第283話 水車で粉を挽こう(1)
「村長さん、よろしいでしょうか?」
朝食後に、アリシアから声を掛けられた。
「何かあったか?」
「可能でしたら、粉挽き小屋を作って頂きたいのです」
「粉挽き小屋か……村の外れに水車があるけど、あそこで良いかな?」
「そうですね。
距離はありますが、大丈夫だと思います」
「じゃあ、ドノバンに頼んでおくよ。
でも、何故、今になってなんだ?」
「今までは順番で小麦を挽いておりましたが、昨日、その順の者が休みました。
その為、パンを焼くことが出来ず、在庫として置いておいたパンが殆ど無くなってしまいました」
「休んだって、病気になったのか?」
「いえ、寝過ごしたそうです」
「そうか、病気じゃないのなら良かった」
「話を戻しますね。
それで、今後はこのようなことが無いように、粉挽き場を作って貰い、小麦粉を在庫として置いておけば良いだろうと成りました」
「それで、俺に粉挽き小屋を作って欲しいという事か」
「はい」
「分かった。
今まで粉挽き小屋を作らなかった、俺の見落としだ。
済まなかった」
「謝罪される必要はありません。
次から次へと攻められましたから」
「それでも、俺が気が付かないといけない事だったんだよ。
本当に済まなかった」
「その様な細事に関わっている余裕がありませんでしたから、仕方がありませんよ」
その後も、「それでも……」「いえいえ……」とアリシアと言い合っていた。
「何時までやっているつもりじゃ? そんな事より、行動するのが先なのじゃ」
見かねたのであろうか、ヴィーヴルが助け舟を出してくれた。
「そうだな、ドノバンと話して来るよ」
「お聞き届け頂き、有難う御座います」
食堂を出てドノバンの工房へと向かい、水車小屋で粉を挽けるようにお願いした。
「ならば、早速、水車小屋へと向かうぞ。
製粉機が置ける場所を作らねばならんじゃろう」
ドノバンは工房の端の方へと行き、ストレージを持ってきた。
「こいつを持って行かんとな」
ドノバンとガレスは、ヴィーヴルに瞬間移動で先に水車へと移動してもらった。
俺は今使っている製粉機を回収するため、食堂に寄ってから水車の所へと移動するからだ。
「石工がおれば大きな製粉機を作って貰うところじゃが、居ないものの話をしても始まらん。
今使っておる製粉機を水車の力で回せば良いじゃろうから、持ってくるのじゃ」
先に着いていたドノバンとガレスは、早速、作業に取り掛かっていた。
「此方側を粉挽き場として、新たに小屋を作れば良いじゃろう。
ノアよ、魔法で小屋を作るのじゃ。
ガレスはあの風車の軸の途中に、この歯車を取り付けるのじゃ」
ドノバンはストレージから1つの歯車を取り出し、ガレスに渡した。
俺たちは、それぞれの作業へと取り掛かった。




