第275話 鉱物調査(1)
「ヴィーヴル、お前の住処の奥を調べたいのだけど良いだろうか?」
「構わぬが、何かあったのじゃ?」
「他の物が無いか聞かれたんだ。
あるとすれば、洞窟の奥側だろうと思ったんでな」
昨日の晩酌の席で、ドノバンに聞かれた事だ。
その場ではヴィーヴルに聞いてみると答えたが、ヴィーヴルは鉱物の事は良く分かっていない。
俺も詳しくは分からないだろうが、それでもヴィーヴルよりはましだろうと思う。
「入るのはノアだけなのじゃ?」
「そのつもりだよ」
ドノバンも連れていけば詳しく分かるだろうが、ヴィーヴルが嫌がるかも知れないと思ったからな。
「それなら良いのじゃ。
何時行くのじゃ?」
「問題が無ければ、今から行きたいのだが良いだろうか?」
「良いのじゃ。
では、行くのじゃ」
ヴィーヴルは手を差し出した。
一緒に行くのは、いつの間にか確定していたようだ。
「何をしておるのじゃ? 早くするのじゃ」
瞬間移動で行こうという事か。
機嫌が良くなったように感じるのは気のせいだろうか?
差し出された手を取り、ヴィーヴルの瞬間移動で洞窟前へと移動した。
洞窟には結界が張られているので、解かれていない状態では瞬間移動が難しい。
俺はヴィーヴルと手を繋いだまま洞窟へ入り、結界を越えた後、瞬間移動で鉱石がある場所へと来た。
「何処まで続いているか、ヴィーヴルは知っているか?」
「妾も行ったことが無いので分からないのじゃ。
ノア、怖いのじゃ?」
「そんな事ないだろ。
いい大人なんだぞ」
「それならば、どうして手を握ったままなのじゃ?」
言われて気が付いたのだが、未だヴィーヴルと手を繋いだままだった。
「いや、これは、そう言う訳ではなくてだな」
慌てて手を振り解いた。
「では、どう言う訳なのじゃ?」
ヴィーヴルは微笑みながら、此方の様子を窺っている。
「知らない所へ行く前は緊張して、剣を握る手に力が入るだろ? あれと同じ事だよ」
うん、良い良い訳が思いついた。
これで押し通そう。
「まぁ、良いのじゃ。
余り苛めると可哀そうなのじゃ」
「それより、この先は真っ暗だから、何か明かりを探さないと」
「妾は少ない光でも見ることができるのじゃ」
目の作りが違うのだろうか? 猫も暗闇の中でも見ることができるらしいので、似たような感じなのかもしれない。
「俺には真っ暗にしか見えないからな。
家に帰って、松明か何か持ってくるよ」
家に帰ろうと踵を返そうとすると、
「では、こうすれば問題無いのじゃ」
そう言ったヴィーヴルの指先には、光の玉が浮かんでいた。
「光属性の魔法なのじゃ。
これでノアも大丈夫なのじゃ」
「助かるよ。
じゃあ、行こうか」
「手は繋がなくても良いのじゃ?」
ヴィーヴルに揶揄われてしまった。




