第296話 ハーピー達を受け入れる
「今まで、火を使ったことは無いのか?」
「ありません。
ご覧の通りですので、道具が使えません」
そう言って、羽を見せた。
人間で腕に当たる所が羽になっており、手に当たる部分は無い。
あれでは、物を掴むことはできない。
「獲物を捕らえたら、その場で食べていたのか?」
「運べる重さならば、足で掴んだり、口に咥えて運びますよ。
1人で運べなければ、1~2人呼んできて助けてもらいます」
人間の手に代わる物が、足という事なのだろう。
ただ、足も人間の手程は器用ではないという事か。
「後は住むところだが、屋根とかは無くても良いのか?」
「屋根があるに越したことはありません。
ただ、今までは動物が来られないような場所に、屋根となる物が無かっただけです」
「木の上に作れば、動物は来られないと言う訳か」
「鳥などは来ても問題ありませんが、クマが来ると私達には太刀打ちできません。
壁を作っても、私達が作れる壁なんてクマには何の障害にもなりません。
それよりは、木の上の方が安全ですからね」
「そうか……なら、入り口から動物が入って来られなければ、何処でも良いのかな?」
「えぇ、そうですね」
どういう造りが良いか、後でドノバンと話してみよう。
屋根があれば雨を防げるし、壁があれば風を防ぐことができる。
どちらも防ぐことが出来れば、快適に過ごせるはずだからな。
「俺から言っておくことは……そこの負傷者にも、今までの話を伝えておいて欲しいくらいだな。
そちらから、聞いておきたいことは何かあるか?」
ハーピー達が集まって、また話し始めた。
「宜しいですか?」
「何だ?」
「働かない者は、村に居られないということですか?」
「厳密にいうとそうなのだが、働くことが出来ないものまで働けとは言わない。
例えば、小さな子供や年老いた者などだな。
その家族が働いていれば良いことになっているから、年老いたから村から追い出すとかはしないから安心してくれ」
「家を作って貰えるのですか?」
「あぁ、そのつもりだ。
木の上が良いと言うのなら止めないが、雨風が凌げるだけでもかなり暮らしやすくなると思うんだ」
「空を飛んでも良いのですか?」
「村民になれば、村の上の空を飛ぶのは自由だよ。
さっきまでは不審者だから飛ばせられないけど、村民になったのなら不審者じゃないからな」
「食べ物は毎日貰えるのですか?」
「今の所は1日3食、皆で食堂に集まって食べているよ」
「3食も食べさせてもらえるのですか?」
「あぁ、だからその分、金貨とかは渡せない。
だけど、何か欲しい物がある時は言ってくれ。
街へ仕入れに行った時に買ってくるから」
「私達が金貨を貰っても、使い道がありませんよ」
そう言って、笑っていた。
確かに、今までも金貨とか無縁の生活をしていたようだしな。
 




