第269話 ルシフェルの監視役
次の日、ルシフェルは森の陣跡へと移動した。
ずっとではなく、王国との話し合いが終わるまでの間だけだ。
「酒はある程度持っていくとしても、アイリスの料理が無いのは味気ないものであろうな……」
「じゃあ、俺が毎日、持って行ってやるよ。
酒の肴だから、晩だけで良いんだろ?」
「頼めるかの?」
「あぁ、ルシフェルには頑張って貰わないといけないしな」
「よろしく頼んだぞ」
「序に酒も持っていくから、酒も持って行かなくて良いぞ」
「持って行っても悪くなるものではないし、ノアに酒まで持ってこさせるのは悪いであろう。
酒くらいは持っていくのだ」
「そんなこと言って、持って行ったらあるだけ飲むんじゃないか?」
「そんな子供じみた真似はせん」
「私が管理いたしますので、ご安心ください」
「いや、飲み物まで管理する必要はなかろう。
そんな事で、ベルゼバブの手を煩わせる必要はないのだ」
「身の回りの世話、管理をするのが私の役目でございます。
ルシフェル様がお飲みになるのであれば、お酒の管理も致します」
「いや……でも……」
「よろしいですね?」
「……はい」
少しずつでも拝借しようと思っていたのだろうが、そうはいかないぞ。
俺を言い包められたとしても、後ろにはベルゼバブが控えている。
ベルゼバブにはどうやっても勝てないだろうから、さっさと諦めれば楽になれるのにな。
「では、どちらをお持ちすれば良いのか、教えて頂けますか?」
「あぁ、それじゃ……面倒だから、戦利品の樽ごと持って行ってくれ」
先の争いの戦利品として、倉庫の中には樽に入ったワインもあった。
瓶に詰められたワインよりは多少味が落ちるようだが、気にするほどではないだろう。
魔族が作る酒とは、比べるまでもない程に美味しく飲める代物だ。
「ベルゼバブが管理してくれるのなら、こっちで渡しても問題ないからな」
「承知いたしました。
私が厳重に管理いたします」
「そのまま持っていくのは大変だろうから、ストレージで持って行ってくれ」
「ご配慮頂き、有難う御座います」
ルシフェルよ、色々と頑張ってくれ。
「それはそれとして、ルシフェル、あっちでの住処はどうするんだ?」
「彼方にも土魔法で家を構築すれば良いと思っておるが、何か不都合があるか?」
「そう言えば、こっちの家もルシフェルが作ったか」
作りに行こうかと思ったが、ルシフェルが自分で作れるのだから問題無いだろう。
今は使っていない土地だから、好きに建てて貰って構わない。
「防衛拠点としても使えるよう、少し大きめに作ろうかと思っておる」
「だとしたら、頑丈な扉とか必要になるよな?」
「そうであるな」
「じゃあ、建物が出来たら教えてくれ。
ドノバンを連れて行くから、ドアとかを作って貰おう」
「分かったのだ」
折角の王国からの置き土産だ。
有効活用させてもらおう。




