第273話 羊のチーズを食べる
「ノアさん、そろそろチーズが良い感じになってきたわよ」
セラから朝食の時に伝えられた。
「羊のチーズか……酒の肴になりそうだな」
「ノアさん、羊のチーズをアイリスにも使わせてもらえないかしら?」
イルデに問われた。
「アイリスってことは、料理に使うのか?」
「料理もあるけど、お菓子とかの方が多いかもしれないわね」
「お菓子なのじゃ? 作ってほしいのじゃ」
ヴィーヴルはお菓子に食いついたか。
「そういうことなら、俺たちに1回分だけ避けておいてくれ。
その他は全部アイリスが使ってくれて構わないから」
チーズを使った料理か……何かあったかな? と考えてみたが、思いつかない。
イルデには心当たりがあるようだったので、俺が口を出す必要はないだろう。
羊のチーズは、エールよりワインの方が合うんだよな。
敵から奪った瓶詰のワインが残っていたから、あれと飲むか。
あっちにいるルシフェルにも持って行ってやるか……などと、チーズの使い道を考えていた。
朝食後、畑を見回るとトロワが畑を耕していた。
少し前から、畑の作物の世話から、畑を作る方へと変わったらしい。
きっと、アンの後継者として正式に育てていこうと言うことなのだろう。
(トロワも最初の畑づくりを一緒にやったから、畑の作り方の基本は覚えているだろうから、すぐに慣れるだろうな)
「ドゥ、畑は何の問題もないようだな」
『はい、そうですね。
何の問題もなく、順調に行っていると思います』
「順調なら、昼から休んでも良いかな?」
『そうですね、大丈夫ですよ』
「じゃあ、昼から皆で水遊びに行こうか。
ここの所、何かと忙しくて、働き詰めだったろ?」
『分かりました。
皆に伝えておきます』
「希望者が多いようなら、川まで行こうか。
そこの水槽より気持ちいいだろうしな」
『分かりました、有難うございます』
水遊びの参加者は、ゴブリン達全員、ヴィーヴル、アイリス、その他子供たち全員が参加することとなり、川で遊ぶこととなった。
今後はもっと、村民の特に子供たちを連れて遊びに行く回数を増やしてあげよう。
忙しかったのは確かだが、それを理由にしても子供たちには関係ないからな。
水遊びをさせたということが免罪符となったのか、その日の酒は美味しく飲めた。
羊のチーズは、以前に食べた物よりも美味しいものだった。
免罪符により、美味しく感じたのかも知れないが……




