第26話 畑を作ろう(1)
鹿を3頭狩ることができた。
「久々に身体を動かして、運動不足が解消できたのじゃ」
ヴィーヴルは、そう言っていた。
「ヴィーヴル、鹿要らないのか?」
「龍は何も食べなくても平気なのじゃ。
食事をするのは、嗜好的な意味でしかないのじゃ。
じゃから、ノアが持っているが良い」
「分かったよ、ありがとう。
そのうち、ご馳走でもするよ」
「分かったのじゃ。
……それで、次は何をするのじゃ?」
「あぁ、家の裏に畑でも作ろうかなと思ってな」
「家と言えば、これはノアが作ったのか?
魔法を覚えたばかりとは思えぬほどに、良くできているのじゃ」
「お褒めいただき、光栄に思います。
先生が良かったからじゃないかな?」
「そう、謙遜せんでもよい。
土魔法で四角く作って、一部分をキャンセルして作るのは、センスがあると思うぞ。
壁を作るのはすぐにできるかも知れんが、天井をどうしようか? と悩んでしまうんじゃ」
「そうか? 単に土の壁で作ろうとしたら、簡単に倒れてしまうから、箱の形で作れば倒れないなと思ったんだ」
「成程のう。
壁を地面に固定できなかったのでの苦肉の策じゃったのか」
「そうだ! ヴィーヴルが作った土の壁は叩いても倒れなかったけど、俺が作った壁は簡単に倒れたんだよ。
何らかの方法で地面に固定していたんじゃないかと思ったんだけど、どうやっていたんだ?」
「あの時は、硬い方と同じような硬さで、見えていた高さと同じだけ地面に埋まっておったのじゃ。
「魔法で作った壁を地面に埋めるのは、どうやってやるんだ?」
「魔法で作った壁を埋めたわけではないのじゃ。
地面に魔力を送り込んで硬くしたのじゃ。
「硬くしたということは、柔らかくもできるのか?」
「柔らかくは出来ないのじゃ。
魔力を使って、土の間を強く結びつけることで硬くすることができるのじゃ」
「そうか……柔らかくすることができれば、畑を耕せるかと思ったんだけどな」
「耕す代わりになるか分からんが、風魔法で地面の中を通すのはどうじゃ?」
「風魔法は使えないんだよな。
風が目に見えないからか、どうにもイメージができないんだ」
「では、硬くした水球を土の中を移動させるのはどうじゃ?」
「そうすれば、耕したことと同じになるか……うん、それならできそうだな、ありがとう」
「じゃあ、これは貸しとしておくかの?
借りは今度、美味しいご飯をご馳走してくれれば良いのじゃ」
そう言って、ヴィーヴルは微笑んだ。
(狡いよなぁ……)
微笑みながらこんなこと言われたら、断れないよ。
貸し借りなんてなくてもご馳走するのは構わないのだが、ちゃんとした理由があれば誘いやすい。
ここに居ることが、どんどんと心地良くなっていく。
「あぁ、期待して待っていてくれ」
「うむ、では、妾はちょっと疲れてしまったので、帰るとしようかの」
「あぁ、色々と助かったよ、ありがとうな」
「うむ、でわなのじゃ」
 




