第36話 一緒に食事をしよう
晩ご飯を作ると言っても、今のところ鹿の肉を焼くくらいだ。
皆の分の食器はないから、握りこぶしの半分ぐらいの大きさに切った鹿の肉を焼いて、大きめの皿の上に乗っけていった。
俺はいつも3個ぐらいの量を食べているから、9個ぐらいを焼けば間に合うのだろうか? 子供ゴブリンに1個ずつ、大人ゴブリンに2個ずつ、俺が3個と考えると10個だな。
木の枝に鹿の肉の塊を2個ずつ刺したものを5つ作って、簡易暖炉の前に置いて、塩を振りかけながら回して炙り焼きにする。
(そういえば、ゴブリンって焼いたものを食べられるのか?)
人間が肉を焼いて食べるのは、病気になってしまう場合があるからだ。
街から離れているので、病気になったら助からないかもしれないからだ。
焼かなくても大抵は大丈夫なのだが、焼けば大体の病気は防げるらしいので、俺は前の家に住むようになってから焼くようにしている。
ゴブリンが肉を焼いて食べているとは聞いたことが無いので、焼いても大丈夫だとは思う。
それに悪食だとも聞くから、焼いていても大丈夫だろう。
大きめの皿の上に、焼きあがった肉をちょっと大きめの皿の上へ山盛りにする。
(もう少し、レパートリーを増やしたいところだな……)
「お~い、食事が出来たから、皆で食べようか」
皿を持って、ゴブリン達がいる部屋へと行く。
『それは、お肉ですか?』
「あぁ、焼いた鹿肉だ。
食べられなかったか?」
『いえ、焼いて食べたことが無かったので……焼くと、良い匂いがするんですね』
「あぁ、焼きすぎると駄目だが、丁度良く焼くと香ばしい匂いが広がるんだ」
『やいたおにく、はじめて~』
『おいしそ~』
『ぼくにもくれるの?』
「あぁ、皆で食べようと思って持ってきたんだ。
さぁ、座って食べよう」
ゴブリン達の前に皿を置いた。
「さぁ、食べよう。
焼いたから熱いと思うので、この木の枝に肉を刺して食べるといい」
木の枝を渡していく。
「とりあえず、子供は1つずつ、大人は2つずつ食べてくれ」
ゴブリン達が木の枝に肉を刺そうとするが、なかなか上手く刺せない様だ。
「真っ直ぐ刺さないと、刺せないぞ」
俺がお手本代わりに、1つの肉に木の枝を刺してみる。
『こうですか?』
『こんな……感じですね?』
大人のゴブリンは刺せるようになった。
ゴブリンは頭が悪いと言われているが、やり方が分からないだけで、頭が悪いわけではないと思う。
『う~ん、うまくさせない~』
『やった~、ささった~』
『えだ、おれちゃった』
「折れても、そのまま使って刺せばいいよ。
短くなりすぎたら、代わりの枝はあるから言えば代えてやる」
『うん……あ、ささった。
みじかいほうがさしやすかった』
和やかに食事が進んでいく。




