第266話 第二次防衛戦(7)
敵陣への急襲より、2日ほど経過した。
途中、ドワーフの街への仕入れの日もあったが、予定通りに行ってきた。
変に予定を変えて、怪しまれないようにするためと言うのが大きな理由だ。
実際には、敵陣から奪ってきた食料があるので、然程、仕入れる必要はない。
上官が食事の時にでも飲むのだろう、上等なワインもあったので、ルシフェル、ドノバンからは笑みがこぼれている。
終いには、「次は何時、奪いに行くのだ?」とか言い出した。
悪影響を受けたのは、ヴィーヴルではなく酒飲み2人の様だった。
「ノアよ、敵陣へ攻め込むと言うのは、1つの方法かも知れぬぞ」
「良い方法?」
「あぁそうだ。
森から追い払うと言う意味でも、敵陣を壊滅させる方が良かろう。
ただし、目的は森から追い払う事であるから、森の外への追撃はしない方が良いであろう」
「村の範囲は、外側の壁までじゃなかったか?」
「そうなのだが、森がある事により大勢で攻めて来られん。
今回の様に森を切り拓きながらだと、大勢で攻めることが可能となるであろう。
そうならぬ為にも、我らは森をも守らねばならんのだ」
「そうだな」
「明日の朝早くにでも敵陣へ奇襲を掛けて、敵を森より追い払うが良かろう」
「2日前に奇襲を掛けた格好になったから、敵も警戒しているだろ?」
「空を飛んでいけば良いのじゃ。
飛んでいれば、そう簡単には手出しできんのじゃ」
「空か……そうだな。
弓だけ警戒しておけば、大丈夫だろうな」
「では、誰が行くのか決めるのだな」
「いつも通り、俺とヴィーヴル、ルシフェルで良いだろ?」
「私も参ります」
「分かった、じゃあ、ベルゼバブも加えての4人で行こう」
「作戦はどうするのだ?」
「そうだな……敵陣の前に土魔法で壁を作り、王国側へは逃げられるようにしておく。
そして、火魔法で火を放つ……と言うのはどうだろう?」
「逃げ道を用意しておけば、無理にこちらへ向かってくることも有るまい。
それで良いと思うぞ」
「後は担当決めだが、土魔法で壁を作るものと、火魔法で火を放つものだけど……」
「それでしたら、私は火魔法で火を放つ役割をいたしたく思います」
ベルゼバブが火魔法担当に立候補した。
「良いけど、何か理由があるのか?」
「私は土魔法が苦手だからです」
「そうか、それなら火魔法を頼む。
ヴィーヴルとルシフェルで土魔法の方をお願いできるか?」
「ノアは何もせんのじゃ?」
「俺も火魔法で火を放つよ。
土魔法で壁を作っても、ヴィーヴルやルシフェルの様に素早く構築できないから、却って邪魔になるだろうしな。
火魔法なら、多少時間が掛かっても問題無いだろう」
「火魔法は壁を越えられんのじゃ」
「また、木の上から放てば問題にならない。
ヴィーヴル、悪いが作戦の前に俺を木の上に置いて行ってくれ」
「分かったのじゃ」
「今回は略奪せんのか?」
「流石に警戒を強めているだろうから、無理だと思うぞ。
上手く、倉庫だけを残して撃退できれば、奪えるかもしれないがな」
「では、先に倉庫を土壁で覆ってしまえば良かろう」
「そんな事、出来る……みたいだな」
俺の言葉の途中から、ヴィーヴルとルシフェルは首肯していた。
ルシフェルの目当ては、上等なワインだと思う。
そこにあるのだから、どうせなら手に入れて再び味わいたいということだろう。




