第291話 村民たちの決意
「そう言う訳で、次は魔王領から攻めて来るかも知れない。
俺、ヴィーヴル、ルシフェル、ベルゼバブは戦うつもりだが、逃げたいものが居れば今のうちに逃げて欲しい」
晩飯の前に、村民の前で戦闘になる可能性がある事を告げた。
「それ程までに危険なのか?」
ドノバンから聞かれた。
「人間相手ならば、空を飛べないからな。
魔法使いがいたとしても、警戒するほどの者はいないはずだ。
だが、今度は魔人が相手だ。
空も飛べるし、人間とは比べ物にならない魔力を持っている。
1対1ならばヴィーヴル、ルシフェルは負けないだろうが、複数相手だと苦労するかもしれない」
「それでも戦うんじゃな?」
「ルシフェルはこの村の村民だ。
誰であろうと、村民を見捨てるつもりはない」
「ならば、儂も此処を出ていく理由がないじゃろうな」
ドノバンは此処に残ることを選択した。
「私も此処に残るわよ。
この人だけを置いていけないものね」
「俺も」「私も」と、他の村民全員が残ることになった。
「平和を脅かす相手には戦って良いんだよね?」
「何が平和か、どちらに理があるのかを決めるのは、アルル自身だ。
この戦いに賛同できないのなら、戦わなくても良い。
ただ、戦わないとしても、村民は守ってやって欲しい。
戦えない者を守るのは、勇者の仕事だろ?」
「そうだね。
それじゃあ、私の意志として戦うよ。
無理矢理連れ戻そうとするのは間違っていると思うし、それを力づくで押し通そうとするのも間違っていると思うからね」
「分かった。
アルルも空を飛べないから、俺と地上での戦いを頼むことになると思う」
「うん、分かったよ」
「ファーティ達はどうする?」
『我々も一緒に戦います』
「ありがとう、どういった布陣にするのかは、後々決めるけど、皆、心積もりは頼むよ」
どういう布陣を組むか、近々、打ち合わせる必要がありそうだ。
魔王領と戦うのは、王国と戦うことより難しいものとなるだろう。
ただ、村民の皆が此処に残ることを選んでくれた事が嬉しかった。
だから、俺は俺ができることを全力で行おうと思う。




