第299話 魔王領の動きを探る(2)
「村民を行かせるのは難しい……かと言って、商人に伝手も無い。
どうすれば良いんだろうか」
俺とルシフェルは頭を抱えていた。
「そう言えば、ルシフェル。
前に渡した魔道具はどうしておるのじゃ?」
ヴィーヴルが突然、声を上げた。
「使わなくなったので、仕舞っておいてあるが、どうかしたのか?」
「片方を魔王領へと持ち込んだのじゃ。
上手く行けば、魔王領の事を聞けるかも知れんのじゃ」
「あのまま置いてあるとは思えんな。
我の人形へと仕込み、我の席へと置いておいたのだから、新しく魔王となったものは当然、避けたであろう」
「あの箱さえ無事ならば、聞くことが出来るのじゃ。
試しに使ってみるのじゃ」
「分かったのだ。
ベルゼバブ、あの魔道具を持ってくるのだ」
「少々、お待ちください」
ベルゼバブは自室に戻り、ヴィーヴルの作った魔道具を取り出してきた。
「では、早速動かしてみるのじゃ。
動いたことが気付かれぬよう、声を潜めておくのじゃ」
俺とルシフェル、ベルゼバブは首肯した。
そして、ルシフェルが魔道具を動かし始めた。
魔道具からは何も聞こえてこない。
「やはり、駄目の様だな」
「いや、大丈夫じゃ。
魔道具からは魔力の糸が、もう一方の魔道具と繋げられておるのじゃ。
何処か、静かなところに置かれておるのじゃ」
「そうだとすると、魔王領の内情なんて分からないな……」
「うむ、厳しいであろうな」
『誰かいるのですか?』
魔道具から声が聞こえて来た。
咄嗟に全員が口を噤む。
『おかしいわね……何か喋り声が聞こえたような気がしたけど……』
何処に置かれているのか、何か手掛かりが欲しい。
このままでは埒が明かない。
痺れを切らしたかのように、ルシフェルが話し出した。
「そこの者、この声が聞こえるか?」
『うわっ、やっぱり話し声が聞こえる……どちらにいらっしゃるのでしょうか?』
「此処である、此処まで来るが良い」
『此処と言われましても、どちらにいらっしゃるのか分かりませんし、呼び寄せて何をなさるつもりですか?』
「何もせん、話を聞きたいだけだ。
早くここまで来るのだ」
『本当に何もしませんね? 約束ですよ?』
「分かっておる。
此方からは声を届けることしか出来ないから、お主を直接如何こう出来やせん。
早く、此処まで来るが良い」
『では、そこへと参りますので、声を出し続けてください』
「声を出し続けろと言われても、何を話せば良いのか分からん」
『何でも構いません。
声の元を頼りに、そちらへと向かいますので、何かお話しください』




