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第284話 水車で粉を挽こう(2)

「ノアよ、ここにこの棒を通せるくらいの穴を空けるのじゃ」


 棒の途中には山型になっている歯車が付けられていた。

 先ほどから作っていたものは、これだったのか……これにどういう意味があるのかは分からないが、俺ができることはドノバンの指示に従うことだけだ。

 キャンセルを使って、土魔法で作った壁に穴を空ける。


「この位で良いか?」


「うむ、いい感じじゃな」


 その後、ドノバンとガレスでドノバンの棒を穴へと通した。

 そして、ガレスのつけていた歯車と噛み合う位置へと設置した。


 設置した棒が回り始めた。

 原理は分からないが、横に通した棒が回り始めている。


 よく見てみると、今付けた棒のこちら側にも同じような歯車が付けられている。

 そして、そこに縦に棒を通した。

 その棒にも歯車が付けられている。


 見ていると、縦に通した棒も回り始めた。


「ノアよ、この棒の真下に製粉機を置くのじゃ」


 ドノバンに言われた場所に、製粉機を置いた。

 製粉機の上では縦に通した棒が回り続けている。


「ドノバン、製粉機は回っていないようだけど……」


「まだ完成しとらんのじゃよ。

 最後にこれを取り付ければ完成じゃな」


 ドノバンは、縦の棒に先が曲げられた棒を付けた。


「これで完成じゃな」


「やっぱり回っていないぞ」


「慌てるのではない。

 製粉機の穴に、これを刺し込めば回り始めるじゃろう」


 ドノバンの手中には、木の棒があった。


「製粉機を使わん時にも回したままにしておくと、すぐに粉を挽けなくなってしまうじゃろう。

 使う時には、この棒を刺して使うのじゃよ」


 そう言って、ドノバンは製粉機に棒を刺した。

 すると、製粉機の上にあった曲げられた棒が、製粉機に刺さっている棒を押し回し始めた。


 こうして、粉挽き小屋が完成した。


 アリシアに粉挽き小屋の完成を伝えると、台所にいた料理担当の皆が喜んだ。

 その喜ぶ様を見て、粉を挽くのは結構な負担となっていたと言うのを実感した。


 その後、粉を挽く係にハンナが立候補した。

 水車で粉を挽くのならば、自分の仕事が多少遅かろうと関係がないと考えての事だそうだ。


 次の日から、朝食後に小麦をストレージに詰めて、粉挽き小屋へと歩いて行くハンナの姿を見かけるようになった。

 朝から粉を挽き始め、昼飯の前には次の日に使う分を挽き終わり、その後挽いた分は在庫として置いてあるらしい。


 この後、今まで以上に小麦の仕入れをしてくるようにと、料理担当から言い渡された。

 小麦粉はパンに使用するだけではなく、お菓子作りにも使えるらしく、今まではその日のパンの分を挽くので精いっぱいだったのが余裕ができたということで、お菓子作りに使うようだ。


 そんなことで、少しでもここでの生活の息苦しさを解消できるのならば、安い買い物だ。


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