で食べてはいたが、それとは違う騒がしくても心休まる食卓があった。
こんな食卓を囲める日が来るとは、冒険者時代には思ってもいなかった。