第344話 壁を白くしたい
「壁を白くしたいじゃと? その為には、石灰石が必要なのじゃよ」
「石灰石? 貝殻? 石を壁に貼り付けるのか?」
「石灰石や貝殻を熱していくのじゃよ。
その後、その熱したものを水に入れて暫く置いておけば、壁に塗れるようになるのじゃよ」
「その石や貝殻は、どの位温めれば良いんだ?」
「どんどん熱くしていくと、真っ白になるのじゃよ。
鉄は赤くなるが、石灰石や貝殻は真っ白になる程に熱せねばならん」
「石灰石って言うのが何処にあるか分からないから、貝殻で作るしかないか」
「このような山奥の川に居る貝の貝殻では小さすぎるし、量もそれ程採れんじゃろう」
「どの位の量が要るんだ?」
「家1軒の外側を全て白くするとしたら、この位の高さの貝殻の山が要るじゃろうな」
ドノバンは、自分の身長と同じくらいの所に手を翳しながら言った。
「そうだとすると、ヴィーヴルの部屋だけでも、かなりの量が必要だな」
「石灰石ならば、貝殻よりは少なくて済むじゃろうがな」
「俺が石灰石を知らないからな……」
「山に白っぽい石や岩があるじゃろう。
全てが石灰石じゃとは言わんが、殆どの物はそうじゃろうな」
「あれか……マーブルとは違うものなのか?」
「マーブルは石灰岩の一種じゃよ」
「そっちを探した方が早いかな?」
「此処では、そうじゃろうな」
「分かった。
あと、白以外の色にするのは難しいかな?」
「難しいじゃろうな……他の色を付けるには、大量にその色を必要とするのじゃからな。
何か赤い物を入れたとしても、大量の白い色で薄まることになるのじゃから、薄い赤色にしかならん」
「そうなると、白なら出来ると言っておいた方が間違いないか」
「色は付けられんが、絵を描くことは出来る。
壁一面に、自分の好きなように絵を描かせれば良いじゃろう」
「それはそれで、面白そうだな」
「村にある家を全て白くすると、それはそれで綺麗だと思うのじゃが、どうだろうか?」
「家と分かりやすくなっていいかもしれないな」
「それに、食堂は白い壁の方が心地良く食べることができるじゃろう。
今は閉じている店も、白く塗った方が、心地良いと思うのじゃがな」
「あぁ、その為にも、まずは石灰石を大量に手に入れないとだな」
「石灰石は1箇所に固まって、大量に存在しておるじゃろう。
一部分をミスリルの短剣で切り取り、持ってくるのじゃよ。
儂が石灰石かどうか判断するのじゃ」
「分かった。
先ずは、街へ行く途中に探しながら行ってみるよ」
「森の中は無駄じゃろう。
森にあったとて、掘るのは難しかろう。
探すなら、山を探す方が良かろう。
後は、洞窟の中にもあるかも知れんじゃろうな」
「分かった。
色々とありがとうな」
手近な洞窟の中から探してみることにした。




