第28話 手伝いを集めよう(1)
裏の畑にヴィーヴルと一緒に行った。
刈った草は端に寄せられて山になっている。
「これからどうするんじゃ?」
「これから草の根を引っこ抜いて、石を拾って捨てて、土を耕やして柔らかくするんだ。
その時に石が出てきたらまた拾って、今度は山から土を持ってきて混ぜながら耕すんだ。
そうしたら、畑として使えるようになるはずなんだよ」
「何故、山から土を持ってくるのじゃ? 土ならその辺にあるじゃろう?」
「その辺の土より、山の土の方が育ちがよくなるんだよ。
山の土なら何でも良いわけではなくて、黒くて枯葉とかが混じっているのが良いらしいんだ」
「ほう、ノアはよく知っておるの」
「農家の家の子だったんだ。
だから、表面的なことなら分かるんだ。
農家になるのが嫌で冒険者になったんだけど、冒険者としては限界を感じて、農家の真似事をすることになっちまったがな」
「今でも冒険者として生きて行きたいのか?」
「未練がないと言えば全くの嘘になるかも知れない。
今、この力があれば冒険者として活躍できるだろうしな。
でも、ヴィーヴルの加護によって得た力だから、自分の力じゃなくて、どこまで行っても借り物の力なんだ。
そう考えると、冒険者としての俺はやっぱり限界だったと思うし、今はのんびり暮らせれば良いと思っているんだ。
ここに居れば、敵が来るまではのんびり暮らしていて良いんだろ?」
「無論じゃ。
こちらからは何もする気はない」
のんびり暮らすために、今は畑づくりだ。
畑が無くても暮らして行けるとは思うが、余裕はないと思う。
鹿などの動物が少なくなった途端に、食への不安が発生することになる。
人間が生きていく上で、衣食住は欠かすことができない。
ヴィーヴルが余裕を持っているのは、衣食は必要ないし、住があれば良いだけだからだと思う。
雑談をしながら草の根を引き抜いていたが、抜いても抜いても作業が進んでいる気がしない。
そうこうしている内に、段々と腰が痛くなってきた。
(子供の頃は、腰なんて痛くならなかったのになぁ……)
腰を軽く手で叩いた。
「なぁ、ヴィーヴル、ちょっと相談があるんだけどいいか?」
「藪から棒にどうしたのじゃ?」
「ここに、手伝いを呼んでも良いかな?」
「手伝いか? 人間は嫌なのじゃが」
「いや、人間じゃなくて良いんだ。
俺も魔物の言葉が分かるって前に話しただろ? なら、魔物でも亜人でも構わないんだ。
大きく作りすぎたのかも知れないが、今の段階でこのざまだから、とても一人で作っていけないし、畑の世話も手が回らなくなりそうでな」
「ふむ、魔物か亜人か……まぁ、どちらにせよ、人間の事をあまり好ましく思っておらんから気を付けるのじゃ」
「ヴィーヴル、何処にいるか知らないか?」
「暫く待つが良いのじゃ……ふむ、ここから南に2000メトルぐらい行ったところにゴブリンの集落らしい2~30ほどの反応があるのう」
「一体、何をしたんだ?」
「探索を使ったんじゃ。
これは、魔物、生き物に限らず、物体のある場所が分かる魔法じゃ」
「どうやってやるんだ?」
「魔法の薄い板を作って放つのじゃ。
その板に物が当たった時の反応で、それがどんなものが分かるのじゃが……
今のノアには難しすぎると思うのじゃ」
「そうか……まぁ、今は手伝いを確保する方が先だ。
この作業に一区切り付けたら、ゴブリンの集落に行ってみるよ」




