第39話 畑作業をしよう
朝食を摂った後、外へ出るとヴィーヴルが洞窟から出てきた。
丁度良かったので、ヴィーヴルにゴブリン達を紹介した。
名前は俺が付けたことを伝えると、
「確かに、下位の魔物には名前を持っているものはおらんのじゃ」
と言われた。
魔物の常識らしい。
「妾も行って良いかの?」
「あぁ、全然構わないぞ、何なら、手伝ってくれたっていいんだが?」
「気が向いたらやっても良いのじゃ」
まぁ、ヴィーヴルはやらないだろうけど、別に邪魔をしないのなら問題ない。
皆で家の裏にある畑に来た。
と言っても、まだ、全然畑の形にはなっていないが……
「まずは、此処の草を抜いていくんだ。
草の下の方を持って、引っ張ると抜けるんだが、結構、力が要る場合がある。
皆、抜けるか試してみてくれ」
アンとドゥの大人ゴブリンは、草を抜くことができたようだ。
対する子供ゴブリン達は、抜くことができなかったようで、一生懸命引っ張り続けている。
「あ~、そんなに沢山を一度に抜こうとするから抜けないんだよ。
少しだけを掴んで引っ張れば、抜けると思うぞ」
『あ、ぬけたぁ』
「よし、じゃあ、皆で草抜きをしよう。
抜いた草は、この袋の中に入れていってくれ」
そう言いながら、ストレージで内部を大きくしてある袋をそばに置く。
これに入れておいて、あとで纏めて端っこの方に捨てに行けば、効率的だろう」
「小石があったら、こっちの袋に入れてくれ」
小石は家の周りに撒いておけば、雨が降った後でも家の周りが泥だらけにならずに済むだろう。
あ、でも、ゴブリン達が上を歩いたら痛いかもしれない。
なんせ、裸足で歩いているからな。
集まった小石を入り口前に撒いて、上を歩いてもらって実験しよう。
そして、痛いようだったら脇に避けてしまえばいい。
敷きっぱなしにして、ゴブリン達に余計なストレスを与える必要もあるまい。
そうして作業を始めて小一時間が経った頃、子供たちが作業に飽きてきたようだった。
アンやドゥが注意しても、すぐに子供同士でふざけあっている。
「一旦、一休みしようか」
そう声を掛けて、草を抜いた所に座った。
座って周りを見てみると、思った以上に草を抜くことができていた。
ゴブリン達の作業量が思っている以上だったようだ。
ゴブリンと言う種族が真面目なのかも知れない。
「慣れていない作業をして、疲れていないか?」
『多少は疲れていますが、大丈夫ですよ』
『そんなに疲れていませんが、畑を作るって大変なんですね』
「あぁ、でも、畑を作ってきちんと管理していけば、ずっと使い続けられるからな。
子供に渡すために作るって言う人もいるくらいだから」
『子供に渡すためですか?』
「畑で物を作っていけば、食べていくことができるからな。
鹿とか兎はいつでも取れる訳じゃないだろ? 畑なら全く取れないと言う事は殆どないからな」
『全く取れないこともあるんですか?』
「あぁ、畑で出来る物は雨が降らないと枯れてしまうからな。
俺は知らないけど、昔はそういう時があったらしい」
水魔法だと威力が強すぎて、直接、畑に撃てないと聞いたことがある。
今なら、魔力を弱めて使えば良いだろうと思うのだが、何故、そうしなかったのか疑問でならない。
水魔法で水浴びをしたいと言った時には、「怪我したいの?」と真面目な顔で返答された。




