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第267話 第二次防衛戦(8)

 次の日の早朝、俺達は夜明け前に村を発ち、敵陣前まで瞬間移動でやって来た。


「ノアは魔力を温存しておくのじゃ」


 ヴィーヴルの優しさだろうか、瞬間移動はヴィーヴルが行使してくれた。

 連続して瞬間移動のような多大な魔力が必要となる魔法を使わなければ大丈夫なのだが、折角の好意だからとヴィーヴルに甘えた。

 瞬間移動した先が、この前来た時に潜んでいた木の上だったので、足を踏み外して落ちそうになったのは黙っておく。


 そこから、俺はヴィーヴルと、ルシフェルとベルゼバブはそれぞれの力で飛び上がり、陣の全体を確認する。

 今回の陣には土塁があり、陣全体を囲うように築かれていた。


「前の奇襲で、守ることも考えたようだな。

 でも、あれだと不十分だろ。

 こっちには飛べるものが居るのに、空への警戒がまるでない」


「そうであるな」


「土塁だって、こっちの手間を省いてくれたようなものだしな」


「折角、用意してくれたのだから、有難く使わせてもらうが良かろう」


「ヴィーヴルとルシフェルは予定通り、正面と横に壁を作って貰えるか? あの土塁だと、乗り越えられるかも知れないしな」


「分かったのじゃ」


「倉庫を壁で囲うのは、我が行うとしよう」


 ルシフェルは、欲望に実に忠実だ。


「分かった、じゃあ、ヴィーヴルだけで壁を作ることになるけど、大丈夫か?」


「問題無いのじゃ」


「よし、俺とベルゼバブはルシフェルが倉庫を囲み終わったら火を放とう」


「承知いたしました」


「じゃあ、ヴィーヴル、俺を木の上に置いて行った後に壁を作ってくれ。

 ルシフェルは囲いに行ってくれ」


「分かったのじゃ」

「分かったのだ」


 ルシフェルは陣の方へと飛んでいき、ヴィーヴルは俺を下ろすために木へと近づいた。

 そして、そのまま木の上で俺の横に立って微笑んでいる。


 陣の上空にはルシフェルが停滞している。

 建物を見定めて、倉庫らしきものを囲っているようだ。

 まだ、薄暗くて良く見えないが……


「ヴィーヴル、壁を作りに行ってくれないか?」


「壁を作るくらい、此処にいても出来るのじゃ」


 そう言って、人差し指で陣の方を指した。


「音を立てないようにするには、ちょっと時間が掛かるのじゃ」


 地面から壁が生えてきた。

 時間が掛かると言っていたが、俺が土の箱を作るよりは比べ物にならないくらいに早い。

 茫然と眺めている間に、壁は作り終えていた。


(俺、要らない子だな)


 張り合う気さえ起こさせない程の実力差がある。


 ルシフェルの作業も終えたようだ。

 後は火を放てばすべてが終わる。

 余計な死者は出したくないから、端の方から火を放とう。


「ファイヤー」


 火魔法で作った火の玉が、陣の正面中央へ向けて放たれる。

 それに合わせて、ベルゼバブが火魔法を2発発射し、それぞれ正面の両端へと着弾した。


「敵襲! 敵襲!」


 敵陣が一気に騒がしくなる。


「慌てるな、消火を急ぐんだ!」

「倉庫に入れません!」


 消火道具は倉庫の中に仕舞われていたようだ。

 偶々ではあったが、倉庫を封じる作戦が功を奏したようだ。


「何とか火を消すんだ!」

「でもどうやって?」

「何かないのか?」

「草を刈れ! そうすれば、延焼を食い止められる!」


 おっと、そうはさせないぞ。


「ファイヤー」


 草を刈り始めた兵士に向けて、火魔法を放つ。

 妨害が目的なので、当たらなくても問題ないし、避けたら避けたで、そこから再び火の手が上がる。


 俺が火魔法を放ったのを見て、ヴィーヴル達も火魔法を兵士に向けて放ち始めた。

 俺だけなら、その内延焼を食い止めることができたかもしれない。

 ただ、此方には魔法の扱いに長けた魔族2人にドラゴンまで居る。

 次々と放たれていく火魔法に、立ち向かい術などまるでない。


「駄目です! 妨害により延焼を食い止められません」

「次から次へと火の玉が飛んできます! 対応しきれません!」


 再び、陣内では慌てふためいている者が大勢いる。


「周りは全て壁で囲われていますが、後方から脱出可能だと思われます」

「馬鹿者! 罠があるに決まっているであろう!」

「しかし、逃げられるのは、そこしかないと思われます」


 (多分)司令官だと思われる男が、決断したかのように声を上げた。


「この地を放棄し、後方に再構築する

 罠があるかも知れない、固まって移動するのだ」


 罠にかけるつもりは無いから、安心して逃げて欲しい。

 撃退することが目標であって、殺したり捕虜にするつもりは初めから無いのだから。

 敵に対して伝える気もないし、言ったところで信じてもらえるとは思えないが……


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