第30話 手伝いを集めよう(3)
「話と言うのはだな、此処から北の方角にドラゴンが住んでいるのを知っているか?」
『北というのはどっちだ?』
「こっちの方角だ」
俺は北の方向を指さす。
『お前ら、知ってるか?』
他のゴブリンが首を振る。
『俺も知らないし、他の奴らも知らない』
「そうか……まぁ、北にドラゴンが住んでいるんだが、今、俺もそこに住んでいるんだ。
そして、俺はそのドラゴンの用心棒みたいなことをやっているんだ」
『用心棒って?』
「あぁ、身の回りの周りを守っているんだ」
『ドラゴン様はお強いから、お前が守る必要などないだろ』
「確かに強いから守る必要なぞいらないかも知れないが、相手をするのも嫌らしくて、俺はそいつ等を追っ払う様にも言われているんだ」
『追っ払う役目か。
それで?』
「食べ物を作りたくて家の近くに畑を作ったんだけど、俺一人では手が足りなくなったんだ。
そこで、お前らにも3~4人ぐらいに畑の作業を手伝ってもらえないかと思ってきた」
『奴隷として連れていくと言うのか?』
「いや、奴隷としてではなく、こちらで自由に生活してもらって構わない。
作業の手伝いだけしてもらいたいんだ。
もちろん、見返りもある。
お前らは人間の金貨とかを貰っても仕方ないだろうから、畑で出来たものを分けるというのはどうだ?」
『お前の畑を手伝う。
代わりに出来たものを貰えるということか?』
「そうだ。
出来たもの全部を渡すことはできないが、住んでいるのは俺とドラゴンだけだから、出来たものの半分以上は渡せるんじゃないかと思う」
『畑の手伝いだけをすればいいのか? 他にも何かやらされるんじゃないか?』
「今のところ、畑の仕事を手伝ってもらおうと思っているだけだから、他にはないかな。
今後、他の仕事が出てくるかもしれないけど、その時は今回と同じように、最初に仕事の内容を話して、それに対する見返りの話もする。
その仕事が嫌だったら、もちろん断ってもらっても構わない。
奴隷の様に強制する気もないし、見返りを渡さないという気もない」
『仕事に対しては、必ず見返りを用意すると言う事だな?』
「そうだ」
これまでの話を聞いて、またゴブリン達がざわついている。
人間と話したことが初めてだろうし、人間からの依頼で仕事をすることも報酬がもらえると言う事もなかっただろう。




