第295話 空からの侵入者(2)
「空は自由に飛べるはずです。
どうして、そちらの空の上を飛ぶ為に、不審者ではないことを証明しないといけないのですか?」
「村の防衛のためだよ。
空からの攻撃を防ぐために見張って貰っているのだからな」
「私達はご覧の通り、普通のハーピーですよ。
此方には攻撃を加えるつもりはありませんので、通してください」
「それを証明できなかったから、門番に攻撃されたんだろ? 何か証明する様なものはないのか?」
「そう言われても……」
「見たところ難民という感じでもなさそうだし、やはりここを通すわけにはいかないな。
その、傷ついた者を連れて帰れと言うのも酷な話だろうから、傷が治るまでは此処か村の中に居ても良いけど、傷が治ったら帰って欲しい」
「私達は、魔王領から逃げてきました。
帰る所はありません」
「そうなのか? その割には、生活道具とか何も持っていないようだけど?」
「私達は木の上に巣を作り生活します。
道具とかは必要なく、鳥と同じような生活をしていますので、何も必要ないのです」
「それならそうと、説明すれば良かったじゃないか」
「やっとの思いで魔王領から逃げて来たと思ったら、目の前に魔人が居て、『ここから先には通さない』と言われましたので」
あぁ、それで代表するものが魔族と対峙することになったんだな。
「何処か、違う方へ行った方が良かったと思うけど?」
「此方の方に難民を受け入れている所があるという噂がありましたので、そちらを頼ろうかと来ました。
正確な場所は分かりませんので、真っすぐ飛び続けるしかないと。
その内、先に難民となり逃げた者たちが見つかるのではないかと思っていました」
逃げてきた難民を見つける前に、アザゼルに見つかった訳だ。
魔王領の方を見張っている訳だから、当たり前と言えば当たり前だ。
「難民を受け入れている所と言うのは、俺の村だよ。
難民を受け入れてくれと、前の魔王様から頼まれているから受け入れるけど、条件がある」
「何でしょう?」
「村にはゴブリンが住んでいる、魔犬もいる。
それらの者と生活していくわけだが、見下したり、攻撃したりすると村から追放する」
ハーピーたちは離し始めた。
そして「皆、大丈夫との事です」と答えてくれた。
「あと、働ける者は働いて欲しい。
そうしないと、村の生活が成り立たないからだ。
働きに対して、金貨、銀貨などを与えることは無いが、代わりに衣食住の保証はする。
……のだけど、住むところは、自分たちで作るか? 俺が作っても良いけど」
「働くと言われても、私達に出来ることがあるのでしょうか? 今まで働いたことがありません」
「それじゃあ、どうやって暮らしていたんだ?」
「木に作った巣で生活し、獲物を狩ったり、木に成った実を食べていました」
「それなら、狩りを仕事としたいものは狩りをしてくれれば良いよ。
ただ、村にも狩りの仕事をしているものが居るから、一緒にしてもらうことになると思う。
その他の者は、何が出来るかを追々考えていけば良いから。
村に住み始めて、やりたいことが見つかるかも知れないしな」
「分かりました」
「それで、道具が無いって話だったけど、今まで、狩った獲物はどうやって食べていたんだ?」
「そのまま食べていましたけど、何か問題があるのでしょうか?」
受け入れるとしても、その辺から話し合わないと駄目なようだ。
 




