第289話 日常と非日常
「ルシフェル様は何処にいらっしゃるんだ?」
アザゼルが地に降り立つと同時に、俺にルシフェルの居場所を聞かれた。
「ルシフェルなら、王国の方の砦にまだ居るけど、どうした?」
「人間などに教える必要はない。
その砦は何処にあるんだ?」
少し引っ掛かる物があったが、気にしないことにした。
「あっちの方に飛んでいけば、直ぐに分かると思うぞ」
砦のある方向を指差した。
「あっちだな」
アザゼルは礼を言うでもなく、さっさと指差した方向へと飛んで行った。
「何だったんだ? いったい」
「知らないのじゃ」
気にせず、水路の点検を続けることにした。
その後、ストレージの点検をしながら、在庫の確認を行う。
「食堂で何か必要なものはないか?」
「ん~、しおがすくなくなってきたかなぁ」
「分かった。
今度、街に行ったときに買ってくるよ。
他に何か必要なものはないか?」
「村長様、お鍋が1つ壊れてしまいました」
「それじゃ、ドノバンの所に持っていくから、持ってきてくれ」
「はい、こちらです」
「じゃあ、直してもらったら持ってくるよ。
他にはないか?」
「はい、大丈夫です」
俺はドノバンの所へ鍋を持っていた。
「これの修理を頼めるか?」
「これが出来たら取り掛かるので、そこへ置いておくのじゃ」
「分かった。
あと、ここで不足しているものや必要なものはないか?」
「人手が欲しいところじゃが、それはどうしようもできないじゃろう」
「俺にできることでお願いしたいな」
「強いてあげれば燃料ぐらいじゃろうな」
「分かった。
今度、街で買ってくるよ」
「あと、そっちにあるのが新たに作った装備じゃから、邪魔じゃから持っていくが良いじゃろう」
「今回は少し多いか?」
「どんどんと装備を鋳潰したからのう。
そうじゃ、ミスリルももう少し欲しいところじゃな」
「それじゃ、後で持ってくるよ」
「それでは、それまでに鍋は直しておこう」
「それは助かるよ。
じゃあ、他の所を回った後に、ミスリルを取りに行ってから戻ってくるよ」
「あぁ、よろしく頼むのじゃよ」
ドノバンの工房から出たところで、ヴィーヴルから「妾がミスリルを持ってくるのじゃ」と言ってくれたので、その申し出を受け入れた。
「じゃあ、俺はその間に他の工房を回ってくるよ」
そうは言ったものの、次の革工房で必要なものを聞き終わるまでにヴィーヴルは帰ってきた。
瞬間移動を使えばあっという間だからな。
「ヴィーヴル、ありがとうな。
これは駄賃変わりだ」
ストレージからイチゴのドライフルーツを3粒取り出して、ヴィーヴルに渡した。
どう見ても餌付けだよな、これは。
まぁ、ヴィーヴルが喜んでいるので良いだろう。
ヴィーヴルは、イチゴのドライフルーツを歩きながら食べていた。




