第294話 空からの侵入者(1)
「ノアとか言ったな。
無礼なハーピーがこちら側へ通過しようとしていたので、少々痛い目に遭ってもらったハーピー共がおる。
引き取りに来るが良い」
アザゼルが何時もの口調で、伝えてきた。
言葉こそはこんな感じではあるが、門番としての役割は果たしているようである。
それにしても、「少々痛い目」というのが気になる。
早めに確認しに行った方が良さそうだ。
「ありがとう、確認しに行くよ」
「礼など要らん。
俺はルシフェル様に仰せつかった役割をこなしただけだ」
そう言い残し、魔王領の方へと飛んで行った。
「俺は様子を見に行ってくるけど、ヴィーヴルはどうする?」
「妾も行くのじゃ」
「よし、じゃあ行くか」
ヴィーヴルから差し出された手を取り、何度かの瞬間移動で魔王領側の壁前に着いた。
そこには、翼が焦げて気を失っているハーピーと、それを取り囲み心配そうに見ているハーピー達がいた。
「どうしてこうなったのか聞きたいのだけど、代表者は誰かな?」
周りを囲んでいたハーピー達が、一斉に気を失っているハーピーを翼で指した。
この状態では、代表者から話を聞くことは無理だろう。
「では、代わりに誰か説明してもらえないだろうか?」
他のハーピー達が話し合いを始めた。
代わりの者を選んでいるのだろう。
暫くして、1人のハーピーが「私が代わりを務める事になりましたので、お話いたします」と、語り始めた。
曰く……魔王領で元々は暮らしていたのだが、ここ最近の魔王領からの締め付けに耐え切れなくなり、新たな移住先を探していたそうだ。
その途中に、うちの村を通ろうとしたところ、魔族の男に通ることは罷りならんと言うようなことを言われたため、どうしてなのかと説明を求めた。
しかし、その魔族から、ここを通ることは断固として認めてもらえず、その魔族の魔法により翼を焦がされて、此処へと落ちてしまったそうだ。
アザゼルとしては、門番として当然の対応である。
もう少し説明すれば良いのだろうが、多分、ハーピー如きが魔人に逆らうなと言うことだろう。
アザゼルは他種族を見下すので、村へ住むことは許されていないし、本人としても望んではいない。
門番として活動しているのは、あくまでルシフェルの命令だからだ。
俺としては何も言えないし、ルシフェルを通さない限り、何を言っても聞いてくれないだろう。
アザゼルの門番としての対応については、ルシフェルを通して後で言うとして、今はハーピーの対応が先だ。
「そちらに被害者が出たことについては謝罪するが、魔人の対応については門番としての務めを果たしたに過ぎない。
そちらが村へ入るのを諦めるか、不審者ではないことを説明する必要があったと思うのだけど?」




