第34話 ゴブリン達と水浴び
ゴブリン達を連れて、家へと帰っていく。
ゴブリンの体格は、人間の子供と大して変わらないからそんなに早くは歩けない。
今回は更にゴブリンの子供もいるんだから、来る時の倍は優に掛かるだろう。
(今日はもう、作業はできないな)
人手を手に入れられただけでも収穫があったのだから、良いだろう。
道の横を流れている川に目がいった。
(ゴブリン達を川で洗ってやるか)
ゴブリン達は土の上で暮らしていたのか、薄ら汚れている。
「おい、水浴びでもして行こうか」
『水浴びですか? 水を浴びてどうするんですか?』
「身体を清潔に保つんだよ。
健康に暮らすためには、身体を清潔にしないといけないからな」
『私たちはいつでも健康ですよ』
「そうなのか? でも、身体を清潔に保つのは良いことだから、水浴びしようぜ」
『わかりました。
水で身体を洗えば良いんですね』
「あぁ、そうだよ。
こんな気持ちのいい日には水浴びをしてスッキリすると、気持ちも良くなるんだ。
俺も水浴びしていくよ」
俺は服を脱いで、川の中へと入っていった。
「ふぃ~、冷たくて気持ちいいや」
ゴブリン達も、恐る恐るながら水に入ってくる。
まさか、ゴブリンと一緒に水浴びをすることになりとはなぁ。
ゴブリンの大人たちは、石に座りながら身体に水を掛けている。
子供たちは、最初こそはビクビクしていたが、少しすると慣れてきたのか水を掛けあって遊んでいる。
子供達が遊んでいる姿を見るのは、微笑ましい。
それが例えゴブリンであってもだ。
(こういうのも、のんびり暮らすってことなんだろうか? だとしたら、こういう日が過ごせればいいな。
さすがに、毎日だと食うに困るだろうが……)
30分ぐらい経った頃に、
「おい、そろそろ行こうか」
『え~、もういくの?』
『まだ、あそびたいよ~』
『みずあそび、たのし~』
「そろそろ進まないと、家に着くころには日が暮れてしまうかも知れないからな。
また今度、遊びに来よう」
『は~い、ぜったいだよ』
『あ~、おもしろかった~』
『きもちよかった~』
「さ、行こうか」
『水浴びって、思っていたより気持ちが良いものなんですね』
『私たちは、水を浴びるっていう事がなかったからね』
「それは良かった。
川に毎日来るのは無理だが、水を浴びるのは魔法で水を出せるから、必要なら言ってくれ。
仕事終わりの水浴びは最高だぞ」
『それは楽しみです』
『人間は、いつもこんなことをしているのですか?』
「人間にも好きな人と嫌いな人がいるけど、まぁ、俺は好きな方だな」
ゴブリン達と家へと帰っていく。
ゴブリンの集落を出た時より、ちょっとだけ仲良くなれたような気がした。
これから一緒に暮らしていくんだから、仲が良い方が良いに決まっている。
子供たちの笑い声が、家の周りに響き渡るといいな。