第302話 働く事を辞めた者(1)
「最近、我々の仲間で働くのを辞めた者がおります。
他の者から不公平だとの話が出ておりますので、どうか、村長により話をしてください」
ケンタウロスの1人より、その様な訴えを聞いた。
「そいつが働かない理由は聞いているのか? 怪我をして働けなくなったとか」
「怪我をしたという話は、特に聞いておりません」
「聞いていないということは、直接会ったと言う訳ではないのか?」
「はい、その者の母親が会わせてくれないのです」
何か、面倒なことになっている感じがするが、その様なことを解決する為に村長が居るのだから、俺が行くしかない。
「分かった。
話をしてみるから、連れて行ってくれないか?」
「ありがとうございます」
「ヴィーヴルは……どうする?」
「妾も行くのじゃ」
俺とヴィーヴルは、その働くのを辞めたケンタウロスの下へと連れて来てもらった。
「エイダさん、居るかい?」案内してもらったケンタウロスがドアをノックして、家の中へと声を掛ける。
「どなたですか?」
「俺だ、ケントだ。
ダンの事で、村長に来てもらったんだ。
開けてくれないか?」
「私が働いていれば、ダンは働かなくても良い筈です。
村の決まりもそうなっているのですから、ダンの事はもう放っておいてください」
確かに村の決まりでは、家族の中から1人でも働いていれば全員分の衣食住については保障することになっている。
「村長のノアだ。
食事の事は良いのだが、何故、働かないんだ? 働けなくなったのならば、その理由を教えて欲しいんだ」
「ダンが働きたくないと言っているのだから、働かせたくないのです。
私が働いているのだから、問題は無い筈です」
「ダンって、子供なのか? それなら、無理矢理働かせる事も無いだろう」
「村長、ダンは成人した立派な大人ですよ。
私も、子供を無理矢理働かせようとは言いません」
「そうなのか。
じゃあ、やっぱり、何故働きたくないと言い出したかの原因を探らないと、埒が明かないな」
「そうですね。
その為にも、ダンと話が出来ないと如何しようもありません」
「エイダさん、何故、働きたくないのか聞きたいんだ。
話を聞かないと、働きたくなくなった理由が分からない。
その問題を解決しないと、村全体の問題として残ってしまうかも知れないんだ」
「本当に、理由を聞くだけですか?」
「あぁ、理由を聞いて、解決できるのならするよ。
そのままだと、ダンの為にも良くないだろうからな」
「ダンに聞いてみます。
少々、お待ちください」
少しして、家の中から声がした。
「ダンは、村長さんとだけ会うそうです」
「分かった。
じゃあ、ちょっと行ってくるよ。
ケントは仕事に行ってくれ。
此処までの案内、ありがとうな。
ヴィーヴルはどうする?」
「妾は此処で待つとするのじゃ」
「分かった。
じゃあ、エイダさん、家の中に入れてくれないか?」
「今、ドアを開けますので、村長さんのみお入りください」




