第32話 手伝いを集めよう(5)
『それなら、わたしもいきたい』
『私も行きたいです。
息子達も連れていきます。
いいわよね?』
『おかあさんがいくなら、ぼくもいく』
『ぼくもいいよ』
そう言って、5体のゴブリンが出てきた。
「これくらいの数ならこちらに来るのは構わないが、良いのか? 俺は人間なんだぞ。
騙されて討伐されるとか考えないのか?」
『騙して討伐するくらいなら、最初から集落ごと攻撃してきましたよね? あなたなら、そうできたと思います。
それに、ここに居るよりも、あなたについて行った方が生き残れる気がしました』
「来たら、子供でも出来ることは手伝ってもらうぞ」
『うん、やる~』
『うん、いいよ』
『ぼくにもできるの?』
「と、言う事らしいがどうする?」
『どうするとは、どういう事だ?』
「ここから、連れて行って良いのか? って聞いているんだ。
このゴブリン達を連れて行ったら、もう、手伝いはいらないから、出来たものを分けるって話もなしだ」
さっきまで話していたゴブリンが、何か話し合うのか、後ろに集まっているゴブリンの中に入っていった。
ゴブリン3~4体と考えていたが、大人のゴブリン2体に子供のゴブリン3体か。
頭数は十分だが、子供のゴブリンが3体いる。
作業としても大したことができるとは思えないが、何とかなるんじゃないかと思う。
『俺たちは出て行きたい奴を、止めることはできない。
だけど、出来たものは欲しい。
どうしたらいい?』
さすがに「はい、サヨウナラ」と連れて行くのは、こちらとしても後味が悪い。
だからと言って、何もしないのに分け前を与えるだけっていうのも、何か違うと思う。
何かいい方法は無いかと考えている途中で、ストレージの中に鹿が入っていることを思い出した。
「よし、じゃあ、こうしよう。
さすがに、何もしないのに出来たものを分けることはできない。
だけど、それだとこの集落に良いことは一つもない。
そこでだ、大人ゴブリン2体と子供ゴブリン3体の見返りとして、鹿の足4本を置いていこうと思うが、どうだろう?」
『鹿の足4本か?』
「このまま連れて行ったら、何も手に入らないのだから、それに比べれば十分良いと思うぞ」
ゴブリン達は悩んでいる。
もっと欲しいのだろうが、俺としてはこの辺で決めてしまいたい。
備蓄は少しでも多く持っておきたいからだ。
「足2本でも良かったかな?」
ゴブリンに聞こえるように、態と少し大きめの独り言を呟く。
『わかった、足4本でいい』
よし、釣れた。
「よし、じゃあ、足4本だ」
ストレージとなっている布袋の中から、鹿の足4本を取り出してゴブリンに渡した。
「じゃあ、連れて行くぞ」
ゴブリン5体を連れて、家へと帰ることとなった。




